95:英雄誕生!
明けて次の日、この一ヵ月間親子川の字になって寝ていた冴内一家であったが、朝夫婦が目覚めて起き上がると美衣の姿はなかった。
二人でベッドから起き上がりリビングに出て見ると13歳くらいになった美衣がたっぷりハチミツを塗ったパンをうまいうまいと言って食べていた。裸の上に冴内の「I LOVE LONDON (ハート) !」Tシャツを着ているのでブカブカで肩がはだけていた。その姿はまさに少女時代の優そのものだった。ありえない程この世のものとは思えない程美しい銀髪の少女だった。
美衣は二人を見るとおはよう!といってまずは優とハイタッチ、次に洋に抱き着いてむさぼるようにチューをしたが、優にひっぺがされて「もうダメ、親離れしなさい」と言われて「グヌヌ・・・分かった、そうする・・・」と素直に従った。冴内はひと月足らずで親離れとは【ンーンンーンンンン】人は厳しいんだなぁと若干残念な気持ちになった。
朝食も終わりひと段落したところで、今日も当然昨日命名式に参加したメンバー全員が極超速ミサイルのようにすっ飛んできた。
新たな神の誕生に全員その場にひれ伏す程で、神代はガチでひれ伏していたが、それほどまでに目の前の少女は神がかった美しさで、直視などしようものなら本当に天罰が下りそうな気がする程だった。竹取物語スゲーな、こんな感じだったのかと一同納得感心する程だった。
冴内の両親は早速、近くのアパレルチェーン店で下着を含めた衣類を買おうと言って美衣も喜んだ。当然優の時と同様にフルアーマー美衣状態の完全偽装でVIPカーで行くことにした。前回の時もそうだがこの時ばかりはこのアパレルチェーン店の省力化に感謝した。平日の昼前だったので人も少なくセルフレジなので店内で大騒ぎになることもなく買い物をすることが出来た。
美衣は卵から生まれてまだひと月程度なのにも関わらずフルアーマー状態にされても全てを理解している様子だったし、普通にゲート外の一般社会のことに関して優以上に熟知していた。その驚きを口にしていると、それは洋の全ての知識や経験を引き継いでいるからだと優がいった。
なんというすげぇスペックなんだ【ンーンンーンンンン】人!
買い物を終えて研修センターに戻り、ばぁばとじぃじが買った洋服を着て嬉しそうに喜んでクルクルとはしゃぎ回る美衣を見て、ばぁばとじぃじの二人とも身体が全て溶けてそのままスライムになってしまいそうなくらいとろける程グデングデンになっていた。涙ながらにもういつ死んでも構わないとまで言い出す始末だった。父は洋の手をガッシリ掴んでお前はこの上ない親孝行者だと言った。二人の姉はしばらくずっと美衣はこの姿のままだと知り、これからこの神のような美しい少女にふさわしい最高の洋服を色々と送ることを誓い合った。また、この年の夫のボーナスは強制的に絶対的に高級デジタル一眼レフカメラの購入に決定した瞬間だった。
まだ名前がついていなかった頃の天使のような幼い美衣も思う存分可愛がり抱くことも出来たし、こうして13歳くらいになってますます神のような存在の美し過ぎる少女状態の美衣にも会えて十分満足したので、冴内一族はその日は早めのファミリーディナーを十分堪能した後でそれぞれ帰宅していった。
今度はこっちから遊びに行くね!という美衣の別れ際のセリフに冴内の両親は号泣しきりだった、帰りの新幹線の車内であまりにも放心した状態の夫婦を見て他の乗客や新幹線内を見回っている係員に、もの凄く心配された程だった。
冴内の両親達も戻り、美衣の誕生から命名までの一連のイベントは無事終了した。そして一夜明けて次の日の朝、例のゲート内にある田畑の農作業シーカーからのお祝いの品で新たに届けられていた新米で炊いたアツアツのご飯に納豆をたっぷり乗せてガツガツかきこんでいた美衣はゴクンと飲み込んだ後に「今日はゲートに入る!」と箸を持つ手を天に突きあげて宣言した。
「えっ!?美衣、ゲートに入れるの?」と冴内が聞くと美衣は「入れるよ!だってお父ちゃんとお母ちゃんの子供だもん!」と元気よく答えた。
ちなみにシーカー同士が結婚してゲートの中の世界で生まれた子供はギフトがなくともゲート内世界で生活出来る。しかし特殊能力をもたない普通一般の子供なので大抵はゲート外の一般社会で育てられることが多い。そして一度ゲートの外に出てしまうとゲート内に入ることは出来なくなる。またギフトは遺伝されず、両親がシーカーで子供もシーカーだというケースはほぼないに等しいくらい少ない。しかしさすがに美衣はギフトなどなくとも存在そのものが特殊なので問題なくゲートに入れるのだろう。
そんな風に冴内が考えていると美衣は「ステータスオープン!」と高らかに声をあげて左手をかざしてみせたのであった。
果たしてその左手の上には煌々と光り輝くステータスが浮かび上がっていた。冴内も含めた通常のシーカーのステータス画面とは違って、それは金色に光り輝いていて、そこにはこう書かれていた。
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冴内 美衣
永遠の13歳:可憐な乙女
スキル:万能チョップLv1
称号:英雄
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さて、賢明なる読者諸兄におかれては、ここ最近は冴内の活躍機会は激減し、いよいよ英雄の称号をもって登場した美衣こそがこれからこの物語の主人公になるのではないかと思われていることだろう。
確かにこうして書いている作者自身もそう思うのだがそうなるとさすがにこの物語のタイトル
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ゲートシーカー ~全てをチョップで解決する男~
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を
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ゲートシーカー ~全てをチョップで解決する英雄少女~
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に変えないといけなくなるので、どうしたものかと考えあぐねているが、とりあえずこの作品への愛着もあるのでこのままタイトルは変えずに継続することにする。
ということでこのまま普通に次回へ続く。