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87:新婚「前」初夜

 まだ少女状態のユウと二人で色んなことを話しながら移動を続けているとあっという間に1日目の移動が終了した。米を炊いて味噌汁を作り缶詰をお湯で温めて二人で食べた。果たしてユウの口に合うかと思ったが「おまえ様がつくってくれたものは何でもウマイのう」と言って食べてくれた。


 そこまでは良かったのだが、二人で歯を磨いている時に冴内は重大なことに気が付いてしまった。寝袋が一人分しかないのと、この5日間風呂に入っていないことに・・・


 しまったぁぁぁ・・・うかつだったぁ・・・


 5日間も風呂に入っていない男がその間ずっとその身体で寝袋に入って寝ていた男臭満載の寝袋。そんな汚物にこのありえない程この世のものとは思えない程美しい少女を寝かせるなんてことは神への冒涜行為だ。いや、実際には神じゃなく【ンーンンーンンンン】人なのだが・・・ともあれ、そんなことをしたらまたしても機嫌を損ねて地球どころか宇宙崩壊の危機だ。


 どうすれば!どうすればいいんだ!!


 と、苦悩しつづける若きウェルテルならぬ若き冴内なのだが、いや、ウェルテルとゲーテに無礼千万なのだが、そんな冴内のことなどまったくお構いなしにユウはゴソゴソと寝袋を取り出して匂いを嗅いでいた。


「クンカクンカ、ウッヒッヒッヒ、お前様のオイニーがするのう。オスのオイニーがするのうスーハースーハーウッヒッヒッヒ」


 直視出来ない程ありえない程この世のものとは思えない程美しい少女の可憐な口から楽器の美しい音色のような声で、どこをバグったらそんなセリフになるのかゲート世界翻訳機と作者に対して神のチョップを叩き込んでやろうかと思った冴内だった。


 真っ赤なゆでだこか、ゆでたカニの甲羅か赤トウガラシのように顔を真っ赤にした冴内が「きっ汚くてごめん!・・・そうだ!タオル!タオルを巻けば少しは・・・」

「いやじゃ、このオイニーが良いのじゃおまえ様のやさしくて、あったかいぬくもりを感じるのじゃ、このふくろからは」

「おまえ様がこのなん日か、ワシのためにいっしょうけんめいワシのことだけを考えておったことが伝わるのじゃ」

「すごく良い気分なのじゃ、大好きなのじゃ」

「いや、だけど・・・」

「いいから、いいから、ホレ、ちこうよれ、ホレ」

「なかに入ってこんかい、ええ?ホレ、イッヒッヒッヒ」

「いやいやいや、一緒になんてダメだよ!」

「5日も風呂に入ってないんだから汚いよ!」

「なにを言うておる、それ言うたらわしなぞ800年間も風呂にも入ってなければ、顔も洗ってないし歯も磨いておらんのだぞ。ワシの方がはるかに汚いじゃろう。世界おぶつせんしゅけんがあったらだんとつでゆうしょうじゃぞ」


 そんな選手権などあってたまるかと思うが、驚くべきことにそれに近いしょうもない大会は現実に存在する。例えば世界一臭いスニーカー選手権とか。


「いやいやいやそれでも無理だって、一緒になんてとても無理!」

「あー・・・はくしょん、あー、はくしょん、はくしょん。さむいなーかぜひいちゃうなーわし寒くて死んじゃうかもしれないなー。寒くてこごえ死んでしまうかもしれんなー」


 と、これまで800年間お前どこにいたのか忘れたのかよとツッコミを入れる気すらおきない程わざとらしい演技だった。


「おまえ様だってそのまま寝たら寒くてかぜひくじゃろう。おまえ様がもし風邪などひいてしもうたらわしは一人でどうすればいいんじゃ?ひょっとしたらおまえ様たちにんげんのかぜがわしにうつったら死んでしまうかもしれんぞ。それでもええんか?ええのんか?ここがええのんか?ええ?おい?」


 しぶしぶ冴内は了承して近づいていったが、デオドラントスプレーなど持っているはずもなくとりあえず顔と首筋と手はタオルで入念に洗った。


 そうして寝袋に一緒に入った・・・


 まるで100メートル全力疾走でフルマラソンをしたかのようにって一体どんな様子なのか書いてる作者も意味不明だが、心臓の鼓動がとんでもない状態でそれこそ口から心臓が飛び出てしまいそうな冴内。必至に呼吸を落ち着けようとしているのだが過呼吸でチアノーゼを起こしそうになる。どうやったら鎮まるんだ!あっ!緊急医療キットに何かあるかもしれない!鎮痛剤とか鎮静剤とか!


 目の前には直視できない程ありえない程この世のものとは思えない程美しくて柔らかくて温かくて良い匂いのする少女が、5日間風呂に入っていない自分の匂いがする寝袋の中に一緒に入っている。


 ダメだ!倫理的にダメだ!犯罪的にダメだ!この作品の対象年齢的にダメだ!このままじゃダメだ!これじゃダメだ!逃げちゃダメだ!と、いよいよ頭の中がパンクして大爆発しそうになったところで、「あっ忘れとった、これじゃいかん」といってユウは寝袋から出てガサゴソと布袋から大人ものの肌着の半袖シャツをとりだした。それは女性隊員からもらったものだった。


 後に聞いたところによると女性隊員から服をもらうときにユウが次の日の朝はピッチピチのムッチムチのボインボインになると言ったので、女性隊員はブラジャーのサイズが合わないと考え下着についてはパンツと半袖シャツを渡したそうだ。どちらもお色気ムフフ要素がない見た目の保温性の良い実用的なものだった。


 ともあれ、今のユウには大き過ぎる肌着の半袖シャツをとりだすと今着ている服を脱いで裸になりその肌着の半袖シャツを着てもう一度寝袋に入った。


 冴内もすぐに寝袋から飛び出して、緊急医療用キットをあけて「麻酔薬」があったのを発見すると神にも祈る気持ちでそれを取り出し、もう一度寝袋に入るやいなやすぐに全部ガブ飲みした。


「まったくおまえ様もうぶじゃのう。でも嬉しいわい、お互いはじめてのあいてじゃの。明日からたのしみじゃわい、ケッケッケッケッケ!」


 といってなんとかR15指定を守り切った新婚「前」の初夜なのであった。

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