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404:冴内 正子(さえない まさこ)爆誕

 不思議世界のジメンは冴内に次の目的目標について語ろうとしていたのだが、全くそれどころじゃなくなってしまったので、冴内達には一度引き返してもらって、暗黒四天王の一人だった者の繭が孵ってひと段落してからまたお越しくださいと言い、冴内達も同意していったん家に引き返した。


 パステルカラーの虹色に包まれた繭を優しく大事に抱きかかえてログハウスに引き返してきた冴内はリビングの窓から暖かな日の光が差し込むソファに繭を置いた。


 繭のサイズは元の少女の状態よりも小さくなっており、少し大き目のクッションのようだった。


「思えば最初に名前を付けたのはアリオンで、次にりゅう君、優、美衣、良子、クリスタルさん、カラスのヨウカ、花子、しろおとめ団の皆、初、ぎんちゃん・・・は、美衣がつけたのか、ともかく色んな名前を付けてきたけど、繭になっちゃったのは初めてだ。大きさも小さくなっちゃったし、これは本当に生まれ変わっちゃうのかもしれない」


「生まれ変わったら優しい良い子になってくれるといいなぁ」(初)

「うむ、アタイずる賢いのは苦手だ。優しい子になぁれ良い子になぁれ」

「あっ、それいいね。優しい子になぁれ良い子になぁれ」


「「「 優しい子になぁれ良い子になぁれ 」」」


 家族全員で優しく繭を撫でながら優しい子になぁれ良い子になぁれと復唱していたところ、途中からさいしょの民達もやってきて、優しい子になぁれ良い子になぁれと唱え続けた。


 さらにさいしょの村の集会場では多くのさいしょの民達が集まって優しい子になぁれ良い子になぁれと唱えながらそれぞれ踊りをおどっていた。まるで雨乞いか何かの祈祷のようだったが、呪詛ではないので悪い事ではないだろう。


 その様子はさいごのひとロボ4号機と音声ガイドロボ2号機によっていつも通り全ての関係各所へと報告されており、その中には当然冴内の実家の両親も含まれていた。


 ちなみに冴内の実家にも高性能な情報端末が置かれており、各機関へいち早く送信される情報と同じものを見ることが出来るようになっている。


「これは大変!お父さんに知らせなきゃ!」冴内の母親は定年まではまだ数年ある冴内の父親にスマホで状況を知らせた。


 余談ではあるが、冴内からの仕送りにより両親の銀行口座には天文学的な数字の金額が振り込まれているが、あまりにも途方もなさ過ぎる金額に思考停止になっており、二人ともそんなものはないものだとして日々普通に暮らしていた。もしかしたら初代冴内 一之進から続く冴内一族の血筋によるものかもしれなかった。


 まだまだ職場の第一線で現役バリバリの冴内の父親は長年付き合いのある取引先企業との打ち合わせの途中だったが、スマホの映像を見ると何だかエライことになっており、当然取引先のお客さんも冴内のことについては十分熟知しているので、すぐに戻った方が良いと言ってくれた。一緒に同行した会社の後輩が後を引き継ぐということで、冴内の父親はその場の全員にお礼を言って家に戻ることにした。


 ちなみに冴内の父親は中堅の商社企業に勤めており、これまでは大手商社に買収提案される程に冴えない会社ではあったが、今現在の取り扱い商材については冴内の活躍によって得られたゲート世界のアイテムに加え、今や別の宇宙の貴重なアイテムを取り扱うようになったので、売り上げは急上昇し株価も急激に上昇していた。


 そうなると今度は外資系ファンドからの買収不安があるが、英国ゲート機関を筆頭に、恐らく神代とさらにその裏で現在大躍進中の妻の(まこと)が最大限の便宜を図っていたのであった。


 冴内の父親はすぐに家に戻ると、自宅のリビングにある大きなテレビに高性能情報端末が繋がれており、大画面で冴内の新たな娘が間もなく誕生するらしい様子が鮮明に映し出されていた。


 ほぼ同タイミングで姉二人も子供を連れてやってきて、家族全員で大画面に釘付けになった。


「洋ちゃんのおうち赤ちゃん生まれるの?」

「そうよ、あの虹色の繭から生まれるみたい」

「ボク達もあんな風に生まれてきたの?」

「ウフフ、違うわよ。みんなはママのお腹の中から生まれてきたのよ」

「そっかぁ!」

「「「 アハハハ! 」」」


 冴内の姉二人の子供達もさいしょの民達の事は良く知っており大好きだった。


 さいしょの民達についてはゲート機関だけでなく各放送局やネット配信のインフルエンサーなどが様々な情報映像等を配信しているし、商魂たくましい色んなメーカーからも様々なグッズがちゃっかり発売されているので今や日本中でも大人気である。


 ソファに横たえられているパステルカラーの虹色の繭に向かって冴内家族やさいしょの民達が「優しい子になぁれ良い子になぁれ」と言っており、映像が切り替わって可愛らしいさいしょの民達も同じく「優しい子になぁれ良い子になぁれ」とこちらはほぼ歌になって踊っていた様子が映し出されていたので、冴内の両親と姉二人の子供達も一緒になって大画面に向かって「優しい子になぁれ良い子になぁれ」と言い続けた。


 繭はなんだか嬉しそうに膨らんだりしぼんだりしているように見えて、少しずつほのかに薄いピンク色に変わっていった。

 さらに繭の形から徐々にヒトの形へと形状を変化させていった。

 少しづつ細部のディティールが形作られていき、髪の毛も確認出来た。


 いよいよ最終段階に入っているのが誰の目にも明らかになってきたところで、さいしょの民が冴内にこれを着せてあげてと言って無地の白いシンプルなワンピースを手渡してきた。


 冴内は大喜びでワンピースを受け取り、頭から被せて着せてあげた。ちなみにサイズは初と同じ位の背丈で作られており、もしも人の形をした繭が大きくなって元の少女状態だった頃にまでなってしまったら小さ過ぎて破れるかも知れなかったが、恐らくこれ以上は大きくならないだろうとその場にいる一同はなんとなく確信していた。


 ワンピースを着せ終えたところで繭は激しく光り輝き、リビングが一瞬真っ白になった。


 やがて光がおさまり皆の目が慣れてくると上半身を起こした幼女がニッコリとした笑顔で微笑んでいた。


 その容姿はまさに「天使」の一言に尽きると言う程にとても愛らしく愛おしい凄まじいまでの可愛さだった。


「えっと・・・僕のことが分かるかい?」


 幼女はコクンと頷いた。


「君の名前は冴内(さえない) 正子(まさこ)、今日から僕の家族だよ。正子は一番年下の皆の妹になったんだよ。今から皆を紹介するね」


「アタイは冴内 美衣!英雄勇者でコックだよ!料理を作るのが上手って意味だよ!これからいっぱい美味しい物を作って食べさせてあげる!」

「私は冴内 良子!これから色んな事を教えてあげるね!」

「ボクは冴内 初!正子ちゃんこれらからはボクと一緒に色んなことして遊ぼう!」

「私は冴内 優!愛する冴内 洋の妻で、あなたのお母さんよ!よろしくね!正子!」

「私は冴内 花子です!皆さんの色んなお世話をしております!これから正子さんのお世話も沢山したいです!」


「ワタチはしゃえない ましゃこ!あんこくちてんのうはやめまちた!きょうからみなしゃんのかぞくになるますた!なかよくちてくだしゃい!」


「「「 わぁーーーッ!! 」」」


 リビングは大喜びの笑顔に包まれた。


 埼玉の冴内の実家は両親が涙と鼻水で顔がグシャグシャになり、ティッシュペーパーではなくタオルじゃないとダメだと孫が気を利かせて持ってくる始末だった。


 力堂パーティーも今日は試練の門どころじゃないという良野と吉田に加え木下の3人が奈良ゲート研修センター大会議室にある8K高画質大画面モニタに映し出された正子を見て破顔して、身体の半分がドロドロに溶けてスライムのようになっていたと書いてしまう程メロメロになっていた。


 正子は毛髪が淡いピンク色で瞳は淡いブルーであり、初は見た目が3歳児くらいだが正子はそれよりも少し下の2歳児くらいの見た目だった。色白でまつ毛が長くパッチリした目で髪の毛は背中にかかるかかからないかくらいの長さだった。


 とにかくあまりの可愛さにその場の全員の目じりはだだ下がりで、誰もかれもが正子が愛おしくてたまらないといった表情で、さいごのひとロボ4号機は実はこれは抗う術のない恐ろしい攻撃なのではないだろうかとすら危惧する程だった。

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