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380:過去イチ危険な行為

 冴内達はお昼のカレーライスをたらふく食べて全員妊婦のような腹になりながら食後のお茶を飲んでまったりしていた。


「めいそうは不思議だ!体を動かしてないのになんでこんなにお腹が空いたんだろう?」

「うん、ボクも途中から眠っていただけなのにとてもお腹が空いちゃった!」


 さいごのひとロボ4号機と音声ガイドロボ2号機と良子はその理由を正確に把握しており、これまで冴内達は普通に過ごしているかのように記載してきたが、実はまだ恐ろしいまでの重力力場が冴内達の周りには継続して作用していたのだ。そのため普通に過ごしているだけでも相当な体力を消耗していた。


「そうだ!おやつを作って持っていこう!」

「おやつ!やった!何を作るの?」

「初は何がいい?」

「えっとね・・・おもち!おもちがいい!」

「分かったあんころもちにしよう!」

「あんこくもち?」

「あんころもちだよ、甘いあんこを衣のように包んだおもちだよ」

「わぁ!あんころもち食べたい!」


 実に渋いチョイスをする美衣。宇宙各地のレシピが頭に入っているはずなのに、あんころ餅をチョイスするというセンスが美衣らしかった。それならばと花子は日本茶によく似たお茶を淹れて持たせることにした。


 食休み中に「初心者、正しい瞑想のやり方」などで検索して出てきた色んな動画を皆で見て、各自「これなら自分でも出来そう」と思ったものを参考にやってみることにした。


 ジメンは昼休み後に冴内達の瞑想が結構さまになっているのに感心した。


『皆さん随分印象が変わりましたね、凄い集中力だと感じます』

「ウム、私も彼等の学習能力の高さと集中力にはいつもながら感心する」

「皆様さすがですね」(音ロボ)


「グゥグゥ・・・」(美)

「ムニャムニャ・・・」(初)

「スヤスヤ・・・」(良)

「スゥスゥ・・・」(優)


『・・・』

「・・・」(最後ロボ)

「・・・」(音ロボ)


『まっ、まぁ皆さんそれぞれの方法で模索しているということで・・・』


「スゥー・・・フー・・・スゥー・・・フー・・・」

「冴内 洋のガンマ波が増大している、完全に瞑想状態に入っているようだ」

「すごいですね、普通はアルファ波かシータ波が増大すると思うのですが」(音ロボ)

「恐らくここの環境が作用しているのではないだろうか」


 冴内は確かに瞑想状態に入っていた。冴内家初代のたつのすけこと冴内 一之進が最初に海の上にプカプカ浮いているときに瞑想状態に入ってから千年、現代の冴内はまず最初にゲートシーカーになりたての頃に河原で初めてチョップの素振りで瞑想状態になった。


 それから試練の門でブラック冴内に挑む時に道明寺の紹介で修験者しゅげんじゃから本格的な瞑想修行を学び吉野熊野国立公園内の山の頂にて瞑想を行った。


 さらに大闘技大会で宇宙人類最強スーパーヒーローのスーパーヒューマンと戦う前にも瞑想し、その時初めて冴内の魂は宇宙と対話した。


 こうした段階を踏まえて冴内は今、これまでとは全く異なる別の宇宙を魂で感じようとしていた。


♪ペーポーパーペーポー


「・・・この音・・・前にも聞いた音だ・・・」


♪ペーポーパーペーポー


「♪こぉーんーにィーちぃーわぁー」


♪ペーポーパーペーポー


「♪こぉーんーにィーちぃーわぁー」


 冴内は昔地球で大ヒットしたSF映画で一躍有名になったメロディに合わせてかなりいい加減ではあるが挨拶を口ずさんだ。


『アンムルメンドウ』

「あんむる・・・めんどう」

『シュチッ!』

「しゅちっ!」


『サエナイ ヨウ・・・カガンダンキュウデハナイ サエナイ ヨウ・・・ゼンウチュウノ・・・アイ?ノシシャ・・・ゲェッ!ノサエナイ ガ スキ』

「・・・やっぱり、そうですか・・・」

『ウン、ゲェッ!ダイスキ、アノ カオ サイコウ』


 冴内は不思議世界の色彩と同じパステル調の色の光の粒子が漂う何もない空間に漂っていた。そして目の前にはやはり同じくパステル調の色がマーブル模様で渦巻いている球体が浮かんでいた。それはとても温かく優しい光を発していた。

 その球体がしゃべる時、少しだけ膨らんだり縮んだりするので星の状態になったときの初みたいだなと冴内は思った。


『サエナイ ヨウ、ヨク キテクレタネ、ドウモ アリガトウ』

「どういたしまして、宇宙さん」

『ウチュウ サン?ソレハ ワレノコト?』

「はい、あなたはここの宇宙そのものですよね?」

『ソウ ワレハ ウチュウ、デモ ウチュウ ニタイシテウチュウ トヨブノハ ヘンナカンジガスル、サエナイ ヨウ ノコトヲ ニンゲンサン ト イウノト オナジダ』

「あっそうか、そうですね、では何とお呼びすればいいですか?」

『サエナイ ヨウハ ワレ ノコトヲ ドウヨベバイイトオモウ?』

「そうですねぇ・・・」


 今、過去最大級に危険な試みをしようとしていることに全く気付いていない冴内だった。何故かこういう時に限って冴え渡る閃きが働かず、冴内は肝心な事に気付かずただ目の前の宇宙をどう呼ぶのがいいのかという考えで頭の中がいっぱいだった。


 冴内は今、宇宙そのものに対して【名前を付けよう】としているのだ。


「やっぱりパステルさんが一番しっくりきます。とても淡い色でなんだか優しい感じがします。宇宙さんがジメンさんを造ったと聞きましたが、ジメンさんがパステルカラーなのは宇宙さんがパステルカラーだったからなんですね。僕はこの色彩は優しくて温かい感じがするので好きですよ。だからこれから宇宙さんのことを呼ぶ時はパステルさんって呼ぼうと思います」


『・・・』

「・・・」

『・・・』

「・・・えっと・・・その、お気に召しませんでしたかね・・・」



キュゥーーー・・・キュワァーーー・・・


 小さな、しかしかなり危険な感じのする音がし始めた。


シュゥーーー・・・シュワワァーーー・・・


 光がどんどん冴内の目の前に浮かぶ球体に吸い込まれていき、球体はどんどん小さくなっていき、それと共に光が凝縮されて凄まじい眩しさになっていった。球体は今まさに縮退を起こしその後に強烈な超新星爆発を巻き起こす直前の状態になった。


 そしてその光は冴内のおへその下約7センチ程の場所、いわゆる丹田(たんでん)がある場所に入っていき、冴内の丹田を中心にパステルカラーの大渦巻の光がグルグルと回り吸い込まれていった。


キキュゥゥーーッ!キュウゥゥゥーーーッ!!!


 いよいよ臨界点を超えて極めて危険な音がし始めた瞬間・・・


バアァァァァァーーーーーンッ!!


 冴内は木っ端微塵に大爆発した。


 パステルカラーの虹色の粒子が四方八方に飛び散った。凄まじい速度でどこまでもどこまでも何もかも突き破って飛んでいった。


 真っ暗闇の中を純白に光り輝く中を灼熱に燃え盛る中をどこまでも青く澄み渡る中を赤土色にかためられた中を緑に覆われた中をありとあらゆる世界を突き抜けていった。


 様々な生物たちの驚く顔を見た、生物に限らずありとあらゆるものが優しく温かいパステルカラーの虹色の粒子が自分達を突き抜けて行くのを感じた。


 遠く遠く遥か遠くまで飛んでいった。そこで4人の驚く顔を見た。一瞬の出来事であったのと、それ以外にも様々なもの達の表情が凄まじい情報の洪水となって頭の中に流れ込んできたので冴内の記憶に残るかどうかは分からない。


 というより、この膨大な情報の洪水で冴内の頭脳は果たして無事で済むのかすら分からなかった。

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