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84:ユウ

「優しいっていう意味のゆう実はこの名前は自分が産まれる前に両親が考えた名前なんだ。男の子ならよう、女の子ならゆうにしようって決めていたらしい。だから君の名前はゆうっていうのはどうだろう」


「ゆう・・・ゆうか、お前様がようでワシがゆう・・・」


「ヘイ!ヨウ!ヘイ!ユウ!のユウか」


 いや・・・それは違うと思うが・・・


「ええのう、ユウ、優しいのユウ・・・ええのう。有難うな、お前様よ」


 ユウがありえない程この世のものとは思えない程美しく穏やかで柔らかな笑顔でそう言うやいなや、ピカーッ!と反省部屋がまばゆい光に包まれた。ヘルメットのサングラスバイザーがなければ網膜を焼かれるのじゃないかというくらい強烈な光で全てが漂白されたかのように光り輝いた。


 光がおさまってようやく目を開いてみたがユウはどこも何も変わっておらず相変らずありえない程この世のものとは思えない程美しい10歳くらいの少女のままだった。


 とりあえず神の中の神のユウを解放したので特別緊急依頼は完了したと思っていたら、携帯端末からアラームが鳴り響き以下のような画面が強制的に表示されていた。


--------------------

【!!とくべつきんきゅういらい!!】


すぺしゃるいらいなんばー:ぜんぶ

いらいぬし:かみのなかのかみ

ばしょ:りゅうのおうち

おねがい:かみのなかのかみをかいほうしろ


すてーたす:【かんりょう】

みなのもの ごくろうじゃった

みごと さえない は かみのなかのかみを かいほうした

めでたし めでたし ふたりは けっこんします

--------------------


 やっぱり結婚することになるんだ・・・


 まぁそこは10歳の子供が言うことだしスルーしておくことにして、「この【とくべつきんきゅういらい】ってユウがやったの?」と冴内が聞くと、そっぽを向いて下手な口笛を吹いていた。ありえない程この世のものとは思えない程美しい唇を尖らせて。


「お前の仕業かぁぁぁーーー!」(力堂達と作者)


 ともあれ、ここに長居する必要もなくなったので下山することにした。さて、ユウをどうやってアリオンに乗せようかと思っていると、ユウはりゅう君の方にすたすたと歩いていき「すまんが下まで送ってくれ」といって大ジャンプしてりゅう君の頭の上に飛び乗った。りゅう君も「うん、いいよ~」といってそのままゆっくり移動した。ユウはりゅう君の頭の上で何かにつかまることも座ることもなく仁王立ちしたままの姿勢だった。落ちる心配とか無用のような気がした。


 一方その頃・・・


 神代は机の上に頭から突っ伏していた・・・


 もしもごく普通の精神力の一般中間管理職だったら下手したら精神崩壊して半年以上は精神診療が必要な状態になったことだろう。


 全世界機関のシステムに「特別緊急依頼」が自然発生的に書き込まれた事件が発生して、その後すぐに緊急で全世界局長会議を開いたところ、力堂から竜発見の報を受けて、思考停止状態に陥りそうになるのをなんとかこらえて、力堂からの要請を早急に検討し、まずは中型アンテナ設置班を送り出して、すぐさま増援チームの人選とプランを練ろうとしたところ、最も大事な中心メンバーの冴内の所在が分からず、すぐに捜索するよう職員達に指示したところ、道具屋から冴内が竜に会いに行くと言ってすっ飛んでったの報を受けた、それも4日前の事だというのを聞いて頭を抱えた。


 さらにその後の捜索で幾人かのシーカーからペガサスが時速100キロ近いスピードで飛んでいったのを見たという目撃情報やゲート村からかなり離れた場所にある集落から冴内が立ち寄ったという情報も得た。方角的には力堂のいる北北西の進路なので、神のチョップの奇跡に賭けることにして、追加増援隊の人選とプランの検討を開始し、2日後には追加増援チームを送り出すことに成功した。


 神代の目算では奇跡的に力堂のもとに辿り着くとしても少なくともひと月以上はかかると考えた。とはいえ長距離単独移動においては全くの素人の人間が空を飛ぶ馬に乗って5千キロも離れた距離の点と点をGPSもなしに辿り着くなど、可能性は限りなくゼロというよりも全くのゼロであり、冴内は既に通信可能エリア外にいるのでその所在は完全にロストしており連絡を取ることも出来ない。力堂や追加で向かっている人間達に「狼煙のろし」などをあげさせて冴内が少しでも気付いてくれるように指示するべきか・・・


 このように普通の人間ならば次々と襲い掛かる困難に対処しきれず頭脳回路が焼き切れて思考停止するかパニックになるところを神代はなんとか精神力を振り絞って耐え、頭脳をフル回転させて最適解を模索し続けていたのだが、徹夜明けの翌朝に力堂から冴内と合流したという報を聞かされ、しかもその後、難なく山を超えて竜に会い、神の中の神の救出に成功したと言われ、挙句の果てにまたしてもシステムが乗っ取られ「めでたし めでたし ふたりは けっこんします」などというふざけたメッセージが飛んできたのだ・・・要するに一言で言うと全て冴内一人で解決してしまったのである。神代はまさしく「THE 徒労」という気持ちを味わっていた。


 ともあれこのふざけた「特別緊急依頼」はどうやら解決したらしい。しかも神のチョップを持つ冴内君が「神の中の神」と結婚するらしい。




クックックックッ・・・

ハッハッハッハッ・・・

ワァーハッハッハッ!!

神代は壊れる程大笑いした。




 心から同情します(作者)

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― 新着の感想 ―
[良い点] ギャグ小説として面白かったです。 [気になる点] 本文に作者が出てくるのに耐えられずギブアップします。 最初から出てくるのであればそういう物として受け入れられましたが、途中から出てくるのが…
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