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392:川遊び

 冴内達は大きな川の下流にある川がゆるく大きくカーブした場所で今日の修行を開始した。といってもやることは川遊びである。


 そこはさらに川幅が広くカーブの頂点付近は深い水溜まりになっており、その付近の陸地はスロープ状の丘になっていて岸辺は崖になっていた。


 早速美衣と初がまたしても止める間もなく丘を駆けあがりそこから川へと飛び込みした。


 美衣は空中で何十回転したのか分からない程回転して最後はほとんど水しぶきをあげずに着水し、初はフライング・クロス・チョップ状態で急降下し、一瞬だが水面を十字に割った。


「もう一回やる!」

「ボクも!」


 まさに子供らしく非常に元気な二人だった。そもそも美衣は見た目とステータスには【永遠の13歳:可憐な乙女】とあるが、実際にはまだ卵から孵化して1年も経っていないのである。


「皆さん!せっかくですから今日はこれを着用なされてはいかがですか?」(花)

「あら!ステキな水着ね!」(優)

「さすが花子!良く気が付くね、ありがとう!」

「ありがとうございます!昨日のうちに作っておいたんです!」

「これ可愛い!」(良)


 冴内達はその場で服を脱いで花子が作ってくれた水着に着替えた。


 優達が可愛い水着に着替えているのを見た美衣達もすっ飛んでやってきて、すぐに水着に着替えて大喜びしてまた飛び込みを再開した。今度は良子も一緒に飛び込み遊びに加わり、3人で輪になって飛び込んだり色々とアレンジして遊んでいた。


 冴内と優は二人でキャッキャウフフといった水遊びをするということはなかったが、二人で手を繋いで水の中を泳ぎ回った。


 冴内達は全員昨日初めて川に入った時とは思えない程縦横無尽に泳ぎ回ることが出来るようになっていた。


 その後ぎんちゃんが差し入れに巨大なイチゴに似た果物を持って来てくれたので、いったん小休止して喉の渇きと疲れを癒すことにした。


「アタイさっきから気になってるのがおる」(美)

「それって奥にいる四つ足の生き物のこと?」(良)

「それボクも気になってた!」(初)

「あれは凄く美味しそうだけど強そうだ・・・」(美)

「ぎんちゃん、あの奥に見える大きな影のこと知ってる?」(良)


 ぎんちゃんは巨大な複眼がある頭の角度を何回か変えてじっくり観察した。


「あれは昔からこの辺りにいるヌシですね、大昔はこの先にある大きな水たまりに住んでいたみたいですが、この世界で一番恐ろしい者から逃げてやってきた生き残りのようです。私も小さい頃はこの近くで水の中で過ごしていたので何度かアレを見たことがあります」


 ぎんちゃんの幼少時代は恐らくヤゴとして水中ですごしていたのだろう。


「どんなヤツなんだ?」(美)

「あまり目は良くないみたいですので、近づかなければ平気ですが、近づくと水の流れの違いを感じ取って大きな口で一飲みにされます」

「やっ、それは厄介な相手だ!」(美)


「えっ!まさか美衣様アレと戦うつもりですか?」

「そう・・・したいんだが、今のアタイ達で勝てるかどうかわからない」

「それはいけません、アレはこの辺りでは一番強い存在ですよ」

「だが、アタイ達はいつか海にいるこの世界で一番恐ろしいヤツも倒さないといけないうんめぇ~なんだ、だからそれよりも弱いアイツも倒せないとダメなんだ」


「そうなんですね・・・確かに洋様もそのためにこの世界に来たと言っておられました。私にも何かお手伝い出来れば良いのですが、今の私はもう水の中に入ることが出来ないので残念ですがお役に立てません・・・」

「いや!ぎんちゃんはアイツの事を教えてくれた、すごく貴重な情報だぞ!役に立ってくれたぞ!」

「ありがとうございます!そう言っていただけると私も嬉しいです」


「というわけだ父ちゃん、どうする?」


 どういう訳なのか、どうして冴内に聞いてくるのか、そもそも何故倒す前提で話が進んでいるのか、ほぼ丸投げに近い形で冴内に聞いてくる美衣だった。


「えっ?アレ倒すの!?」

「ウム、この先アタイ達が暗黒魔王を倒すにはヤツは避けては通れない相手だ。ヤツを食べてアタイ達はもっと強くなる必要がある。そしてきっとヤツはものすごくウマイに違いない」


 そんな得体の知れないものを食べれば今よりさらに強くなるという保証も、食べればとても美味しいという保証もまるでどこにもないにも関わらず、美衣は間違いないと断言した。


 冴内は目を細めて遠くに見える大きな影を見たが、冴内には大きな黒い影にしか見えず、美味しそうなヤツかどうかは分からなかった。ただ物凄く大きいということだけは分かった。


 またしても仮のサイズになるが今度は小型漁船のサイズではなく、鉄道の車両一両分程の大きさがあった。


「倒せる倒せないはともかく、あんな大きい生き物を皆で水の中から引っ張り上げることなんて出来るのかなぁ・・・」

「わかった!アタイ達は綱引きの練習をしよう!父ちゃんはアイツを倒すための修行をしてくれ!」(美)

「わかった!」(初)

「分かった!」(良)

「分かったわ!頑張ってね、洋!」(優)

「えっ!?ウ・・・ウン、分かった・・・」


 こうして改めて書いてみると、これまでもこんな流れで多数決で否応なしに冴内が半ば強制的に当事者にされてきた感が否めないが、当の本人である冴内は大好きな可愛い愛する家族達に言われているので全く嫌なことをやらされている感じはなかった。


 そこで美衣は突然閃き、カブトンのカブキチ相手に綱引きをして修行しようと思いついた。


「えっ!美衣さん達、カブトン相手に力比べをするんですか!?」

「うん!」

「カブトンはもの凄い力がありますよ!皆さんで挑んでもとてもかなわないと思うのですが・・・」

「でも、それくらいの相手に勝てないようじゃダメなんだ!アタイ達は強くなる必要があるのだ!」

「そうですね・・・皆さんはあんこくなんとかを倒しにきたんですものね・・・分かりました!では早速私はカブトンを探して事情を説明してきます!」

「ありがとうぎんちゃん!」

「はい!お任せください!」

 そうしてぎんちゃんは飛び立っていった。


 冴内達はそろそろお昼ごはんのための食材を確保するため、何を獲って食べようかと崖の上から川を眺めて食材探しをした。


 美衣が薄目を開けて、まるで何かの達人の構えのようなポーズで精神統一を行い、あっちの方に何かウマイものの気配を感じると言い、花子達に上空から確認してくれないかと頼んだ。


 ロボット3人組がジェットパックを使って上空監視を行い戻ってくると、どうやらウナギのようなものが水中の岩陰で大人しくしているという結果がもたらされた。その様子は音声ガイドロボ2号機の両目から近くにあった平らな岩をスクリーン代わりにして投影されたので冴内達も見ることが出来た。


 美衣はそこで目をつぶり手をあごに当てていかにもというポーズでしばし考え込むと、パッと目を開けて右手の拳を左の手の平にポンと打ち付けて、いかにも閃いたという仕草をした。


 美衣が閃いた作戦とは、初を抱えた美衣をさらに花子が抱え、ウナギのいるポイントのはるか上空まで飛んでもらい、そこから急降下して速度がのったところで美衣を切り離し、初を抱いた美衣は着水後に初を強く押し出して、とどめは初のスイミング・クロス・チョップで仕留めるというものだった。


 また、あらかじめ初には超強力軽量カーボンナノチューブ製のロープを装着させて、反対側もあらかじめ木に巻き付けておくと説明した。


 冴内は見た目3歳児と13歳の少女という幼い愛する子供にそんな恐ろしい作戦行動を取らせることに全く思いためらうということもなく、久しぶりにウナギの蒲焼き食べたいなという、本来ならば親として人としてあるまじきことを考えていた。

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