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379:期限と寿命

 冴内達はジメンのいる不思議世界に来てわずか2日目で修行の最終目標ともいえる核心に辿り着いてしまったが問題はそこからで、例え答えが分かったところで彼等自身がその身をもって会得しなければ何の意味もなかった。


 冴内はジメンそのものといってもよい不思議空間の地面に胡坐をかいて瞑想を行っていた。そしてその冴内を取り囲むように美衣達も瞑想していた。


 瞑想開始から3時間、初はスヤスヤとグッスリ寝てしまい、美衣と良子からはお腹がグゥグゥ鳴る音が絶え間なく聞こえていた。


「だ・・・ダメだ・・・やっぱり瞑想は難しいのだ・・・」

「うん、美衣ちゃんのお腹の鳴る音が気になって私もお腹が空いちゃって集中出来ない・・・」

「父ちゃんはすごいな・・・ちゃんと瞑想して宇宙さんとお話ししているんだ・・・・」

「グゥグゥ・・・」

「・・・と、思ったら父ちゃんも寝てるようだ」

「スゥスゥ・・・」

「お母さんも寝ちゃってるみたい」

「起きろ父ちゃん、寝たら瞑想にならないぞ!」

「えっ!あっ!あれっ!?ぼ、僕寝ちゃってた?」

「アタイのお腹虫みたいにグゥグゥ言って眠っていたぞ」

「おかしいな、しっかり瞑想していたはずなんだけど、なんというか途中から妙に心地良くなっちゃったんだよね・・・」


『冴内様、今心地良いと申されましたか?』

「はい、何だか瞑想して気分が落ち着いてきたら心地良くなっちゃって意識が薄れていったんです。だからてっきりもうじき宇宙と一体になるのかなって思っていたんですが、恥ずかしながらただ単に眠っちゃっていたみたいです・・・」


『いえ、恐らくそれはとても見込みがあります』

「えっ?そうなんですか?」

「じゃあ初と母ちゃんも見込みがあるのか!?」

『いえ、初様と優様は本当に気持ちよく眠っているだけです。恐らく大好きな洋様のことを思い描いて気持ちよくなっているのだと思います』

「なるほど、でも初と母ちゃんはそれでいいのかもしれない・・・」


『冴内様、具体的にはどのように心地良かったですか?』

「そうですね・・・何か温かい光の球のようなものが現われて、僕のお腹の中に入っていきました。そしたらすごく優しい温かな気持ちになったような気がします」

『凄い!そんな風になるんですね!想定をはるかに上回る現象を引き起こしていますよ!』

「そうなんですか?」


『はい!こちらの宇宙は呆れるくらいとんでもなくシャイなので、普通初対面の者にそんな積極的なことは宇宙が崩壊しても起こり得ないのです』

「・・・やっぱりここの宇宙もシャイなんですね」


『これは想定以上に計画が早く進んで、想像以上に凄いことになるかもしれません!』

「えっ・・・大丈夫なんですか?」

『大丈夫です!えぇと、何と言いましたか・・・あっそうそう!全宇宙の愛の使者の冴内様ならば、こちらでも同じように愛の奇跡を起こすと私は確信します!』


「ちなみにその計画ってどれくらいの期間を想定していたのでしょうか?」

『そうですね、申し上げにくい事でしたが、この状況ならば正直に申し上げます。出来れば100万年以内には暗黒魔王達を倒して宇宙に平和を取り戻して欲しかったのです』

「えっ!!100万年ですか!?」

『はっ、はい!申し訳ありません!あまりにも短すぎる期間であることは重々承知しているのですが、崩壊しかけている一つ目の宇宙は恐らくあと100万年程度しか持ちこたえられそうにないのです。急かしたてるようで本当に申し訳ないのですが・・・』


「えっと・・・その・・・僕は100万年どころか100年も経たずに寿命が来て生きていないと思います」

『・・・えっ!?』


「美衣ならそれくらい生きれるの?」

「いや、アタイは頑張っても大体3千歳くらいだ。その頃はしわくちゃのお婆ちゃんになってる」

「私も頑張ってあと2千歳くらいかも。その後はさいごのひとさんみたいに思念体になると思う」

「ボクはこの姿でいられるのは多分1万歳くらいまでだと思う。その後は星と同化してみんなのほしのお爺ちゃんみたいにたまに少しの間だけヒトの身体になれるくらいだと思う」

「私は美衣に全部引き継いだから洋と一緒に100歳まで生きて消滅するわね」


『そっ!そんな!まさか皆さんそんなに短命だったとは思いもしませんでした!・・・あぁ・・・まさか・・・それではどうすれば・・・』

「えっと、その・・・僕の想定では長くても数年以内には問題を解決しようと思ってました」

『数年!?数万年ではなくですか?』

「えっとその・・・はい」

『数年!・・・数年ですか!・・・それは私にとっては一瞬のまばたきの間ですらない程に短い期間です!まさかそれ程までに冴内様と私の間に認識齟齬があるとは思いませんでした』


「横から口を挟むようで申し訳ないが、冴内 洋は数年どころか最長でも数ヶ月程度で様々な困難な事案を解決してきたのだ。恐らく今回もそれくらいで解決するのではないかと私はみている」(最後ロボ)

『は・・・はわわぁ・・・』


『ハッ!?しっ、失礼いたしました!そっそうですね!これまでの冴内様のご活躍の記録ではまさしくさいごのひと様のおっしゃられる通りですね!冴内様にこの宇宙を理解するように申した私が冴内様を正しく理解出来ておりませんでした・・・私は何という愚か者なのでしょうか・・・情けなくて悲しくなってしまいます・・・』


 気のせいかパステル調の色彩世界が少し薄暗くなったように感じた。


「ジメンさん悲しまないで!お父ちゃんは優しいからそんなこと気にしないよ!」

「そっそうです、ジメンさんそんなこと気にしないでください。実際僕は大したもんじゃないです、これまで僕は宇宙とここにいる皆の力を借りてどうにか運よくやってきただけですから」


『あぁ初様洋様心優しいお言葉有難う御座います、この優しさが少しでも暗黒魔王達にもあればと思わずにはいられません』


「ウム、昔お母ちゃんも大暴れして宇宙をぶっ壊した後、父ちゃんのご先祖様のたすけてじゃないたつのすけにスゴイ力を手に入れたものはどうしてもその力に飲まれてしまうのだというようなことを言っていた。暗黒魔王達も恐らくスゴイ力を手に入れてその力に飲み込まれてしまったんだろう」

「そんなこともあったわね。その頃は私もまだまだ子供だったのよね」


 昔は子供だったからと言って宇宙を崩壊させられたらたまったものではないが・・・


グゥ~ッグゥゥ~ッグゥゥゥ~ッ


 この間ひっきりなしに美衣と良子とさらに初の腹の虫までが鳴り止まなかったので、冴内達はお昼ご飯を食べてくると言って不思議世界をいったん退出した。

 リビングに入る頃には家族全員の腹の虫が大合唱しており、宇宙一優秀なメイドでもある花子は全て織り込み済みでたっぷりご馳走を作っていた。


「やっ!今日はカレーライスだ!」

「やったぁ!」


 冴内達の腹の虫が大合唱した理由はまさにカレースパイスの香りによるものだった。ちなみに見た目3歳児の初はカレーはお子様向けの甘い味にしなくても問題なく、大人でもヒーヒー言うような辛いカレーでも問題なくパクパク食べる。むしろ大人の冴内の方が激辛カレーは苦手だった。


「いつも思うのだが、このニッポンのカレールーはどれも実にうまい!工場生産なのにこの品質は実にすばらしい良いものだ」いつもながら料理の評価をするときはオッサン口調になる美衣だった。


 ちなみに花子もいくつかの市販カレールーをオリジナルでミックスして隠し味も入れていた。そして今日も少し大目のピーチスライムゼリーを砕いて入れた野菜サラダも添えらえれていた。


 そろそろピーチスライムゼリーの効能【一時的に能力ブーストが働くが若干興奮気味になる】が冴内達の人体に影響するかもしれなかった。

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