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419:挑発動画

 おとめ観光ホテル宴会会場では美衣の誕生日パーティーから冴内の暗黒魔王挑発動画緊急速報上演会へと移っていった。


 開始早々冴内はこの世から消えてなくなりたいと思う程強烈なインパクトがあったが、画面が変わりこれまで倒してきた敵とのバトルシーンになったところ、それまで笑いをこらえていたメンバーも真剣な表情に変わって画面を凝視した。


 フルCGで作られた超大作の娯楽映画でもこれほど凄まじいバトルシーンはないという程に、とんでもない映像のオンパレードで、本来ならば常人では目が追い付かず何も見えないところを、超々スローモーションで分かりやすいエフェクトを加えて編集されていた。


「なんつーか・・・改めてみるとマジで信じられないことやってるな・・・」(矢)

「ええ・・・とても現実とは思えません」(手)

「顔がいつもの冴内君っていうところに凄いギャップを感じるわね・・・」(良野)

「子供達は大丈夫かしら・・・怖がらなければいいけど・・・」(吉)


「洋ちゃんすっごく強いんだね!」

「あっ!仮面バイカーだ!洋ちゃん仮面バイカーよりも強いの!?」

「あっ!スーパーヒューマンだ!正義の味方のスーパーヒューマンだ!洋ちゃんがスーパーヒューマンと戦ってる!」


 そこで音声ガイドロボは気を利かして、本番ではカットするシーンを映し出した。


「あっ!洋ちゃん仮面バイカーと握手している!」

「スーパーヒューマンとも握手して仲良くしてるよ!」

「あっ!仮面バイカーから変身ベルトをもらった!いいなぁ!」

「スーパーヒューマンからはマントをもらってるよ!あっ空飛んだ!いいなぁ!」


『冴内 洋さんは、せいせいどうどうとふたりのせんしとたたかって、おたがいにたたえあって、なかよくなりました』


 うまい具合にテロップまで即席で付け足した。


 いい感じで冴内の様々な戦闘シーンが矢継ぎ早にテンポ良く畳み掛け、いよいよ問題のシーンが登場した。


 虹色の粒子が派手に噴出し、そこから再度トゲだらけの爬虫類コスチュームを着た冴内が登場し、右手のチョップを妙にかっこつけて構えて、カメラ目線でこう言った。


「暗黒魔王だか何だかしらねぇが、お前らザコなんかオレのワンチョップでこの世から消えてなくなるぜ、宇宙最強ってのはな、オレのためだけにある言葉なんだよ、くやしかったらかかってこい、ま、お前ら口先だけの弱虫がオレのところに戦いに来るとは思えないがな」


 冴内はとうとうたまらず瞬間移動でどこかに消え失せた。


「何だコレ!何だコレ!何だコレ!何だコレ!恥ずかしい!どうしようもなく恥ずかしい!いっそこのまま消えてしまいたい!」そうして実際に虹色粒子となって消えたのだが、粒子になっても残留思念は働き続け、恥ずかしさは消えなかった。


 宴会会場では、いよいよ辛抱たまらなくなった力堂、矢吹、手代木、良野が「ちょっと失礼!トイレ!」といって部屋から飛び出していき、玄関ホールを突っ切って外に出た途端腹を抱えて大爆笑した。


「ブワッハッハッハッハ!!冴内なんだありゃあ!アイツ最高だぜ!アッハッハッハッハ!」

「アッハッハッハ!冴内君!冴内君が!アッハッハッハ!」

「ワハハハハハ!最高ッ!最高だ!冴内君!ワハハハハハハ!」

「アハハハハ!ヒィーッ!ヒィーッ!冴内君最高!こんなに笑ったの生まれて初めて!アハハハハ!」


 残された宴会会場では、優と美衣達としろおとめ団達とミャアちゃんがただただ素晴らしい!のオンパレードで、子供達も良く分からないけど洋ちゃんあくのひーろーみたいでカッコイイ!と一応同意してくれて、両親と二人の姉と吉田と鈴森と道明寺は「なんか・・・色々頑張ってるんだなぁ」と極めて冷静な様子で感慨深く画面を見ていた。恐らく冴内がいたらさぞやいたたまれない気持ちになったことだろう。


 一人どことも知れない宇宙の片隅で虹色粒子になって漂っていた冴内であったが、優が冴内を感じてワープで迎えに来た。恐らく優が感じなければ誰にも冴内を見つけ出すことは出来なかったであろう。


「どうしたの洋、そんな綺麗な粒子になって」

『いや~こんなに恥ずかしい思いをしたの生まれて初めてだよ、もういっそこのままこの世から消えてしまいたいと思っちゃったよ』

「どうして!?すごく格好良かったわよ洋!私は大好きよ!」

『有難う優・・・僕も大好きだよ、優がいてくれて良かったよ』

「皆の所に帰ろう洋、美衣達が待ってるよ」

『そうだね、戻ろうか』


 虹色粒子が集まってきて冴内に戻り、優は冴内にキスしてニッコリ微笑み、冴内は少しはにかみながら宴会場へと戻った。


 宴会場は穏やかなムードになっており、正子と初と二人の姉の子供達はウトウトしていて、盛大なパーティーもそろそろお開きといった状態になっていた。


 日本では平日なので父達は明日も仕事があるし、姉の子供達も幼稚園や小学校があるし、おとめ観光ホテルにも明日の予約客があるので、夜9時を少し過ぎたあたりでパーティーは終了し、冴内は各自を送り届け、力堂達はゲートを使って帰っていった。


 さんざんひとしきり全開で大笑いして全てを出し切ってスッキリした矢吹は「良くやった、オレはお前を尊敬するぜ、間違いなく暗黒なんとかも挑発に乗ってくること間違いなしだ」と冴内の目を真っ直ぐ見て真顔でそう言って握手をした。


 こうして美衣の誕生日パーティーと突然上映された挑発動画上映会は終了した。


 家に戻った冴内は風呂に入るとどっと疲れが出てきて、とりわけ心労が溜まっていたようで、入浴後は何もかも忘れるかのようにすぐに爆睡した。


 翌朝、良子と花子からプレゼントしてもらったエプロンとミトンをしてご機嫌な美衣は初が採ってきてくれた豆と冴内がプレゼントしてくれたクッキングブックの中から選んだ豆料理を作った。


 冴内の悩みも吹き飛ぶほどに美味しい豆料理を味わい、朝から大いに元気が出るほど爽快な気分になった。やはり美味しい料理の持つ力は偉大である。


 朝食後はとりあえず千個分製作した空間投影機を持って、パステルカラー不思議世界のジメンへと瞬間移動した。


 ジメンに到着するとすぐにパステルも出現し、どうやらパステルも挑発動画を見たらしく、素晴らしい映像作品だったと大絶賛し興奮冷めやらぬ様子だった。


 冴内は挑発動画の事はなるべく何も感じないように心の中から消去して、それでは早速仕事をしましょうと淡々とした口調で応答した。


 だいぶそっけない対応だけど、まだ自分の演技が気に入らないのだろうか、さすが冴内君、完璧主義なんだね、と全く的外れ見当はずれなことを考えたパステルであったが、宇宙存亡の危機なので、すぐに頷いて空間に宇宙銀河マップを投影した。


「これは宇宙銀河マップか!実に見事なものだ!」(最後)

『まぁね、宇宙そのもののワタシが作るんだから、そうそうお粗末なものは出せないよ』

「すごくキレイだ!」(初)

「おほししゃまとってもきれいでしゅ!」


『ありがとう、とりあえずこの中から大きくて強く光り輝く銀河から設置していこうと思うんだ、設置した銀河はこの地図に表示されないようにしようと思うけど、どうかな?』

「はい、それでいいと思います」


『それじゃ早速始めようか、まずは一番強く光り輝くここから始めよう!』


 パステルはその銀河に指をさし、冴内がパステルの手を握って目をつむり場所を特定すると「うん、分かりました、それじゃ行きます」と言ったので、全員冴内の近くに集まって瞬間移動した。


 毎度のことながら全員先程まで家のリビングにいたままの恰好で、誰一人宇宙服も着ていない普段着の状態で宇宙空間に漂い、眼下には眩いばかりのとても美しい見事な渦巻き銀河が広がっていた。


「わぁー!すごくキレイだ!」(初)

「ホントね!」(優)

『ありがとう、ワタシの宇宙もなかなかのものでしょう?』

「ウム、実に見事なものだ。これ程までに見事な宇宙銀河、これは是非とも救わねばならないな、冴内 洋」

「うん、そうだね」


 こうして冴内はこの宇宙崩壊の危機を救うため、冴内が消えてなくなりたい程に恥ずかしい思いをして撮影した挑発動画を銀河中に轟かせることにしたのであった。

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