402:一人目登場
良子は惑星バルダクチュンとジメンの不思議世界をゲートでつないでやってきた。
「あっ良子、ゲートを作れるようになったんだね」
「うん、これまでと同じで一度行ったところは繋ぐことが出来ると思う。どこかまた別の場所でやってみてそこでも出来るようだったらこの宇宙でもこれまでと同じようにどこでも出来ると思う」
「優も魔法が使えるようになったんだね」
「うん、洋のことを強く感じたら出来たわ!」
『皆さんおめでとうございます!先ほど冴内様にも申し上げたのですが、もう本当に信じられないくらい凄い早さで修行を終えてきたのですね!』
「うむ!アタイはかなり本調子に戻って来た!」
「ボクも!」
『さすがです美衣様初様、さて、ではいったん皆さんご自宅に戻られて一休みしてきて下さい。お昼ご飯を食べられた後でまた、こちらに戻ってきていただけますか?』
「そうですね、分かりました。それじゃ僕達はいったん家に帰ります」
そうして冴内は全木製ゲートの取っ手に手をかけかけたが、手を離してその場に佇んで目を閉じた。
「うん?どうした父ちゃん帰らないのか?」
「あっ、もしかして・・・」(優)
「初の星・・・さいしょのほし・・・さいしょの民達がいる星・・・僕達の家・・・」
「みんな、洋に触って!」
冴内の身体が徐々に薄く透明になっていくのを見た優が全員にそう言って、全員冴内の身体に触れると徐々に全員の身体も透明になっていった。
『ああ冴内様、あなたは一体なんという方なんでしょうか・・・』
冴内達は全員その場から消えて、次の瞬間冴内ログハウスの玄関前に出現した。
すぐに近くにいた量産型花子No7がかけつけて、無事の帰還をねぎらい、瞬時に惑星グドゥルにいるNo4~No6も含めた全ナンバーズに情報共有した。
ドアを開けて中に入ると、他の量産型花子と一緒に楽しそうにお裁縫をしていたさいしょの民が数人いて、冴内を見つけるとすぐに駆け寄ってきて足に抱き着いて無事の帰還を喜んだ。
キッチンの奥からも量産型花子から料理を教わっていたさいしょの民達が取れたてのハチミツとミルクと卵を使って作ったパンケーキを持ってきた。
冴内達はリビングのソファをずらしてダイニングテーブルを延長して皆でお茶とパンケーキを楽しむことにした。
さいごのひとロボ4号機と音声ガイドロボ2号機はこれまで2日間に渡る活動記録を整理し、宇宙連合、宇宙連盟、地球のゲート機関に同時配信した。
残念ながら冴内単独行動の情報だけは映像データがないので、後で冴内からヒアリングを行って文字情報として配信すると付け加えた。
その後昼になったので軽い食事ということで、美衣が手打ちのそばを作りざるそばにして食べた。軽く食べるつもりだったのだが、あまりにも美味しくて結局たらふく食べてしまった。
食休みをとった後冴内は家族を引き連れて瞬間移動でジメンの元へと戻った。
ジメンの元に戻ると見慣れぬ一人の少女が立っており、何やらジメンとあれこれ話しているようだった。
「やっ!誰かおる!アタイは冴内 美衣!冴内 洋の娘で英雄勇者で冴え渡る炎の料理人だよ!あなたは誰ですか!?」
「あぁん?・・・ってうわっ!ととと、こっ、これはこれは冴内 美衣様!わたくしめは美衣様などに比べれば取るに足らない、それはもう実にチンケなヤツで、名のるのもおこがましいようなヤツです」
「???良く分からんがあなたの名前はちんけって言うのか?」
「いや・・・そうではないですのすが、美衣様がわたくしめをそうお呼びしたいのであれば、それで構いません」
「いやいやこんな可愛いらしい女の子をチンケ呼ばわりするのはいくらなんでも酷いって」
「うわっ!さっ!冴内 洋!!・・・っと、様!」
「こんにちは、そうです僕が冴内 洋です。えっと、あなたはどちら様ですか?僕を知っているようですが、ジメンさんとお知り合いの方ですか?」
「えぇと・・・あのぅ・・・そのぅ・・・わたくしめは、そのぅ・・・」
『冴内様、ここにいるのは暗黒四天王の一人です。宇宙からは主に知恵を借りている実にずるがしこくて狡猾な者です、以前冴内様のご自宅に奇妙なゲートを作って冴内様の弱点を探ろうとしていたのもこの者の仕業です』
「「「 なんだってぇーーーッ!? 」」」
「てめっ!何勝手にバラしやがる!この野郎ッ!」
「・・・なんだか、しろとおとめ・けいこお姉ちゃんみたいだ」(美)
「・・・うん、あとグドゥルお姉ちゃんのところにいる人達にも似てるかも」(初)
ジメンから正体をバラされた可愛い少女の姿をした者は、この宇宙崩壊の危機を招いた張本人である暗黒四天王のうちの一人だった。
その容姿は確かにどことなくしろおとめ・恵子のようでもあり、美衣や良子のようでもあり、美少女のパーツを寄せ集めていい感じにまとめて仕上げた画像生成AIで作られたような美少女だった。
そしてその少女は冴内達の前にフライング土下座してジメンの地面に頭をこすりつけた。
「すっ!すいやせん!冴内様!この下郎めをどうかお許しください!わたくしめが全て間違っておりました!これまでわたくしめは天上天下唯我独尊、己を超えるような者などこの世になんぴとたりともいないだろうと思い込んで、やりたい放題悪行の限りを尽くしてまいりました。しかし宇宙は広い、わたくしめなどまるで足元にも及ばない遥か上を行く存在があることを思い知らされました!これからは優様を見習って改心し、これまでのことを深く反省して、過ちを償い、心穏やかに真っ当に生きようと思いますので、どうか!どうか、ご寛恕いただきますよう切にお願い申し上げます!」
とても可愛らしい姿の少女とは思えないセリフが長々と続き、ひたすら平身低頭して冴内に許しを懇願していた。
『騙されてはいけません冴内様、この者は悪知恵が働く実にズル賢い狡猾な曲者です、こうしてペコペコ頭を下げておりますが、面従腹背、心の中では舌を出して何やら企んでいるかもしれませんよ』
「グッ!グヌヌ・・・きっ貴様・・・冴内様!わたくしめは誠心誠意誓って誠を申しております!どうか信じて下さい!」
「う~ん・・・いきなり会ったばかりで君のことは何も知らないから正直どうしたら良いか、どうするべきなのか僕には今すぐには判断出来ないなぁ」
「名前を付けたらどうだ?父ちゃん、そしたら生まれ変わって良い子になるかも知れないぞ」
「えっ!名前!?う~ん・・・最近僕は思うんだけど、そう簡単においそれと誰彼構わず名前を付けるのは良くないなって反省することが多いんだよね」
「どうしてだ?アタイは良いことだと思うぞ」
「ボクもいいと思う!」
「私も凄く良いことだ思う!」
「私もよ!洋が付けれくれた名前はとても大切で最高の宝物よ!」
「いやハハハ、なんか照れるけど有難う。でもなんていうのかな、皆には名前を付けるに足るちゃんとした理由があったから付けたわけだけど、軽い気持ちで付けたら名前を付けられた方にとっては大迷惑になるかもしれないかなって思ったんだ」
「アタイは迷惑してないぞ!大感謝だ!」
「ボクも!」
「私も!」
「もちろん私もよ!」
「洋様!私もです!」
「有難う皆、皆がそう思ってくれるのは僕にとっても凄く嬉しい事だよ。でも全ての人や動物がそんな風に思ってくれるとは限らないからさ、むやみに名前を付けるのは控えるようにしなきゃいけないなって思ったんだよね」
そんな風に冴内はこれまでの軽率な行動を彼なりに反省して、今後は控えるように宣言したのだが、残念ながらそれが実行されることは未来永劫訪れることはなかった。