91:短い実家滞在
その日はお土産に持ってきた新米を使ってご飯を炊いて食べたのだがあまりの美味しさに家族一同号泣する程で二人の姉は8割近く持っていった。当然干し肉と干し柿もほとんど持っていかれた。まぁすごく美味しいといって大喜びしてくれたので悪い気は全くしない。
さて、この先最大のテーマになるのが冴内と優の結婚式である。この日から冴内家最大の大会議が開催された。とはいえさすがに何日も子供を夫にまかせるわけにはいかないので姉二人は帰宅し、ネット通話で会議に参加した。まず真っ先に決定したのが式も披露宴も身内だけで行うということだ。
機関側は基本的に普段ほとんど情報制限をすることはないが、今回ばかりは全世界的に影響が大きすぎるのでまだ全容を一般社会に公開していない。ゲート内に存在する神の中の神が、神のチョップを持つ地球上の男性と結婚するなどと世間一般に報じようものなら世界中から一目見ようとする人であふれかえることは必定で、結婚式は全世界的規模でやるべきだと世界中のあらゆる国際団体から強制される可能性が大だ。もちろんそれも含めて冴内家にはしっかり根回しして言い含めていたのでともかく身内家族だけで密かに行うことにした。結局その後そうはいかなくなるのだが・・・
結婚後は富士山麓ゲート内に戻る予定なので、いっそのこと富士山麓ゲート研修センターで式をあげるのはどうだという結論に至った。婚姻届けについても近くの役所でやろうものなら大騒動になるのでやはり研修センターを頼ることにするのが一番問題発生リスクが少ないという結論に至った。
次に重要なのがウェディングドレスだ。こればかりはフルアーマー優のままで作ってもらうわけにはいかないのだが普通の民間業者に優を連れて行ったらそりゃもうどんなことになるか想像することすら恐ろしい。そこでやはり冴内は神代に相談することにした。神代は二つ返事で承諾し世界最高のドレスを用意すると言ってくれた。近々局長に昇進するのであらゆる全ての権限を使ってでも、例えこの手を汚そうとも必ずやその依頼を完全完璧に応えてみせると、その場で誓約し始めた。いや、おめでたい行事で手を汚すなって。
あれこれと長い時間家族会議で議論したにも関わらず、結局ウェディングドレスだけでなく結婚式も披露宴も全て神代を頼ることにした。実際の所これが一番の最適解なのだがそれにしてもやはり冴内一族はやはり皆一様に冴えないのであった。しかし当の神代本人は我が一族最高の栄誉だと言ってむしろ感謝感激していたのであった。
翌日、優が洋の生まれ育った地をこの目で見てみたいということでフルアーマー優で偽装してあちこち連れて行ったのだが、やはりこの有り得ない程の美を覆い隠すことは出来ずほんのわずかな一瞬を垣間見ただけでも仰天する程なのでいよいよ周りが騒然とし始めてきた。
家族一同この神にも等しい美の存在を隠し通すことはもはや限界だと悟り、一刻も早く研修センターかゲート内世界にお帰りあそばしますよう謹んで申し上げ奉りますと、最後はの方は良く分からない尊敬語になった。あまりにも崇高で至高な美の存在にこのままずっといて欲しいなどと思うなど、たかが平民風情がもっての他であるとかまで言いはじめる始末であった。まぁ確かに表現や感情はともかく、このままここにいるのはそろそろヤバくなりつつあるのでやはりまたしても神代えもんに何とかして~と泣きついた冴内一家であった。頼んでから数時間後にはVIPカーがすっ飛んできた。すぐさま乗り込もうとしたがその際帽子がクルマのドアに当たって脱げてしまい銀髪がファサッと露わになり、数人の通行人に見られたのだがそれだけでもまるで雷にでも撃たれたかのような表情になった。慌てて逃げるように乗り込んで緊急発進した。