86:【ンーンンーンンンン】人
力堂達のベースキャンプを後にし冴内達は帰路についた。冴内の前にまだ小さなユウがちょこんと座っており板チョコをうまいうまいとかじっていた。
多分ユウは落馬して落下して地上に激突してもケガはおろかカスリ傷一つすらつかなさそうではあるが、それでも一応腰回りにロープを巻いて冴内と繋いでいた。
最初の方こそ、冴内はこのありえない程この世のものとは思えない程美しい少女に対して何と声をかけて何を話せばいいのかさっぱり分からず思い悩んでいたが、ユウを自分の前に乗せることで目線は前方斜め下の地形を見て進路確認しているので、この直視出来ない程ありえない程この世のものとは思えない程美しい少女の姿に畏怖することもなく、普通に会話し始めることが出来た
「ねぇユウ、前に何かいたずらをしたから閉じ込められたと言っていたけど、一体どんないたずらをしたんだい?」
「ううむ・・・そうじゃのう・・・あまりその、言いたくないんじゃがこれからわしらは結婚するわけじゃしのう・・・」
「わかった、わしはいっさいあらいざらいゲロすることにする」
「いや、どうしても言いたくないことは言わなくてもいいよ?」
「いや、ふーふの間にはかくしごとはなしじゃ。ダーリンにはわしの全てを知ってもらうことにする」
「実はわしなぁ・・・わしは、その・・・ちょっと力あまってその・・・」
「宇宙をぶっこわしてしもうたんじゃ」
「えっ?う・・・宇宙?」
「うむ、こことは別の宇宙でのう。わしもけっきさかんなころでのう。おのれのありあまる力がはたしてどこまで強いのか、ついついためしてみたくなってのう。ふるぱぅわぁー全開でチョップしたら宇宙がぶっこわれてしもうたんじゃ」
このお嬢さんは冴内の1億万倍つよいらしいので怒らせたら地球をも破壊しかねないとは思っていたが地球どころか宇宙を破壊してしまったそうだ・・・
「そりゃもう色んな宇宙人からこっぴどく叱られてしもうてなぁ。とりあえずりゅう君のオジサンたちとそのなかまおおぜいでなんとかしゅうふくして、死んだ宇宙人たちも生き返らせたんじゃが、そのことでだいぶオジサン達もふけてしもうてのう・・・もうしわけないことしたのう・・・」
えーと・・・宇宙って直せるんだ・・・あとりゅう君のオジサンってそんなにすごいんだ・・・っていうかこれどこまでホントの話しなんだろう・・・
「その後わしのようなきゅーとなやんちゃ姫がまたあらわれて宇宙をぶっこわさないようにいましめるためにあちこちでこどもにも分かりやすい絵をかいてばらまいたんじゃ」
「もしかして反省室の扉の近くに描かれていた絵がそうなの?」
「そうじゃ、あれはわしがりゅう君のオジサンのじょうしにこっぴどくしかられている絵じゃ、そのまわりにおるのはわしがぶっこわした宇宙に住んでた宇宙人たちじゃ」
「あの壁画ってそうだったんだ・・・てっきり神の中の神がドラゴンや下僕達を従えている崇高な光景のかと思った・・・」
「うん、あれは宇宙人たちの目の前でしこたましかられてるわしの絵じゃ」
「あとな、わしはそう・・・かみのなかのかみとかじゃないんじゃ」
「えっ!?違うの?」
「そりゃそうじゃ、いたずらしてこっぴどくしかられるかみなどおるものか。というよりもかみとかいうものをわしは見たことがない」
「かみのなかのかみというのはウソじゃ。あのときはシーラとか申すおなごが、おまえ様にお色気ムフフさくせんでアレしようとたくらんでいたので、とめるためにひっしで考えたウソじゃ」
「えぇっ!じゃぁユウは一体何者なの?」
「わしか?わしはさいきょうの宇宙人じゃ。わしはさいきょうの【♪ー♪♪ー♪♪♪♪】人じゃよ」
またしても 【♪ー♪♪ー♪♪♪♪】の部分はひらがなでもカタカナでもアルファベットでもキリル文字でも地球上に存在する全ての文字での表現が不可能な美しい金属音だった。
「その【ンーンンーンンンン】人ってユウ以外に何人くらいいるの?」
「おっおまえ様【♪ー♪♪ー♪♪♪♪】語、結構うまいのう【♪ー♪♪ー♪♪♪♪】人は昔は沢山おったよ、数百億円万円くらいおったよ」
何故単位が円なのかよくわからないし、なぜ常に億の次は一気にとんで一桁万なのかも良く分からないが、恐らくゲート世界翻訳機能がバグっているのだろう。
「ちなみにわしのせんぱいとこうはいがおまえ様たちのおる、ちきゅうとやらに何人かあそびにいったことがあるようじゃぞ」
「そうなの!?」
「わしの知り合いだと【おと】せんぱいとこうはいの【かぐや】の二人かのう。二人ともお姫様と呼ばれて大事にされておったよ。本名は【♪♪♪♪ー♪
ー♪】と【♪♪♪ー♪ー♪♪♪】じゃけどな」
それって浦島太郎に出てくる乙姫様と竹取物語に出てくるかぐや姫のことだろうか・・・
「【おと】せんぱいはうまいことカレシができたようで、なんどもわしらにじまんしにきたのう。【かぐや】の方はだいぶモテたようじゃがパッとしたのがおらんかったそうじゃ」
「ちなみにその二人は今はどちらに・・・」
「多分もうとっくに死んでるじゃろうのう。二人にはおまえ様を見せびらかしたかったのう・・・さぞやくやしがって、わしはじつにいいきぶんじゃっただろうのう」
「なにせわしだけあのあと反省室でとじこめられっぱなしじゃったからのう」
乙姫様もかぐや姫も【ンーンンーンンンン】人だったという驚愕の事実を知ってしまった冴内だったが、この話しをどこまで正直に報告すればいいんだと真剣に頭を抱えて悩んでいた・・・