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449:惨殺者冴内

 昼近くになり、イリィーティア達がロエデランデ家の本館にやってきた。


 イリィーティアは冴内にその節は大変お世話になりましたと挨拶し少しの間歓談した後、冴内達は家に帰ることにした。


 ロエデランデ家一族は別れを惜しみつつも、恐らく生涯で最高の素晴らしい出会いであったことを大いに喜び、かの有名な冴内一族と知己を得たことも大いに感謝して一族全員、料理人や給仕の者達も総出で見送った。


 盛大に見送られながらも別れの余韻に浸る間もなく一瞬でさいしょのほしのログハウスに戻ってきた冴内達はまずは軽く昼食をとることにした。


 何か軽めにあっさりしたものを食べたいねということになり、作ってみたのはそうめんだった。


 さいしょのほしでさいしょの民達が育てた小麦を使ってそうめんを作ってみたのだが、これがまた抜群に美味しくて、結局軽く食べるどころか満腹になるまでタップリ食べてしまった。


 腹一杯食べてしまったので、しっかり食休みをとってからようやく不思議世界ジメンへと向かった。


 ジメンに着くとすぐに変わり果てた姿の汎用作業支援ロボ達が目につき、なんだか以前よりもかなりカッコイイロボットになっているので、冴内と美衣と初は興奮して喜び、良子は完成していた宇宙探知機が素晴らしい出来栄えなので大いに喜んだ。


 早速完成した宇宙探知機を設置するため、冴内はパステルが指示した宙域に瞬間移動して探知機を設置して戻ってきた。


 さいごのひとロボ4号機が正常に動作していることを確認したが、当初の予想を大幅に上回る性能に驚いていた。


 アイがそれも全てひとえに冴内様が私をイリィーティア様に引き合わせていただいたおかげですとベタ褒め大絶賛して、その場の全員がさすがだと冴え渡る冴内を賞賛した。


 さらにアイは付け加えてこの調子ならば明日にでも超高性能光演算装置本体は新型探知機を駆使して暗黒魔王達の居場所を突き止めるだろうと言った。


 この発言に冴内達は驚き、予想以上に早い接触になることを覚悟し、それぞれに緊張感が走る・・・ことはなかった。


「やった!アタイ赤いのと闘いたい!」

「ボクは青いの!」

「私はブラック!」


『わぁ!ワタシも観戦したい!皆の闘いを見たいから美衣ちゃん達全員いっぺんに闘わないで、一人ずつ闘ってくれる?』


「いいよ!」

「分かった!」

「うん!私は一番最後でいいよ!」


「えっと・・・だ、だいじょうぶだよね?」

「はい、大丈夫です!美衣様達でしたら全く何の心配もありません!カスリ傷一つすらつかないことでしょう!」(アイ)


「えー、少しは歯ごたえのある相手じゃないと面白くないなぁ」

「ボクも・・・」

「私も・・・」


「いやいや、油断しちゃダメだよ皆、ここに来たばかりの頃のことを忘れたのかい?あの時はみんなまともにジャンプすら出来なかったじゃないか、どんな相手でも油断したらダメだよ」


「ハッ!そうだった、父ちゃんの言う通りだ!スマン父ちゃん、たとえ相手が空気だと分かっていても決して油断しちゃいけないんだった!」

「ボク反省する!油断しないで全力で空気と闘う!」

「私も!」


 なんとも残念なことに美衣達からは既に空気呼ばわりされる暗黒魔王達だった。それにしても全力で空気と闘うとは一体どういうことだろうか、シャドーボクシングみたいなものだろうか。


「うーん・・・そうだ、久しぶりにイメージトレーニングでもやってみる?」


「やっ!あれか!やる!アタイやる!」

「ボクやったことない、どういうの?」

「私も前に少し聞いたくらいだから知りたい!」


「あれはすごいぞ、アタイも母ちゃんも何度も父ちゃんに殺されたんだ、首チョンパされたぞ」


「私も頭から真っ二つにされたわよ!バラバラのコマ切れ肉になったこともあったわ!」


 さらりととんでもない惨殺シーンを口走る美衣と優、それも愛する父であり夫でもある冴内に首チョンパにされたとかバラバラにされたなどと、割と嬉しそうな口調で語る姿は実に異様であり、それを聞いている初と良子も何故か嬉しそうだった。


「おとうたん、ぱないでしゅ」正子も笑顔でそう言った。


『何それすごい!ワタシもそれ見てみたい!』

「いや、あくまでもイメージトレーニングだから多分傍から見ていても何も分からないと思うよ」

『イメージトレーニング?あっそうか頭の中で想像して闘うってことなんだね』

『仮想的な模擬戦闘ってことなんですね』(ジ)


「よし!やるぞ!アタイからお願いします!父ちゃん!」

「分かった!それじゃみんなちょっと下がってくれるかい?」


 優達は冴内達から距離をとり二人を見守った。


 良子がさいごのひとロボ4号機に高性能カメラなどの設置を頼もうとしたところ、既にアイと一緒に何やらすごいカメラや複合センサーをセッティングしていた。


 冴内と美衣は互いに礼をして少し距離をとって、静かに身構え始めた。


 二人とも力を抜いた自然の構えで、一見するとお互いとてもリラックスしているようにも見えた。


 美衣は一瞬、ほんの一瞬だが、目を伏せたようにしてどことなく眠そうな目をしたが、次の瞬間凄まじい殺気と闘志が冴内の身体を貫き背中を貫通して遥か彼方の後方まで真っ二つにしたのではないかという程の波動を放った。あくまでもイメージなのだが、全員まるで衝撃波を食らったかのように目を細めてしまう程だった。


 あっと声を出す間もない程の一瞬の出来事で、若干間の抜けたタイミングでようやくあっと本当に声を出した時は美衣の身体が頭から真っ二つになって倒れている姿が全員の目にもありありと鮮明に浮かび上がった。


 もちろん美衣の本当の本物の身体は全く無傷なのだが、美衣の実体がいるところを見ると、ヒザをついて両手をついて四つん這いになって、肩で息をしていた。


「す・・・少しはイケると思ったアタイがバカだった・・・慢心とはまさにこの事だった・・・」


 美衣は立つことすらできず、四つん這いのまま冴内に「ありがとうございました」といつもの美衣とは思えない程に力なく挨拶をして、ズリズリと戦線離脱した。誰も何も言えず、とんでもない緊張感が漂っていた。


「ハジメ、これは実戦じゃない、怖がらずに思いっきり胸を借りるつもりで全力で行くんだ、そうじゃないと修行にならないぞ・・・」

「う、うん!分かった!全力で行く!」


 一体どういう会話なんだと突っ込みたくなる光景であった。とても可愛い少女と幼児が交わすセリフではなかった。


「おっ、お願いします!」


 次に初が冴内の前に距離をとって構えた。初は最初から両手をクロスさせてものすごい前傾姿勢をとり、今にも目にも止まらぬ光の速さで冴内を貫こうという体勢をとった。


「いつでもいいよ、初」

「スゥ・・・」


「「「 ・・・ゴクリ 」」」


「・・・ヤァッ!」


 冴内の胸を斜めにクロスした斬撃が突き抜けて、またしても冴内の遥か後方にまで初のクロス斬撃が突き抜けていったかのように見えたのだが、次の瞬間冴内の足元には4分割された初の身体が横たわっている姿が全員の目に浮かび上がった。


 今度は初は前のめりに倒れて意識を失っていた。


 優がすかさずすっ飛んでいって初を抱えて戻り、サクランボを一粒口に含んで噛み潰して初に口移しでサクランボエキスを飲み込ませた。


 初はそこで意識を回復し「あ、ありがとうございました」とまだ少し焦点の合わない虚ろな目でそう言った。


 ここまで来ると全員もう何も言うことが出来ず、いつも軽口をたたくパステルも押し黙ったままだった。


「おっ!お願いします!お父さん!」


 良子の勇気を振り絞った一声で、ようやくハッと我に返ったパステルは次の一戦を見守った。


「いつでもいいよ、良子」

「いきます!フゥゥゥゥ・・・」


 今度は実際に良子の両腕、肘から先が黒い霧に覆われたのが見て取れた。これはイメージではなく、本物のブラックホールパンチが発動していた。


 良子も目を細めて、目線で攻撃を悟られないように冴内を点で捉えるのではなく、冴内と周囲全体を見るかのようにした。さらに入念なことに呼吸すらも察知されないように静かに行った。何故なら息を止めたり吐く瞬間が攻撃の瞬間だからである。


 今度は誰の目にも良子の姿がその場から消えたように見えた。そして冴内の頭部が消し飛び、続いて腹部を抉るボディブローが決まったかのように見えた。


 しかし冴内は微動だにせずそのままの姿で立ったままで、冴内の足元には良子の頭と胴体が分離した姿で横たわっている姿が全員の目に思い浮かんだ。


 実際の良子はというと初の時と同様に前のめりに倒れて気絶していた。


 あまりにもショッキングな状況に観戦していたパステルも気を失いそうになる程だった。

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