38:懸命の救出
雄たけびならぬ奇声を放って勢いよく向かったせいで熊もユニコーンもギョッとした顔(の様に見えた)でこちらを見てくれたがそれも束の間、今度は熊の方が本当の雄たけびをあげてユニコーンの方へ向かっていった。
クソッ!そっちじゃなくてこっちに来てくれよ!間に合ってくれと願いつつ急いでユニコーンの元に向かう。
急いで水平チョップを遮二無二振り回すが胸まで伸びてる笹薮が無情にも行く手を阻み思ったように速度があがらない。それでもとにかく全力で進んだのであと15メートル程の距離まできた。
ところがそこで聞きたくなかったユニコーンの悲痛な叫びが聞こえた。
「ヤメロォォォーーーーッ!!」
頭の中が真っ白になり心の底から絞り出した声とともにあらん限りの水平チョップを「ぶっ放した」
目の前の笹薮やら木やら何やらが一瞬で消滅したがそんなものは全く目に入らずユニコーンに覆いかぶさる熊にしか目がいかなかった。
ユニコーンの美しい純白の身体に流れる鮮血が見ていられない。
この野郎!このやろう!コノヤロウ!
多分1秒程度だったと思うが頭の中はコノヤロウ一色だった。もうなりふりかまわず何も考えず10メートル程の距離をひとっとびのジャンプで縮めそのまま水平ではない通常チョップを熊の眉間にたたきつけた。一瞬だがなんとなく熊の表情が「えっ?」みたいに見えた気がした。
熊はすぐに霧散したがそれどころじゃない。ユニコーンがブルブル震え今にも消え入りそうに息も絶え絶え呼吸している。すぐにリュックから回復ドリンクを3本とも取り出してドクドクと流れ続ける傷跡にぶっかける。しまった!1本は飲ませた方が良かったか?なんとなく出血は治まったように見えるが、傷口が・・・傷口がどんどんドス黒く変色している・・・多分毒だ・・・
そうだ携帯!携帯で良野さんに!ってダメだ!ユニコーンの様子がますます悪くなっている!間に合わない!死ぬな!死なないで!頼む!心の中は100パー助けたい一心でひたすら傷口に向かって手を当てる。
その行為に何の意味があるのかなど1ミリも考えずとにかく手を当ててひたすら死なないでくれと手を当てる。手のひらを当てるのでなく小指側の手の側面を当てていた。当然無意識で。
第三者がみたら何故手のひらじゃなくてチョップで手当てをしてるんだ?とツッコミを入れていたことだろう。
なんとなくだが手から暖かい光が出ていたような気がする。
少しづつドス黒かった傷口が綺麗になっていく気がする。
ユニコーンの血色も良くなっていってる気がする。
呼吸もだんだん落ち着いてきたような気がする。
・・・多分治ってる気がする。
冴内はその間ギャン泣きして鼻水もドバドバ流していた。とてもじゃないが良野さんや木下さん、いや自分以外の誰にも決して見られたくない顔だったと思う。
ユニコーンはそんな冴内の顔を静かにずっと見続けていた。
冴内の左手上には以下のように映し出されていたが当の本人はまったく気づいていなった。
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冴内 洋
20歳男性
スキル:チョップLv20
★スキル:水平チョップLv5⇒Lv10
スキル:ポイズンチョップLv1
★スキル:チョップヒールLv1⇒Lv5
★スキル:チョップキュアLv1⇒Lv5
称号:チョップロード
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