423:探知機設置と美衣達の修行
一通り午前の作業を終えた冴内達はいったん昼食をとりにログハウスへと戻った。
さいごのひとロボ4号機と音声ガイドロボ2号機は不思議世界ジメンに残って、冴内達が回収してきた空間投影機の残骸や星の欠片などを解析するとのことだった。
解析し始めてすぐに判明したのが、片方の残骸は1兆度を超える灼熱のブレスで焼かれたことが判明したので確実に赤い者の仕業であること、そして初が持ってきた星の欠片の凍結具合からもう一方は青い者であることが確実になった。
脅威度判定は地球を基準にすればそれはもう地球壊滅の危機に該当する程の激震災害クラスではあるが、あくまでも冴内を基準とした相対的な脅威度判定とした場合、特に冴内を脅かす存在ではないだろうと推測した。
もちろん、まだ何かもっと恐ろしい力を隠している可能性もあるが、それでも冴内の敵ではないだろうと判定した。さいごのひとロボ4号機も音声ガイドロボ2号機も決して楽観視しての考えではなかったが、パステルにおいてはそうではなかったようで、冴内君こそ宇宙で一番だよと極めて楽観的で軽い感じでフィーリングでものを言っていた。
昼食後冴内達が戻ってくると、早速複合センサー搭載探知機の生産にとりかかった。まず最初に自動生産機械を完成させる必要があるのだが、機械を設置する場所を宇宙空間から今いる不思議世界ジメンに移動させることにした。
冴内が建造途中の自動生産機械のある宙域まで行き、範囲瞬間移動で機械をジメンに持ってきて、家族総出で建築作業を続行した。
優と美衣が大量に確保した建築資材になる隕石は美衣の宇宙ポケットに格納されているので、適宜取り出して加工して利用した。精密機械はさいしょのほしに移動してベルトコンベヤー式工作機械で製作してから持ち運んで組み立てた。
その際まだ見た目は二歳児の正子までもがベルトコンベヤーの端に資材を乗せる手伝いをして、さらに量産型花子達も動員して、まさにフル操業で建築した結果、夕方までに自動生産機械が完成した。
正子が記念すべき第一号の製作のために、自動機械に鉱石や貴金属やレアメタルが豊富に含まれた良質の隕石の破片(※ひと欠片重さ約数百キロ)を乗せると、やはりベルトコンベヤーのように資材が大きな工作機械本体に運ばれていき、10分程度で複合センサー搭載探知機が反対方向から出てきた。
さいごのひとロボ4号機がさいしょのほしから何体か汎用作業支援ロボ達を持ってきて欲しいと言ったので冴内はさいしょのほしに戻って汎用作業支援ロボ達を連れてきた。
以後は汎用作業支援ロボ達が資材を置いて、完成した複合センサー搭載探知機を整理する役割を担うことになった。
明日の朝までには50個以上は出来ているので、パステルが指示する宙域に探知機を設置していくという方針を説明し、今日の作業は終了した。
夕食をとりながら美衣と初は暗黒魔王に会うのが楽しみといった様子で、戦ってみたいとまで言いだし始める始末だった。
確かに美衣は以前大闘技大会で龍人族の名誉会長にして最強の伝説戦士グワァーオーゥゥと戦い一兆度のブレスにも耐えて勝利したので大丈夫だとは思うが、あの時は巨大なグワァーオーゥゥの腹の中に入って内部から攻撃出来たが、その戦術は暗黒魔王相手には使えないので真っ向勝負する必要がある。
冴内は果たして今の美衣がどれほどの実力があるのか良く分からないのと、暗黒魔王の強さも分からなかった。
さらに初についても十分強いのは分かるが、相手は分子すらをも活動停止させる絶対零度のブレスを吐く相手だ。これまで初は大型の肉食獣については無類の強さを誇ってきたが、果たして技を用いてくる相手に対してどこまで初は戦えるのだろうか。
冴内は少し考えると、美衣と初に本当に暗黒魔王と戦ってみたいか?と尋ねてみたところ、目をキラキラと輝かせて戦いたい!と即答したので、それを見た冴内はまた少し考えた後にこう言った。
「それなら修行してみるかい?」
美衣と初は立ち上がって万歳し、修行する!と力強く答えた。
その様子を見た良子も、お父さん私はブラック大魔王・・・じゃなかった、ブラックの暗黒魔王と戦ってみたい!だから私も修行させて下さい!と願い出た。
それを見た正子は、ワタチはみんなをおうえんするでしゅ!おてつだいするでしゅ!と言い、優と花子も同様に応援すると言ってくれたので、冴内は頷いて明日から美衣達の修行開始を宣言した。
美衣が父ちゃんの修行久しぶりだ!と言うと、初と良子がどんなことしたの?と聞いてきたので、父ちゃんの修行はスパルタだぞ!過酷だぞ!死ぬかもしれないぞ!と答えた。
冴内はすかさずいやいやいや、そんな実の子供にそんな酷いことはしないよと否定しようとする前に、初と良子はすごい!それやってみたい!と嬉しそうに美衣に答えていた。
そもそも冴内は否定したが、穏やかで優しい感じで即死級の猛特訓を強いていたのは事実である。
そうして明日からは探知機設置の合間に修行を開始するということになった。
冴内が探知機設置作業をしている間は冴内が指示したメニューをこなし、作業の合間にはアドバイスや直接手ほどきをすることを説明した。
美衣達はやる気満々で喜び、今夜は興奮して眠れないかもしれない!と言い合っていたが、風呂に入った後でベッドに横たわった瞬間秒で爆睡した。
翌朝食事をとり不思議世界ジメンに行くと、既に複合センサー搭載探知機が70機近く完成しており、冴内は優と二手に分かれて、パステルが指示した宙域に探知機を設置することにした。
設置作業にとりかかる前に冴内はジメンに美衣達の修行のためにトレーニング用の場所を提供して欲しいと頼んでみると、ジメンの方も暗黒魔王がやってきた時にも役立つので大いに賛同してくれた。
まずは相当な衝撃、具体的には超新星爆発にも耐えられるほどの100メートル四方の立方体空間を作り、そこで自在に暴れてみてくれとジメンは美衣達に言った。それで耐衝撃性能を計ってみるとのことだった。
とりあえず冴内は探知機の設置作業があるので、まずは各自ウォーミングアップと、模擬戦闘などをしてトレーニングしてと美衣達に言うと、美衣達は素直に嬉しそうに分かった!と返事した。
美衣達がジメンの用意したトレーニング室に入っていくのを確認した冴内は優と手分けして探知機の設置作業にとりかかった。
優の魔法によるワープは冴内のように距離がほぼ無制限とまではないが、探知機を設置するまでの距離ならば問題ないので、二人とも瞬間移動でどんどん設置していった。その間も自動生産機械と汎用作業ロボ達は休みなく複合センサー搭載探知機を生産し続けた。
冴内と優は今回も毎回ジメンに戻ってきては互いに確認して次の設置場所に向かって行った。
2時間程で今朝までに製作された70機分の設置が完了し、今も自動生産機械から探知機は生産され続けているがその数はまだ15機程度だったので、いったん休憩をかねて美衣達の様子を見ることにした。
美衣達が自主練している一辺が100メートル程の立方体のトレーニング空間を見ると、その空間だけが凄まじいパステルカラーの煙が充満していて中の様子が全く見えなくなっており、冴内はギョッとして近づいた。
時折ガキン!とかバキン!とか凄まじい衝突音が聞こえてきて、見るからにヤバそうなスパークなどが見えるので、とりあえず生きてるっぽいことは分かったが、果たして3人とも五体満足な状態なのか冴内は非常に心配で不安になった。
ジメンが大丈夫ですよ3人とも元気いっぱいにトレーニングしていますと言ってくれて、音声ガイドロボ2号機も3人とも非常に健康体のバイタル数値を維持しておりますと教えてくれたので冴内はひとまず安心して、トレーニング空間に入っていった。




