377:衝撃的事実
別の宇宙を移動するための修行で、あの冴内達が早くも力尽きるという、にわかには信じられない光景を目の当たりにしたさいごのひとロボ4号機と音声ガイドロボ2号機は、実はジメンこそ暗黒四天王の一人ではないかと思い始めていた。
『皆さんお疲れのようですね!今日のところはここまでにしましょうか!初日にしては皆さん大変良く出来たと思いますよ!この調子で明日も頑張りましょう!』
「が・・・頑張ります」
「ウ・・・ウム・・・」
「がんばる・・・」
「は・・・はい」
「わかった・・・わ」
冴内達は這う這うの体で我が家へと戻っていった。
ジメンに頼まれて音声ガイドロボ2号機が残り、冴内達の冒険活動記録の続きを見せることにした。
冴内達を出迎えた花子は冴内達の疲弊した表情を見て察して「夕食は私が作りますね!」と言い、美衣にピーチスライムゼリーを取り出してもらいキッチンへと運んでいった。
「やっぱり相当身体がなまってたみたい」
「アタイ全然ジャンプ出来なかった」
「ボクも」
「千倍重力の時を思い出しちゃった」
「そうね、でも何かちょっと違う感じもするわね」
「試練の門の時は何度か死にかけるくらいだったから、やっぱり運動不足だったのかもしれない。僕は今いる宇宙の力を借りてるだけだったんだなぁってつくづく思い知らされたよ。いい機会だからしっかりここで身体を鍛え直そうと思ってる」
「さすが洋!ステキよ!」
「お父ちゃん!カッコイイ!」
「父ちゃん良く言った!そうだ、試練の門のこの世の地獄に比べたら全然マシだ、お腹が空いて死にそうになることもないし、痛いこともない!疲れるだけでまだまだ地獄の特訓じゃない!アタイはへこたれないぞ!」
「うん!ボクもがんばる!」
「私も!」
「私も頑張るわよ!」
「お待たせしました~!皆さんがもっと元気になれるよう栄養満点の料理を沢山作りましたよ!」
「やっ!コレはスタミナ抜群の食材の匂いがいっぱいする!」
「ボクたくさん食べて今日よりもっと高く飛べるようになる!」
「そうだね!僕も沢山食べて筋肉つけるぞ!」
「私も沢山食べて強くなる!」
「私もいっぱい食べて強くなるわ!」
冴内達は全員腹が妊婦のようになるまで栄養満点の料理をたらふく食べた。その中にはちょっと大目にピーチスライムゼリーのクラッシュゼリーが入ったミックスサラダも含まれていた。
ピーチスライムゼリーの効能には【一時的に能力ブーストが働くが若干興奮気味になる】という一文があり少々不安材料があるが、花子はちゃんとそれを踏まえて精神鎮静作用のある野菜も多く採り入れて相殺させていた。
食後はお風呂にそんなヤバイ効能のある桃を3っつも入れて入浴した。念のため花子は量産型花子と久しぶりに小隊を組んで待機し、冴内達が入浴中に気持ち良すぎて意識が飛んでも冴内達を無事回収出来るようにした。
初が疲労と心地よさで眠った以外は皆意識はしっかりしており、歯を磨いてから全員いつも以上に早く寝た。
翌朝も冴内達にしては珍しく5時半まで寝ていて、朝食も花子が準備することになったが、花子は冴内達のお世話が出来てすこぶるご機嫌だった。
やはり朝からスタミナ抜群の食事が出てきたが、それでもいきなりステーキとかを出さないあたりが花子らしく、胃に優しい消化に良い食事でありながらも栄養満点の料理を出した。とはいえ冴内はさておき他のメンバーは胃に優しかろうが厳しかろうが全く問題なさそうな鉄壁の胃を持っていそうなメンバーであったが・・・
当然全員食後のフルーツも含めて完食し、お茶を飲んで食休みを十分とってから、何故か円陣を組んで「今日も頑張るぞ!」「オォーッ!」と気合を入れて「皆さん頑張って!ファイトです!」と言う花子の応援を背に冴内達は顔を上げてジメンが待つ不思議世界へと移動した。
相変らず辺り一面パステル調の色彩の不思議世界に入ってきた冴内達に、ジメンは早速厳しい修行を再開することはなく冴内に話をしてきた。
『皆さんおはようございます、昨日はお疲れ様でした。皆さんのお元気そうなお顔を拝見して、しっかりと休息なされたようで安心しました』
『さて、修行を再開する前に少し気になることがありますのでお話しをしてもよろしいでしょうか?』
「分かりました、なんでしょうか?」
『昨日からずっと皆さんのご活躍の活動記録を見させてもらったのですが、直近の活動記録で漆黒の闇の世界と真っ白な世界の奇妙なゲート空間での活動記録を見ました』
ちなみにジメンは昨日から夜通しノンストップでこれまで全ての冴内の活動記録を見た。音声ガイドロボ2号機もジメンも疲れることはほぼないので何ら問題なく、途中から3倍速で見ても解析可能だというジメンの要求に応じて一気に全てを見たのだった。
『私が思うにこの二つのゲートはほぼ確実に暗黒四天王の一人の者の仕業だと思います』
「「「 なっ!なんだってぇーッ!? 」」」
『恐らく目的は冴内様達の能力を推し量るためだと思われます。さらに恐ろしい魔物を配置して冴内様達をこの機会に倒せれば儲けものだと考えていたに違いありません』
「恐ろしい魔物ってあのスライムのことですか?」
『そのスライムのことです』
「確かに強かった!父ちゃんにアザをつけるくらい強かった!」
「うん!ボクもちょっと痛かった!」
「私も久しぶりにしりもちついたわ!」
『なんと恐ろしい・・・皆さんのいる宇宙では敵う者なしと言う程の強さを誇る冴内様達をそこまで追い詰めるとは・・・』
「でもアタイ達はレベルアップしてスライムを簡単にやっつけるようになったぞ!」
「ボクもレベルアップしたよ!レベル1だよ!」
「1の後に星のマークがついてるわよ初」
「そっかぁ」
「「 アハハハ! 」」
「でもその後の真っ白ゲートではスライムは出てきませんでしたよ」
「そうです、スライムの代わりに白い石像が出てきたんです」(良)
『はい、私も拝見いたしました。恐らくさいごのひとさんの推測通り、冴内様の家のディスプレイに映った動画を盗み見して様々な事を学習しようとしていたんだと思います。それによって冴内様達を倒すための手がかりを得ようとしていたに違いありません、この事から恐らくあのゲートを作ったのは暗黒四天王の中でも狡猾なずる賢い魔王だと思います』
「でもその後ゲートは出てこなくなりました。これってまさかもう僕達の弱点というか、倒すための何かヒントを掴んだということでしょうか?」
『分かりません・・・ただ、最後に洋様と優様の二人でゲートに入った後で凄まじい閃光と共に消失したとお聞きしました。その時の何かがきっかけになったと思います。その時何があったのかお聞かせ願いますか?』
「何もなかったわよ!」
「うっうん、何もなかった、ホントに全く何もなかった、石像もスライムも何も出なかった」
『そうですか・・・何か凄く衝撃的なことが起きたのだと思ったのですが・・・まぁ魔王のやることなすこと考えることは私には全く分かりませんので、例え事象として何が起きたか分かったとしても、私にとっては理解不能なことかも知れません』
さいごのひとロボ4号機と音声ガイドロボ2号機は真っ白ゲートの中で冴内と優が何をしていたのか何となく察してはいたが、確証はないしプライベートなことなので黙っていた。
多分暗黒四天王のうちの一人にとっては相当に衝撃的なことだったかもしれない・・・




