90:実家へのご挨拶
その後研修センター内の食堂にて夕食会が開かれたのだが、さすがに夕食会の場では職員達は皆一様に質問等は遠慮して大いに食事と歓談を楽しんだ。その後二人は別々に大浴場でゆっくりと広い湯に浸かって疲れを癒した。研修センター内の宿泊施設には二人の特別な部屋が用意されていたので二人は共に早々に休むことにした。
翌日は中会議室で丸一日神代を含めた職員達と朝から晩までヒアリング。2日目は大会議室で世界各国の局長達を前に朝から晩まで質疑応答。当然食事休みや休憩を多く挟んでのスケジュールである。
3日目は丸1日休みの日ということでバスで富士山麓ゲート近くの大型ショッピングモールに行って優の衣服を買いに出かけた。当然優には大きなマスクとサングラスそして見事な美しい銀髪を隠す帽子を被ってもらった。
高級ブランドや高級ブティックではなく全国どこにでもあるアパレルチェーン店なので、店員を含めた他人と触れ合うこともなく、支払いもセルフレジなので優の存在はなんとか隠しおおせた。どんなに隠しても至近距離でサングラス越しの目を見たり帽子からチラ見えする銀髪をみるだけでもそのありえない美しさが露見するし、さらに顔が隠れていてもそのプロポーションと凄まじいボディラインだけでも人間離れしているので当然服はなるべくボディラインが出ないゆったりしたものにしておいた。実家に帰る時のいい予行演習になっただろう。
4日目も5日目もヒアリングは続いたが最初のものよりもゆっくり余裕のあるスケジュールだったので
二人とも疲労は少なかった。6日目も一日休養日にして、7日目にようやく実家に帰ることになった。
優をフルアーマー状態で偽装しつつ、米俵や干し柿干し肉など持って新幹線と電車で帰るのはちょっと面倒だなぁと思っていたところ、さすがに今回ばかりは機関の方で特別に大型SUV車を用意して実家まで送ってくれた。座席がかなり広かったのでとても快適だった。時折り信号停止中に横に並んだ車の搭乗者が素の状態の優を見てものすごく車内で騒いでいたように見えた。
そうしてその日の午後に実家に到着した。平日午後ということで運よく隣近所の人には目撃されずに優は家の中に入る事ができた。
優は家族全員総出で出迎えられた。父は会社を休み、二人の姉も子供を夫にまかせてやってきた。そして家族全員が優の姿を見るやいなやその場にひれ伏した。
やはり神代のスペシャル根回しが相当行き届いていて、これまでのいきさつ全てを分かりやすい動画やパネルなどにまとめて徹底的に家族全員に隅から隅までガッツリ説明していたのでこちらからはもう何も説明することがなかった。
ただひたすら家族全員号泣して「良かった良かった優様これから洋をよろしくお願いします」と床に頭をこすりつけるかのような勢いでひたすら願い続けた。
優は「お父さん、お母さん、お姉さん、私は洋さんと一緒になっても良いですか?生涯を共にする妻として迎えてもらえますか?」と真面目に真顔で真剣に言ったところ。
「もったいないお言葉!有難き幸せ!冴内家一同心から申し上げ奉りまする~ハハァ~~~」と、どこの時代劇だという程の勢いで同意してくれた。
優は「有難う御座います、不束者ですが、これから末永くお願いします」と言ってその場に手をついて平身低頭した。
それを見た家族全員が「もったいなきお言葉!頭をお上げください優姫!」とおろおろする有様だった。そんな様子を見ていたら父に「そこの者!頭が高い!と叱られた」
いやだから何の時代劇だよ。