457:ブラック撃破
不思議世界ジメンにて、暗黒魔王の生体組成解析結果から、残念ながら暗黒魔王の美味しい肉を食べてもいっときは味わうことは出来ても腹は満たされないという残念なお知らせを聞いた美衣達はかなりガッカリした様子で項垂れていた。
「なんか・・・アタイ急にヤルキがなくなった」
「ボクも・・・」
「私も・・・」
何せこれまで食べてきた極上の食材の中でもダントツに美味しいお肉だっただけに、美衣達の落胆ぶりは大きなものとなった。
「えっと・・・と、ところでブラックってまだいるのかな?」
『う、うん!まだいるみたいだよ!』
場の空気を察して話を変えてみた冴内と、同じく空気を察してくれたパステルであったが、美衣達は相変らず頭を垂れてヤルキ無しモードだった。
美味しい肉を食べても満腹感が得られないからヤルキがなくなったという理由で宇宙崩壊の危機を防ぐことを放棄されてはかなりたまったものでじゃないが、残念ながらそんなムードが漂っていた。
「え~と・・・どうしようか・・・じゃあ僕が行って倒してこようかな?それでいいかい?良子」
「うん、でもお父さんが私に倒してきて欲しいって言うのなら私喜んで倒してくるよ」
相変らず良子は良い子だなぁと冴内は嬉しく愛おしく思いながらも、自分が行ってサクッと倒してくるからその後は皆で何か美味しいもの探しの探検に行こうと元気づけると、いつもの高いテンション程ではなかったが一同分かったと了承してくれた。
「それじゃ行ってくる」
「私も行くわよ!」
『もちろんワタシも行くよ!』
「ウム、私も行こう」
「私もご一緒します!」
結局冴内に同行するのは優とパステルとさいごのひとロボ4号機とアイとなった。音声ガイドロボ2号機は美衣達のお世話係として残るとのことだった。
「えーと・・・ここの銀河にいるんだね・・・って、おや?ここは暗いね、うーんと・・・どの星だろう・・・あれ・・・かな?随分暗いぞ真っ暗だ、よし分かった、それじゃ行くよ!」
「いいわよ!」
『レッツゴー!』
「ウム」
「どうぞ!」
こうして冴内は最後の暗黒魔王ブラック大魔王、じゃなかったブラック暗黒魔王のところへと瞬間移動した。
冴内の言った通り移動した先は真っ暗闇で何も見えなかった。さいごのひとロボ4号機とアイがサーチライトを照らしたが、パステルがワタシが照らしてあげるよと言って自らの身体を発光させると、辺りは昼間のように明るくなった。あまりにも明るいのでパステルの方を直視することが出来なかった。
どうやら冴内達がいるのは巨大な自然のドーム空間で、恐らく地底洞窟と思われた。そして目の前およそ100メートル程前方に大きな身体のブラックが横たわってグッスリ眠っていた。パステルの強烈な明かりにも構わずグゥグゥ寝ていた。
「えっと・・・とりあえず、尻尾を切り取ってくるかい?」
「ウム、解析したいので是非そうしてくれたまえ」
「はい、お願いします」
「お腹が膨れなくてももう一度味わうだけ味わってみたいわね!」
『うん!ワタシも!』
「分かった、じゃちょっと行って尻尾をちょんぎってくるね」
冴内は瞬間移動してブラック暗黒魔王のお尻に移動してまったく何の音も立てずに1秒もかからずスパッと太く巨大な尻尾を切断して戻ってきた。
全ての所作と移動時間を含めても3秒もかからないという異常な早さだった。
ブラック暗黒魔王はきっと彼にとっては大事で大切であろう尻尾が切断されたというのにまったく痛がることも痒がることもなく眠り続けていた。
恐らく冴内のチョップはもはやあらゆる生き物全てが冴内のチョップを食らって手足などが切断されたとしても痛みすら感じない程の領域まで達しているかもしれなかった。
冴内はすぐに切り取ってきた大きな尻尾をこま切れにした。さいごのひとロボ4号機とアイはすかさず手のひらをかざして肉を吸収して成分分析をし、冴内達は消えてなくなる前にせめて味だけでも楽しむことにした。
最初はナマのままの生肉を食べたがやはり超絶に美味しく、さらに優が気を利かしてあらかじめ美衣から借りてきた宇宙ポケットから塩コショウを取り出してふりかけてバーベーキュー用の串に刺してから火魔法で軽く炙って冴内に渡した。
あまりの美味しさに声を上げそうになったが、ブラック暗黒魔王を起こさないように慌てて口をつぐんだ。優もパステルも「~~~ッ!」と声を出さずに腕をブンブン振ったりして美味しさを身体で表現した。
しかしやはり食道を通過して胃に落ちる前に消滅していくのが実感として分かり、これがかなり残念な気持ちになった。美衣達の落胆ぶりがすごく理解出来る程に残念な気持ちになった。
優が妙案を思いついたようで、尻尾肉の間に野菜やモチを挟んで串焼きにした。すると今度は胃にしっかりと残るので、ガッカリする気分はいささかではあるがマシになった。
しかしながらどんどん尻尾はチリになって消失していったので、結局腹一杯まで食べることは出来ず、ますます喪失感が増すことになった。優が機転を利かしてくれた時は美衣達を呼んでこようかと思ったが、この喪失感は結構大きいので呼ばなくて正解だったと思った。それほどまでに暗黒魔王の肉は美味しかった。
「さて・・・このまま気持ちよく眠っているうちに倒そうと思うけど、それでいいかい?」
「私はいいわよ」
『ワタシもオーケー』
「ウム、今回は私も最後まで解析出来た」
「はい、こちらも解析完了しましたのでいつでも大丈夫です」
「分かったそれじゃ倒すね」
冴内はブラック暗黒魔王の頭の位置に瞬間移動して「トン」と軽く眉間のあたりに触れた。
するとこれまでとは比べ物にならない速度であっという間にブラック暗黒魔王はチリになって消えていった。
優とパステルが凄いと絶賛しようと口を開きかけたところで、冴内が大声をあげた。
「あぁっ!しまったぁっ!」
「どうしたの洋!」
すぐに優が冴内の元にワープした。
『どうしたの冴内君!』
パステル達もすぐに冴内の元に駆け付けた。
全員が冴内の元に集まり冴内を見た、すると冴内は「倒すんじゃなくて名前をつけてあげればよかった・・・すっかり忘れてた・・・」
『あぁーっ!そういえばそうだった!ワタシもすっかり忘れてた!』
「ごめん洋!私もすっかり忘れてた!」
「すまない冴内 洋、解析作業に専念するあまりその点について指摘するのを失念してしまった」(最後)
「知らなかったこととは言え、私もその点についてご指摘差し上げられなくて大変申し訳ありません」(アイ)
「いや・・・いいんだ、これは僕の責任だよ、ついついこれまでの流れで倒してしまった」
これまたそんな流れを一切知らない第三者が今の冴内のセリフを真に受ければ「つい流れで殺しちゃった」と言っているのに等しく、冴内という人物はなんと恐ろしい殺人鬼なのだと思うことだろう。
『気を落とさないでよ冴内君、ワタシ思うんだけどいくら冴内君の名前付けのパワーが凄かったとしても、コイツらが良いモノに生まれ変われるとは思えないんだよね、正子ちゃんの時はコイツらと違って段違いに頭が良かったし、それに自ら望んで名前を付けてくれと願い出たし、冴内君とワタシがぶっ倒れるまでパワーを与え続けたし、そして何より一番は美衣ちゃん達やその他大勢の人達が皆でずっと願いをかけ続けたから、今のとっても素敵な正子ちゃんになれたんだけど、正直他の魔王達はそんな可愛いものじゃないと思うんだよね』
「なるほど・・・確かに自分に対して強い敵対心のある存在に無理やり名前を付けたところで、効果があるとは思えないですね」
さいごのひとロボ4号機とアイは心の中でそれはそれでどうなるのか見てみたかったと少し残念に思ったのであった。




