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45:配信モード録画

 一方、富士山麓ゲート研修センター内にある大会議室では巨大スクリーン画面いっぱいに冴内による録画動画が映し出されていた。


 およそ150人程の人間が誰も一言も発せず食い入るように凝視していた。


 冴内が今日録画した全ての動画は実は配信モード録画だった。つまり全ての動画がライブ中継されていたのだ。


 シーカーの携帯端末での録画は端末内のメモリーに録画するモードと、非公開でゲート村にある記憶装置に無線で録画されるモードと、ゲート村にいる全員が閲覧可能な動画配信サイトにライブ中継で配信されるモードがある。


 2番目と3番目の録画モードは重要で、携帯端末が壊れたり紛失したりしても貴重な証拠映像が残る。さらに3番目のライブ中継配信モード録画は数秒のタイムラグはあるがほぼリアルタイムなため情報解析が即時に行えるし、指示役が動画を見ながらシーカーに次の動作指示や情報支援をすることも出来る。


 また、録画不能になるまでライブ配信し続けるため、例えばシーカーが遭難した場合やケガをして動けなかったり話すことが出来なくなったり意識を失ったり最悪の場合死亡した場合でも、救助や遺体回収の確立が高くなる。当然貴重な証拠映像が残ることで後の危険回避にも大いに役立つ。


 ゲート内とゲート外は無線が通じないため、ゲート内に配信された動画は外部記憶媒体にコピーして物理的にゲート外に持ち出さなければならないが、冴内の動画がゲート内の動画配信サイトにライブ中継されるやいなやすぐに情報部所属のシーカーが動画をコピーし富士山麓ゲート研修センターへ持ち出したのだが、冴内からは次々と動画が送られてくるのでゲート村のデータサーバから研修センターまで情報部員総出で手渡し外部記憶装置データのバケツリレーが行われていたのであった。


 そんなことなどつゆ知らずで冴内はひたすら録画していたのだ。ちなみに知らないうちにモードが切り替わった理由は昨日の落馬が原因だった。


 神代はこの動画を見るのは今日これで3回目であったが大会議室の巨大スクリーンモニタで見ると、改めてその圧倒的な迫力と臨場感、驚愕のシーンの連続、そして美しい大自然の姿など、まるで自分がシーカーになって探索しているかのような気分になってその時間だけかつて小学生だった頃の自分に戻っていた。


 そもそも冒頭の衝撃映像からしてインパクトがあり過ぎた。のっけから泉の「水の精霊」(と後に呼称された)の登場である。先日壁画の発見で全世界がひっくり返る程の大騒ぎになったというのに、今度は「人の言葉」を発するゲート内知的生命体が出現したのである。世界最強破壊力の「出オチ動画」だった。


 ここに集まっているのは皆一癖二癖もある150人の参加者で、会議が始まる前はあちこちで議論が飛び交い辺りは騒然としていたのに、動画開始からわずか数秒で彼ら150人全員を一瞬で黙らせたのである。

 ユニコーンの家族の別れのシーンではすすり泣く声がチラホラ聞こえてきた。冴内が「森のあちこちを案内してくれるかい?」と言った後に出てきた美しくも荘厳な大自然の数々の映像シーンではあちこちでため息が聞こえた。


 ただ最後の「げぇっ!」というシーンでは会場が大爆笑の渦につつまれた。その際冴内の携帯が吹き飛んでバッチリ冴内の「げぇっ!」の顔が映っていたのだ。大ヒットコメディ映画も顔負けの映像シーンだった。そのシーンも3回目だった神代は笑いをこらえるのに一苦労だったが、おかし過ぎてあふれ出る涙だけはこらえきれなかった。


 最後の「げぇっ!」で動画が終了すると、会場はほぼ全員スタンディングオーベーションで拍手喝采の嵐だった。


 一方その頃、冴内は、食堂にて早乙女、梶山、宮の3人に「これお土産の梨、すごく美味しいよ!」と実にのんきにお土産を渡していたのであった。知らないということはある意味実に幸せな事である。


 その後、いつものようにのんきに風呂に浸かり、ロッジの前でユニコーンに「おやすみ、また明日」と言って個室に入り、もう寝るかと思っているところで連絡がきた。


 職員の方から頼むから明日はどこにも出かけずヒアリングさせてくれと、携帯の向こうで土下座しているかのように懇願されたので、慌てて二つ返事で了承した。通話後、すぐに良野さんに明日の探索には同行出来なくなったと、それこそ冴内も土下座しそうな気持で謝罪したが「ウン、知ってる」と明るい感じで言われ、問題ないから職員の人達に協力してあげてと言われた。

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