表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
440/460

440:パステルの修行

 翌日、朝食を取り終えた冴内達が不思議世界ジメンに行くと、パステルとジメンから全く正反対の一番遠い銀河にある空間投影機が破壊されたという報告がもたらされた。


『多分ブラック大魔王・・・じゃなかった、ブラック暗黒魔王だと思う』(パ)

『はい、私もそう思います』(ジ)

「フム、これで残りの暗黒魔王もまんまと挑発にのったというわけだな」(最後)

「それはよかった、これでもう空間投影機を設置する必要はなくなったわけだね」(冴内)


 冴内はあの恥ずかしい挑発動画をこれ以上宇宙中の銀河にバラまかなくていいことに少し安堵した。


 さいごのひとロボ4号機がパステルの作った立体宇宙銀河マップを見て、ブラックが破壊した空間投影機を確認すると、新たに別の空間投影機も幾つか破壊されていることが分かり、その数と位置関係から進行方向と移動速度を算出した。


「以前パステルが言ったように、彼等は気まぐれで好き勝手に行動するようだから、あくまでも目安ではあるが、おおよそ7カ月から2年半程度でこちらの宙域に到達するのではないかと予想する」


「さすがにこれだけ離れていると、赤いのや青いのよりは日数がかかるんだね・・・うーん・・・やっぱり、こっちから迎えに行ってみようかな・・・といっても先に探知機を全部設置してからの話しだけどさ、その後はただ待ってるだけというのも時間を持て余すからこちらから探してみてもいいじゃないかって思うんだけど。もちろん入れ違いにならないように、ずっと長い時間あちこち探すんじゃなくてちょっと探したらすぐ戻るみたいにしてさ、ダメかな?」


「ウゥム・・・まぁ時間を持て余すというのなら、やってみても良いとは思う。しかし遭遇確率はかなり低いとみてもらった方がよい」


『そうですね、さすがにこの広大な宇宙で、しかも相手は気まぐれときてますから、そんな中で時間も場所もピンポイントで特定することは、あくまでも通常の予測理論上ではほぼ不可能です』


『いや~ワタシは最近その考えが変わりつつあるんだよね、なんたって冴内君のやることだからさ、もう存在自体が奇跡の人、ミラクルヒューマン冴内君だから、なんか出来ちゃう気もするんだよね』


 何故英語で言い直す必要があるのか分からないが、パステルは根拠のない自信に満ちた様子でそう述べた。


「私も冴内様ならば何か理論上の発生確立を超越する力を持っているような気がします、機械の私がこんなことを言うのもおかしな話しですが」


 音声ガイドロボ2号機も大分人間らしい発言をするようになってきたが、それだけ頭部モジュールに搭載された演算装置とAIが高性能なのだろう。


「分かった、それでは私は出来るだけ出現範囲を特定出来るように努力することにしよう」

「私もお手伝いします!」(音)

『私もご協力いたします』(ジ)

『もちろんワタシも協力させてもらうよ!』(パ)


「ありがとう、よろしくお願いするね」


『いえとんでもないです、こちらこそ冴内様にお願いしている身なのですから』


「あっそうか、ははは、でもまぁよろしく頼むね」

『かしこまりました、微力ですがお手伝いします』


「さて、そうなると並列思考でかねてより考えていたこともそろそろ何とかしたいところだな」

「そうですね」(音)


「何を考えていたの?」


「うむ、出来ればこの宇宙と宇宙連合、宇宙連盟、そして冴内 洋の出身地の宇宙と双方向情報通信を可能にさせたいのだ」

「あと、冴内様以外の方も自由に往来できるゲートがあればいいですね」(音)


「えっ!それは・・・」


「ウム?どうした冴内 洋、何か思うところでもあるのかね?」

「あっ、いや~・・・誰でも往来可能なのはいいのかな~って・・・ホラ、パステルさんの宇宙は大分他の宇宙とは違うわけだから、色々と問題が起きないかなってちょっと心配なんだ」


 冴内の頭の中は、当然例の8っつの恥ずかしい冴内像や恥ずかしい挑発動画を他の人に見られてしまうことを心配しての発言であった。


「申し訳ありません冴内様、配慮が足りませんでした、まさにおっしゃる通りです。誰でも自由に往来可能にしてしまうと、環境不適合や危険な病原体など冴内様達以外の普通の生物や、宇宙環境に大きな悪影響が及ぶ危険性がありました、軽率な発言お詫び申し上げます」


「あっ、いやっ、そんな謝らないで、確かに僕がいないとジメンさんのところに行けないのは不都合があるとは思うんだ、せめて僕の家族だけでも往来で出来るようになれば、何かあったときに役立つのは間違いないよ」


 とりあえず冴内は身内だけならそれほど恥ずかしくはないので、限定条件付きで音声ガイドロボ2号機の提案を賛成した。


『通信出来るようになるのはいいね、ワタシは頑張れば冴内君と交信可能だけど、あれものすごく疲れるし難しいんだよね、しかもほとんど思ったことを伝えられなくなっちゃうんだ』


「なるほど、そうなんですね」

「フム・・・何かしらプロトコルのようなものが決定的に異なっているからなのだろう」

「プロトコルって通信プロトコルみたいなもの?」


「通信に限ったものではないが、そうだな・・・宇宙の法則といったようなものだろうか」

「でもこの宇宙にも重力はあるし、銀河の星々も僕等がいた宇宙と変わらないし、バルダさんの星には昆虫や魚とかもいたからそんなに大きな違いを感じないんだけど・・・」


「それが難しいところなのだ、冴内 洋の言う通り表面上をとりあげると、確かに他の宇宙とあまり変わりなく見えるのだが、それは我々がジメンで訓練してこの宇宙とシンクロ率が高くなったからなのだ。他の生物では恐らくこの宇宙を認識することすら出来ないだろう」

「へぇ~、そうなんだね・・・」


『う~ん・・・よしっ決めた!ワタシも修行する!ワタシの宇宙を守ってくれるために冴内君達が修行してくれているのに、ワタシが何もしないっていうのは情けないよね!ワタシも修行して冴内君達の宇宙を理解するように頑張ってみる!』


「えっと・・・具体的にどうやって修行するんですか?」

『う~んそうだね・・・もっと冴内君達の宇宙を理解するためのお勉強というか、色んな情報を得ることとかは効果があるかも』


「これまでは冴内様のご活躍に関する情報を提供してきましたが、これからはこちらの宇宙法則などを提供すれば良いでしょうか?」(音)


『そうだね!でもワタシそんなにお利口さんじゃないから、難しい数式とかは理解出来ないと思う、なんていったっけ?冴内君の故郷にあるえーと・・・ま・・・まん・・・そう、まんがとか動いて音が出るまんがだとワタシにも分かりやすくていいな』


 もちろん動いて音が出るまんがとはアニメのことである。


 冴内は頭の中でマンガ日本昔話やマンガ日本の歴史とかマンガ世界の偉人達などは思い浮かんだが、マンガ宇宙法則とかマンガ宇宙物理学とかマンガ量子力学とかはないだろうなぁと想像した。


 その時、ずっと大人同士の会話を横で聞いていて割とヒマを持て余していた子供達の中で美衣が発言した。


「面白いマンガあるぞ!アタイ達最近すごくハマってる!」

『わっ!それなに!?ワタシも読みたい!』

「うむ!是非パステルさんも読むといい!名作マンガだ!」


 美衣は冴内に依頼して瞬間移動してもらい、宇宙ポケットに「明後日のジョー」と「初めの一手」を入れて戻ってきた。


「持ってきた、これを読むといい、きっと修行の役に立つと思う!」


 そういって二作品の全巻セットを取りだすと、言った本人が読み始める始末だった。


『どれどれ・・・うーん、まずはこの文字というのから勉強しないとダメだなぁ・・・』

「にほんごのもじはひらがなとかたかなとかんじがあるからむずかちいでしゅ、ワタチもいっしょにべんきょうしゅるでしゅ」


「あしゃってのじょう・・・(中略)・・・わきをちめて、こぶちをまわちてえぐるようにうちゅべし!うちゅべし!うちゅべし!」

『うつべし!うつべし!うつべし!』


 果たしてこれで僕の故郷の宇宙について理解出来るんだろうかと、はなはだ疑問に思う冴内であったが、二人とも楽しそうなので水を差すのも悪い気がしたのでそのままにしておいた。


 ふと見てみると、良子も初も優も各自思い思いに好きなエピソードが描かれている巻を読み直していたので、冴内も適当な巻を手に取って読み始めたところ、止まらなくなって結局その日はほとんど探知機の設置をすることもなく夕方まで全員読書をするという緊張感の欠片もない有様だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ