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391:良く食べる子は育つ

 惑星バルダクチュンにある最も高い山、標高千メートルの休火山の火口付近にある洞窟を仮住まいとしている冴内達は豊富に湧き出ている源泉を利用して調理を行っていた。


 ちなみに温泉として利用しているところは冷水が交じり合って丁度良い湯加減になっているが、源泉は百度を超える程の高温である。


 冴内達の胃袋は限界に達しており、待ちきれないので手長エビは塩で茹でただけのものを殻ごと食べ始めた。地球にいる小さな手長エビは殻も柔らかいのでそのまま丸ごと食べられるが、冴内達が捕まえてきた手長エビも殻ごと食べることが出来た。


「ウマッ!アマッ!ウンマァーッ!」

 手長エビは塩茹でしかしていないにも関わらず、非常にジューシーでほんのり甘く美味だった。


 カニの方は音声ガイドロボ2号機が茹で上がった足などから身を取り出してほぐし、巨大な甲羅の中に刻みネギと共に入れて、花子が美衣手作りの自家製味噌とみりんを入れて味付けをしてかき混ぜ、さいごのひとロボ4号機がご飯を炊いていた。


 一人二匹の手長エビを食べ終える頃には、今度は蟹甲羅焼きの方からたまらなく良い香りがしてきて、冴内達は各自自分のお茶碗を持って待ちきれない様子だった。


 やがてご飯が炊きあがり、蟹甲羅焼きも完成すると、蟹甲羅焼きで作った蟹味噌を炊き立てご飯の上にたっぷりと乗せた蟹味噌丼にして食べた。誰一人として一言も発せず黙々と食べた。すぐにおかわりを要求してくるので、昼食と同様ロボット3人組はひたすら調理し続けた。もちろん花子はご機嫌でとても嬉しそうだった。


 軽自動車程もあったサワガニも見事にあっという間に完食し、冴内達は全員妊婦のような腹になったがその顔は満ち足りた幸福そのものといったところだった。


 そしてロボット3人組はまたしても巨大なサワガニの甲羅や巨大ハサミの殻などを3分割して各自粉々にして体内貯蔵タンクに吸収した。


 食後は効能バッチリの温泉に浸かり、入浴後はすぐにグッスリと眠ったが、肉体的疲労のないロボット3人組は背中に装着して空を飛ぶためのジェットパックの製作に取り掛かっていた。


 明けて翌日、冴内達はさらに一回り大きくなっていたが、ロボット3人組はそんな冴内達よりもさらに大きくなっていた。しかし相変らず全員2頭身状態なのは変わらなかった。


「やっ!花子お姉ちゃんもさいごのひとさんもガイドさんもおっきくなってる!」(美)

「ホントだ!あっ!その背中の羽なぁに!?」

「ジェットパックです!これでお空を飛べるようになったので皆さんの足を引っ張ることなくついていけるようになりました!」


 花子は背中を向けて翼を伸縮させてみせた。翼は3段階にスライド伸縮し、最大幅はまたしても仮のサイズ記載になるが大体1.5メートル程になった。また背中にはランドセル程の厚みのある小型ジェットファンがついていた。動力源は不明である。そもそもロボット3人組自体の動力源が何であるのかが不明であった。超小型原子炉などでないことを祈る。


「「「 カッコイイ!! 」」」(美&初&良&冴内)

「ステキね!」(優)


「ところで、皆様も昨日よりさらに一回り大きくなっていますよ」(音ロボ)

「どれくらい?」(初)

「そうですね、昨日よりも10センチ程大きくなってます」


「やった!ボクおっきくなった!でもガイドさん達の方がボク達よりも大きいね」

「はい、とても不思議なのです。私達はほとんどが金属製なので、カニの甲羅などのカルシウムを吸収しても何ら効力はないのですが、昨夜少しづつ私達の身体が大きくなって各部品も強化されていることが判明したのです」

「アタイわかった!それは沢山この星のものを食べたからだ!」


 先ほどからそのように音声ガイドロボ2号機は説明しており、問題は何故カルシウムや微量のリンなどの成分しかないカニの甲羅や巨大ハサミの殻によって金属製ボディが大型強化されるのかと言っているのだが、美衣はそんな疑問点を一刀両断するかのように切り捨てて言い捨てた。


「そうですね!洋様がおっしゃられてたように、この宇宙に存在するものを取り込むことでこの宇宙の力を得ることが出来たんですね!」(花)


 理由はともかく、現実に今ある結果からは確かに美衣の言う通りなのであった。


 朝食は美衣が昨日のゆで汁を使ったダシの効いた具沢山味噌汁を作り、定番の納豆ご飯を食べたのだが、味噌汁だけで何杯も白米がおかわり出来る程に美味しい味噌汁だった。


 食後冴内達は休火山から麓を見下ろし、今日も大きな川を目指すことにした。川を下ればそのまま遠く行きつく先は海が待ってるのである。


「さすがに海まで行くには数日かかりそうだなぁ」

「ベッドとかキッチンを持っていくか?父ちゃん」

「いや、今日はまだここに戻ってこよう。海に行くまでにはもう少し体力をつけてからにしようと思う。今日は川を少し下って川遊びしながら身体を鍛えよう!」

「「 わかった! 」」(美&初)

「「 賛成! 」」(良&優)


「それじゃ行くか!エイッ!」

「「「 エイッ! 」」」


 冴内達は標高千メートルを一気にジャンプ&ダイブした。ロボット3人組は早速ジェットパックを使って飛行した。


「わぁー、いいなぁーカッコイイなぁー!」(初)

「うん!すごくカッコイイ!でもアタイ達は修行の身だからアレに頼っちゃいけないのだ!」(美)

「わかった!」


 冴内達は2頭身という可愛い見た目にも関わらず、凄まじい程に目まぐるしい程にピョンピョン飛び跳ね回り一気に森を抜け林を抜け草原を抜け、あっという間に川まで辿り着くと川に沿って下流へと駆け抜けていった。


 途中ぎんちゃんが上空から挨拶してきて、猛スピードで駆け抜けているにも関わらず普通に挨拶と会話を交わし、下流でどこか川遊びするのにいい場所はないかと聞くと、ぎんちゃんは高度をあげて探してくれて、この先で川がカーブしている場所が開けていて良いと言い、そのまま先導してくれた。


「ぎんちゃんはさすが速いなぁ!」

「ボク達も空を飛べるようになれればいいな!」

「アタイやってみる!」


 美衣はさらに加速し、速度がのったところで地面を強く蹴りだした。両手をぎんちゃんの羽根のように水平にしてグライダー滑空を試みた。


 お馴染みの仮のサイズ説明になるが、距離にしておよそ50メートル程も滑空した。かなりの距離ではあったが途中で冴内達に追い抜かれた。


「ボクもやってみる!」

「僕もやってみようかな」

「洋がやるなら私もやるわよ!」

「私もやってみる!」


 冴内達は次々とグライダー滑空をしながら走り抜けた。途中でぎんちゃんからのアドバイスがあり、2頭身状態の冴内達がいくら両手を広げたところで頭のてっぺんにすら届かない短い手に翼としての機能は皆無なはずなのだが、空気の流れを掴めなど、揚力について分かりやすくトンボならではの視点で教えてくれた。


 実際徐々に距離と速度を伸ばしていく冴内達を見てぎんちゃんは喜びながら「その調子!」と励ましてくれて、さいごのひとロボ4号機と音声ガイドロボ2号機は有り得ない光景に言葉を失い、オリジナル花子は「さすがです皆さん!」と褒め称えていた。


 そうして助走&グライダー滑空を一切休むこともなくぶっ続けで繰り返して移動すること約2時間、冴内達は目的の場所へと到着した。


「なるほどここは良い場所だね!」


 そこは大きな川がゆるくカーブしている場所で、浅瀬の岸もあればスロープ状のちょっとした崖になってる場所もあり、飛び込みしたらとても気持ちよさそうだった。またその奥は結構水深がありそうな深みになっており、前日の大魚よりもさらに巨大な何かの影が見えた。

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