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393:綱引き大会

 栄養満点できっと美味しいであろうウナギを確保するため、美衣が立案した作戦行動計画に従い早速高高度二段階射出急降下爆撃作戦を開始した。まぁ実際に爆撃を行うわけではないが・・・


 まずは美衣が初を抱え、さらに背中にジェットパックを装備したオリジナル花子が美衣を抱き抱え、ウナギの寝床の上空へと飛行を開始した。


 毎度お馴染みの仮のサイズ表記になるが、花子の背丈を平均的な十代女性の身長と仮定し、その背丈を基準に相対的に表わした高度およそ3千メートル上空に達したところでオリジナル花子は垂直降下を開始した。


 最大限に速度がのった状態で花子は第一段階の美衣を射出し、初はクロスチョップの構えをとり、着水というより水面に大激突すると同時に美衣が初を思いっきり押し出して第二段階射出を実行した。


 初はスミング・クロス・チョップ、いや、ダイビング・クロス・チョップの体勢のままウナギの脳天を貫通して下あごを突き抜け、あまりの勢いにより川底にめり込んでしまった。ウナギはビックリする間もなく即死した。


 少しだけ足をジタバタさせた初はすぐに川底から抜け出して、ウナギの頭を2回転程回って超強力軽量カーボンナノチューブ製ロープを巻き付けて、ロープを2回程クイクイと引っ張った。


 冴内達は全員で綱引きの要領でロープを引いた。オリジナル花子の掛け声と声援でリズミカルにタイミングよく全員で呼吸を合わせて引いて行った。


 先日の大魚を陸揚げした時と違って川の流れがほぼない入り江になっているような場所だったのと、なだらかな浅瀬の砂利の岸辺ではなかったのでまさに自分達の力で引き上げなければならなかったが、冴内達は大分パワーアップしていたようで、巨大ウナギをなんとか全員の力を合わせて陸揚げすることに成功した。


 巨大ウナギは大魚よりもおよそ2倍程度全長が長かったが、太さは大魚の半分もなかった。


 早速美衣が達人の技で巨大ウナギを綺麗に華麗に三枚におろした。その間冴内達は薪になりそうな木の枝を拾ったり乾いた老木を伐採した。


 そこらにある大きな岩でかまどを作り、用意した薪に火をつけて、おろしたウナギを蒲焼にした。炭火で焼ければ良かったがさすがに炭まではいくら美衣でも宇宙ポケットの中に常備してはいないので、せめて良い香りのする木の直火で焼いた。


 冴内と初が大きな何かの葉っぱで風を送り、美衣と良子と優が何度も美衣秘伝のタレをつけては表裏をまんべんなく火であぶり続けた。


 ロボット3人組も慣れたもので、さいごのひとロボ4号機はご飯を炊き、花子はウナギのキモを使ったお吸い物を作り、音声ガイドロボ2号機は袋にいれた野菜を塩もみして漬け物を作っていた。実にアンバランスでシュールな光景だった。


 大きな葉っぱをあおいで風を送り続けている冴内と初のお腹はグゥグゥ鳴りっぱなしだったが、つらい待ち時間もやがて終了し、お待ちかねの至福の時間がやってきた。


 おかわり分の蒲焼を焼き続ける担当としてロボット3人組と交代し、冴内達はウナ丼を食べた。それはもうガツガツとまるで何日も飲まず食わずだったかのような食べっぷりで、最初の一杯目は誰一人として何もしゃべらず黙々と食べた。


 二杯目を食べ終わってようやく「うんめぇー!」と言う余裕が出るほどに、そのウナギは美味しかった。エビやカニの時もそうだが、本来淡水に生息する魚介類は泥抜きなどをしないと独特の臭みのようなものがあるのだが、ここの川で獲れたものは泥抜きなどをしなくても大変に美味であった。


 かなり大きかった巨大ウナギも冴内達の胃袋の前にはあっけなく跡形もなくなってしまった。

 ちなみに頭や骨や内臓やヒレはロボット3人組が体内に吸収した。味はともかく案外ロボット3人組達の方が栄養を吸収しているのかもしれなかった。


「この川にいるのはどれも全部すごく美味しい!きっとヌシも相当美味いに違いない!」(美)

「そうだね、フルーツの時も美味しくてビックリしたけど、魚もエビもカニも驚くほど美味しいね」

「ボクなんだか力がわいてくる感じがする!」

「私も!ここの食べ物は食べると凄くパワーアップするのが分かる!」


 そんな話をしていると、空から巨大飛行物体が二つ飛んできた。


 一つはぎんちゃんだが、もう一つはカブトンのカブキチだった。ブーンという羽音が恐ろしい程大きく、ずんぐりした形の大型輸送機が飛んでいるかのような迫力があった。


「やっ!あれはカブキチだ!ぎんちゃんがカブキチを連れて来てくれたんだ!」

「こんにちは!カブキチさん!」

「ヤァ、コンニチハ、ギンチャンニキイテ キミタチノシュギョウヲ テツダイニキタヨ」

「ありがとうカブキチさん! ボク達もカブキチさんみたいに力持ちになりたいんだ!」

「ワカッタ、キョウリョクシヨウ」

「「「 ありがとう!! 」」」


 さいごのひとロボ4号機は超強力軽量カーボンナノチューブ製ロープのカラビナをカブキチの頭にある丁度良い具合のトゲの部分に引っ掛けた。


 カブキチは前進する方が力があるので、美衣達に背を向ける形で綱引きを開始した。ちなみに冴内は別行動でヌシと対峙するための修行を開始した。


「さぁ皆さん頑張って!オーエス!オーエス!」(花)

「「「オーエス!オーエス!」」」


「オッ!キミタチ ケッコウ チカラヅヨイナ!」


「オーエス!オーエス!」(花&音ロボ&ぎん)

「「「オーエス!オーエス!」」」

「グッ!グググッ!?スゴイチカラダ!」


「オーエス!オーエス!」(花&音ロボ&ぎん)

「「「オーエス!オーエス!」」」

ズズズズ・・・

「フンヌゥッ!ナントォ!グゥゥゥ!」


「はいっ!そこまで!」(花)

「「「 やったぁ! 」」」

「ナント!?オイラガマケタ?コノオチビサンタチニ!?」


ブーーーン!!


「ハッハッハッハッハッ!ナンダ!ダラシナイゾ カブキチ!」

「やっ!あれはカブタだ!カブキチの友達のカブタだ!」

「オウ!カブタカ!コレハ ハズカシイトコロヲ ミラレテシマッタナ!」

「ナンダカ オモシロソウナコトヲ シテイルナ!オレモイレテクレ!」

「やった!カブタさんも手伝ってくれるぞ!」


「それでは第二回戦!カブタさん対冴内様ファミリーを開始します!位置について!ヨーイ・・・初めっ!」


「オーエス!オーエス!」(花&音ロボ&ぎん)

「「「オーエス!オーエス!」」」


「グッ!?グウウウウ!?」

「ホラ!カブタ!ケッパレ!」

「ウオッ!?ウオオオオオ!!」


「オーエス!オーエス!」(花&音ロボ&ぎん)

「「「オーエス!オーエス!」」」

ズズズズ・・・

「グオオオ!コッ!コナクソォーーーッ!」

ズズズズ・・・


「はいっ!そこまで!」(花)

「「「 やったぁ! 」」」


「ナッ!ナンダト!?コノオレガ コンナオチビサンタチニ チカラクラベデ マケタトイウノカ!?」


「皆さん信じられません!一体お昼の間に何があったと言うのですか!?」(ぎん)

「アタイ達はウナギを食べてパワーアップしたのだ!」

「美味しいうなぎのかばやきを食べたんだよ!」

「ウ・・・ウナギ?ですか?」

「そう!黒くてニョロニョロした長いの!」

「あっ、アレですか!アレもヌシ程ではないですがこの辺では強いですよ!それを皆さんはお食べになったんですね!スゴイです!さすがヌシに挑むだけのことはあります!」


「オイ、ギンチャントヤラ、イマ ヌシ トイッタカ?」(カブタ)

「はい、冴内様達はここにいるヌシと戦うために鍛えているのです」

「コンナニチイサイノニ ヌシト タタカウダト?」

「そうです、しかも皆様の最終目的は、遠くこの先にある大きな水たまりの奥にいるこの世界で一番恐ろしい者を倒すことなのです!」


「「 ナッ!ナンダトッ!! アノオソロシイモノト タタカウダト!? 」」(カブキチ&カブタ)


 どうやら、惑星バルダクチュンに住む生き物達は皆海の奥にいるというこの星で最も恐ろしい生き物について知っているようだった。

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