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411:挑発演技指導

 久しぶりに試練の門の音声ガイドに事情を説明した冴内は力堂達を連れていったん奈良ゲート研修センターへと戻りこれまでのいきさつを話した。


「事情は分かったけどよ、それでなんでオレが演技指導役なんだよ」

「いや・・・その・・・矢吹さんなら相手を挑発するセリフを言うのが得意なんじゃないかなって」

「なんでだよ!冴内テメェこのやろっ!」

「すっ、すいません!」


「まぁまぁ矢吹さん」(手)

「そうよ、やってあげなさいよ。冴内君の言う通りアンタそういうの得意そうじゃない」(良)

「そうだよアンタ、アリンコ退治の時みたいに啖呵きればいいじゃないの」(吉)


「いや、あん時オレ死んじまったから良く覚えてねぇんだよな、何言ってたっけ?」


「「「 ・・・ 」」」


「ま、まぁアレだ、ともかく冴内君が頼ってきたんだから期待に応えてあげようじゃないか」(力)


「・・・しょうがねぇな、確かに大将の言う通り、頼られたからには応えないわけにゃいかねぇな、分かったよ冴内、オレで良ければ協力するぜ」


「ありがとうございます!矢吹さん!」

「で、なんつったっけ?あんこくなんたらって奴らを挑発すればいいんだよな」

「そうです、これが台本なんですが、必ずこの通りに言わなくてもよくてアドリブもオーケーだそうです」


「どれ見せてみな、なになに・・・わっはっは、オレは強いぞ、お前らのような弱虫小虫など、オレのチョップであっという間に真っ二つだ、わっはっは、くやしかったらかかってこい、オレは不思議世界のジメンにいるぞ、座標は613の・・・ってダメだなコリャ、まるでダメだ」


「えっ!?ダメですかコレ?」

「ダメダメのダメに決まってんだろこんなの、こんなの今時の小学生相手でも挑発にならねぇぞ」

「でも暗黒魔王はどうやらあまりその、頭は良くないみたいで、これくらい分かりやすい方が効果があるらしいんですが・・・」


「何ッそうなのか?・・・いや、でもだな、それにしてもこれじゃあまり相手は頭にこないんじゃないかとオレは思うぜ、しかも何だこの最後の座標は、日本で例えるなら、オレは埼玉県〇〇市××町1丁目1番地に住んでますって言っているようなもんだぞ、せっかくの挑発が最後にだたの住所案内になってるじゃねぇか」


「出来ればこちらにおびき寄せたいのでこちらの所在を明らかにしたのですが、何か良い案はないでしょうか?」

「そうだなぁ・・・そのあんこくなんたらが頭はあまり良くないっつーなら、宇宙に大きな矢印とか目印看板みたいなのを作ってこっちにいるぞって、示せばいいんじゃねぇか?相手を挑発してバカにする絵とかだとなおいいかもな」

「なるほど!それはいいですね!」


 なんやかんやいっても矢吹は後輩思いの良い奴で、結局真剣に冴内の為に一緒に考えてくれた。冴内は家に連絡して今日は矢吹と一緒に演技の特訓をするのでこっちに泊っていくと言い、久しぶりに男同士一緒に食堂で飯を食い、風呂に入って背中を流し合い、夜遅くまで挑発用の決めゼリフを考え演技指導を行った。ちなみに夜遅くと言っても二人とも普段相当な早寝早起きなので、夜の10時前には意識を失うかのようにグッスリと寝たのであった。


 翌日、昼近くまで矢吹から挑発演技の特訓を受けた冴内は一応の合格点をもらって、さいしょのほしのログハウスへと戻った。


 家に着くと優がデザインした冴内の挑発動画用コスチュームが出来上がっており、早速試着してくれと頼まれたので言われるがままに冴内はあちこち尖っている部分に気を付けながら着てみた。


 その見た目は何かの冗談かというくらい極めてデタラメなもので、冴えない普通の青年が全身トゲだらけの爬虫類のようなフォルムの全く実用性が見いだせない派手な衣装を身に着けていた。


 赤とか黒とか金とか、禍々しい色でハッタリを効かせるなら理解出来るが、ショッキングピンクやパープルといった意味不明なケバケバしいカラーリングで渦巻き模様が描かれており、恐ろしいというよりはここまでくるとある意味ジョークだった。


 どうやらヘルメットも用意されているらしく、二本の大きなツノがついており、西洋のヘルメットというよりは日本の兜のようで、後頭部は首も保護するように末広がりでスカート形状になっていた。


 フェイスガードがあれば少しは強そうに見えたかもしれないが、顔まで隠すともはや冴内と認識することは不可能であるのと、優がカッコイイイケメンの洋の顔を隠すのは絶対的に有り得ない、あってはならないことだと強く主張したので、そのままの冴えない普通の青年の顔だけが悪い意味で強調される形になった。優にとっては良い意味での強調だったが。


 恐らく地球においては、国籍人種問わずハリウッド娯楽映画並みに誰もが分かりやすいジョークというかギャグとして認識されて、一目で大爆笑を誘うかのような姿だったが、冴内家にとっては全くそのようには映っておらず、家族全員から大絶賛された。


「きゃあ!最高にステキよ!洋!大好き!」

「父ちゃん凄くカッコイイぞ!母ちゃんがいなかったらアタイが結婚したいくらいだ!」

「お父ちゃんカッコイイ!お父ちゃんこそが最強の暗黒魔王だ!」

「お父さん凄くカッコイイ!暗黒魔王よりも断然魔王みたい!本物のワルって感じがする!」

「おとうたんこしょがほんもののあんこくまおうでしゅ!だんぜんかっこいいでしゅ!」

「洋様お似合いです!皆さんの言う通り洋お父様こそが宇宙一の暗黒魔王です!」


 愛する家族から大分持ち上げられた冴内はその気になり、浮かれ上がったついでに昨日矢吹から指導を受けた挑発演技を行ったところ、拍手喝采の嵐で「さすが父ちゃん!やるときはやる男だと思っていたぜ!」と何故いつもこういう時だけ口調が変わるのかとツッコミを入れたくなる美衣からも大絶賛された。


 早速その調子で映像を撮りましょうということになり、全員でパステル不思議世界ジメンへと瞬間移動した。


 冴内の出で立ちを見たパステルは大爆笑することもなく、それどころかやはり大絶賛だった。


「冴内君最高にカッコイイ!優さんと結婚していなかったらワタシが結婚したいくらいだよ!」


 果たして宇宙そのものと結婚とか出来るものなのか甚だ疑わしいが、言わんとすることは伝わった。


 ジメンが上手い具合に光を調整してくれるので、撮影のライティングは必要なく、スポットライトもレフ版も用意することなく、漆黒の闇のゲートの時に活躍した空中浮揚ドローンを用いて冴内の挑発映像の撮影を開始した。


 短時間ではあるが挑発演技指導の甲斐があったようで、リテイクなしで冴内はセリフを噛むこともなく一発で本番撮影を終えた。


 撮影を終えた後はやはり一同から賞賛の嵐で、これなら間違いなく暗黒魔王達も激オコでこちらにやってくること間違いなしだと太鼓判を押した。


 早速音声ガイドロボ2号機はいつもより妙にはりきってる感じで動画の作成にとりかかった。どうも音声ガイドロボ2号機にも徐々に人間味らしいところが現れるようになってきていた。


 海割りチョップに試練の門の洞窟手前の毒沼にいた両手が剣の敵に洞窟内にいた2体の敵、さらに大闘技大会での仮面バイカーやスーパーヒューマンとの真っ向勝負など、苦戦したカエルチャンピオンやブラック冴内との激闘など一部カットされたものもあるが、ほぼ冴内の圧勝の戦闘シーンのみが実に良いアングルで見事に決まっているものがテンポ良く編集されていった。


 冴内が大闘技大会はともかく、試練の門や英国で海を割った時の映像などどこから入手したのかと聞いたところ、試練の門については試練の門の音声ガイドから敵モンスターの画像をもらって、その時の目撃証言を元に造り出した合成画像だとのことだった。英国の海割りチョップも一部陸から撮影されたその時の動画も使ったが、同じく目撃証言を元に作成した合成画像だとのことだった。


 そしてそれらの合成画像による動画だけ、全て最後は斜に構えて妙に決まっている冴内の顔のアップで終わっていた。


 冴内はかなり恥ずかしい気持ちで顔をしかめてスクリーンから顔を反らしたが、優を筆頭に家族達は顔を赤く染めて手を強く握りしめて鼻息も荒くスクリーンを食い入るように見ていた。


 もちろん視聴後は拍手喝采の嵐であった。

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