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52:製作依頼

 さすがに空を飛ぶようになってしまったアリオンに鞍もつけず、はだかの状態のままで乗馬するというのは自殺行為だということで、アリオンに装備する馬具を作ってもらうことにした。


 朝食後、道具屋に相談しに行ってみると、ペガサスの馬具を作れる職人など果たしてこの世に存在するのか、はなはだ疑問ではあるがそれでも一通り知り合いに当たってみると言い、ついでに「シーカーよろず相談掲示板」にも書き込んでおくと言ってくれた。


 馬具の事とかこれっぽちも分からないけれど、馬と乗り手に合わせた完全オーダーメードになるのは確実だし、さらに空を飛ぶわけだから安全性を考慮した特別なものになるので、この様子だと下手したら半年くらいはかかりそうだと冴内は思った。


 当面パラシュートを背負って乗ればワンチャン死なずに済むかしらなどと、パラシュートの最低飛行高度は大体平均で300メートルからいうことを全く知らない冴内は実にのんきで命知らずなことを考えていた。数十メートルという高度で落下すれば確実に激突死する。


 馬具は時間がかかりそうだということで、冴内は別の依頼をした。アリオンに名札と発信機を付けようと思っているのだ。もしもアリオンが一頭で草原などで食事や散歩をしたり、小川や泉で水を飲んでいるときに他のシーカーが見ても、飼い犬飼い猫ならぬ飼い馬、いや、飼いペガサスだと分かるようにしておけば、アリオンに被害が及ぶのを避けられるのではないかと思ったのだ。


 馬具がつくようになればその必要もなくなるが、それまでの間の暫定措置としてその趣旨を道具屋に相談すると、それならばすぐにでも用意できそうだと言ってくれた。


 数日後、神々しいペガサスの首に

「アリオン、大人しいです、何かあったら冴内さえない ようまで連絡を」

 と、書かれた名札をぶら下げたアリオンが登場することになる。ちなみに早乙女さんには

「おりこうです」

 とペンで書き足されることになる。


 一方、道具屋が「シーカーよろず相談掲示板」に「冴内君のペガサスの馬具を作れる人募集」と書き込んだ直後、英国のゲート関連情報部はすかさず動いた。


 ゲート内で通信可能な範囲は現在かなり限定的である。その理由は通信衛星が存在しないのと、そもそもゲート内の世界が他国のゲート内世界と同じ世界なのかすら不明な状況下なので、数万キロを超える長さの長距離通信ケーブルで世界をつなぐなどという計画も実施されていないからである。


 そのため「シーカーよろず相談掲示板」が閲覧できるのは富士山麓ゲート内だけの話しである。そもそも富士山麓と奈良のゲート世界ですらまだつながっていないのだ。


 それにも関わらず、英国のゲート関連情報部は英国本土で「シーカーよろず相談掲示板」についての書き込み内容を把握していた。何故それが可能だったのかというと、例の壁画騒ぎで世界各国の調査団が富士山麓ゲートに集結した際、それに乗じて英国情報部所属のシーカーも入り込んでいたからだ。


 当然神代はその存在を十分把握していたが、敢えて黙認していた。いくら英国情報部とはいえ、さすがに冴内を密かに尾行することまでは差し控えていたからだ。


 富士山麓ゲートに潜入した英国情報部員はさすがに冴内を付け回すことはしなかったが、常に冴内に関する情報を監視していた。そうした状況下だったので、情報部員が「シーカーよろず相談掲示板」で「冴内」の文字を確認するとすぐにゲートを出て、通常世界の通信端末を使って英国本土情報部へと連絡したのだ。


 この情報はすぐに英国ストーンヘンジ・ゲート局長サー・アーサー・ウィリアム3世の耳にするところとなった。すぐに情報戦略チームが編成され、この好機を最大限に活かす作戦が検討された。

「諸君、我々の最大の敵は時間だ。この機を逃さず最良の作戦を最短で作成し最適に実行してくれ!」

「サー!イエッサー!」

本物のサーの称号をもつだけに、まさしくこれは正しい返礼だった。


 水面下でそんな諜報活動が自分を対象として行われていることなど、知る由も知る術も知るはずもない冴内は今日のお昼は何を食べようかな?などと実にのんきでたわけたこと考えていた。はだかの状態のアリオンに乗って空の散歩をしながら・・・

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