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94:冴内 美衣(みい)誕生!

 翌朝になり卵は高さ80センチ程の大きさにまでなっていた。朝の日の光を存分に浴び、今にも何かが飛び出してきそうな雰囲気だった。


 二人で朝食をとりながら見守っていると、恐らくあと数時間程で出てくるかもと優が言ったので、朝食後ゆっくり食休みをとった後で研修センターの研究者達数名が入室してきて貴重なその瞬間を何一つ見逃さないぞという真剣さで記録を開始した。


 時折卵が揺れたりコツコツと中から卵を小突く音がした。これはいよいよ孵化間違いなしということがひしひしと伝わってくる。優がこれは多分お昼に出てくるわと言った。


 そうしてお昼の12時ちょうどにアラームが鳴ったまさにその時、卵はパキィィィーン!という音と共に見事に割れた。


 スパッと見事な美しい断面で真っ二つに割れて、果たしてその中からは2歳児くらいの銀髪の幼女がかなりのドヤ顔と見事な美しいフォームのフォロースルーでキメポーズをとっていた。


そのポーズはまぎれもなくチョップだった

見事なまでに美しく完璧なチョップだった


 見た目は少女状態だったときの優を幼くしたらこうなるだろうという容姿で、キメポーズは冴内の海割り神チョップそのもので、まさに間違いなく二人の子供以外の何物でもない存在だった。


 その子供はまず優を見つけると、目と目で見つめ合いアイコンタクトで全てを理解し合ったのか、ウムと互いに頷き合うとパシン!と優とハイタッチをした。そして冴内を見つけると即座に飛びついて抱きついて両手でガッシリ冴内の顔をホールドして、ものすごいチューをした。まるで命の精を吸い取っているかのごとく猛烈なチューをした。ひとしきり何かを吸い取って満足したのか、その2歳児くらいの幼子はそのまま洋の中でスヤスヤと眠りだした。


 なんという凄まじい生き物の誕生だろうか。まるで星そのものの誕生を見たかのような生命力の凄まじさだった。


 ちなみに後日、卵の殻の組成成分を調べると「竜の涙」よりも何もかもが桁違いで上回るほとんど無限に近いと思われる数値を叩きだしていた。鈴森の鑑定結果も「∞」のマークがズラリと並んでいた。


 さて、ここからが問題である。何のことかというと「名前」のことである。


 まさか結婚式の後にすぐに子供が生まれるなどとは全く想像すらしていなかったので名前など全く考えていなかったのだ。そして名前というと、さすがに冴えない頭の鈍感な冴内でもピーンと来るものがあって、もしも名前をつけるとやっぱりぱぅわぁーアップするの?と優に聞くともちろんそうなると言い、2歳児から多分一気に10歳近くは成長するだろうと言った。その後は外見上はほとんど歳を取らなくなり、生涯の伴侶となる存在が見つかるまではそのままの姿が保たれるだろうと言った。冴内の地球人の遺伝子が混ざっているとしても【♪ー♪♪ー♪♪♪♪】人の遺伝子の方がはるかに強いためこれは変わらないとのこと。


 ただし、優と決定的に違うのは冴内の魂、精神が受け継がれているため、宇宙をぶっ壊せるほどの強大な力を持っていてもしっかりバランスが保たれており、優のように有り余る力を持て余してしまい、つい宇宙をぶっ壊してしまうような危険性は皆無の安定したパワーバランスを持つスゴイヤツになるそうだ。


 この話しを聞いた冴内は閃いた。すぐには名前を付けずに、まだこの可愛らしい幼子の状態の子供を冴内の両親に抱かせてやろうと思ったのだ。戸籍手続き上いつまでも名前を保留にしたままには出来ないが、さすがに人類史上稀にみる存在なのである程度は社会も許容してくれるだろう。当然神代に相談し、全ては神の仰せのままに、何も心配なされる必要はございませんと、若干冴内が困惑する程の態度で返答してくれた。


 こうして両親にこのまさに天使のように可愛い二人の子供を引き合わせようと考えたが、今や世界中注目の的の存在なので、両親には申し訳ないがこちらに来てもらうことにした。二人とも二つ返事で了承し、父の方も会社に説明する必要すらなく、むしろ会社の方からほとんど会社命令に近い形で「孫の育児休暇」などという過去に前例のない有休を得てやって来てくれることになった。


 それからおよそ一月の間、冴内の両親は冴内と優の特別な部屋のすぐ隣に部屋が用意されて、そこで至福の時間を過ごした。当然姉2人の家族も時折遊びに来ては、まるで天使のような美し過ぎて命を捧げてしまいそうになるほどの存在を思う存分愛でた。なるほど竹取物語が決して大袈裟な話じゃないことを思い知ったのであった。


 そうして一ヵ月が過ぎようとした頃、さすがにもう名無しで呼ぶのも可哀そうだということで名前を付けることにした。もちろんこの間ずーーっと考えていたのだが、やはり決め手は今回も冴内の閃きである。ある夜に夢の中で直観が閃き、朝になっても忘れずにいたのだ。


 そうして家族全員、神代と研究職員も見守る中で命名式が行われた。


 見た目は2歳児程度の生後一ヵ月の娘を前にして、その小さな両手を優しく包み込んで冴内はその名を呼んだ。


「これまで名前を付けなくてごめんね、君の名前は美衣みいだよ。冴内さえない 美衣みい 今日からよろしね、僕らの愛する大事な娘、生まれてきて有難う美衣みい愛してるよ」

「良かったわね 美衣みいとても素敵な名前よ、生まれてきて本当に有難う、私も愛してるわ美衣みい


美衣みいちゃん!バァバも愛してる!」

美衣みいちゃん!ジィジも愛してる!」

美衣みいちゃん!おばちゃんも愛してる!」×2

美衣みい様!わたくしめも心より祝福いたします!」

美衣みいちゃん!バンザイ!美衣みいちゃん!バンザイ!」

「ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!」

 いや、ワッショイ!は言ってなかった。


美衣みいは目を大きくカッ!と見開いたかと思うと、大きく両手を上げて輝き始めた。まるでその部屋が閃光に包まれ全てが漂白浄化されるかのようなまばゆい光が充満し、窓からも光が漏れ出た。それこそ数キロ先まで届いたんじゃないかという程の光だった。


 いつも通り光がおさまるとそれまでと全く変わらぬ姿に戻り、美衣みいは何事もなかったかのようにスヤスヤと眠っていた。その顔はとても満足した様子で安らかな寝顔だった。

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