371:久しぶりの夢
冴内は久しぶりに優と二人きりの夜ということで大いにハッスルし、心地よい疲労により深い眠りについていたのだが、これまた久しぶりに別の宇宙が冴内の夢の中に現れてきた。
『サエナイ ヨウ ヨウヤク ゲート カンセイスル』
「あっ、そうなんですね」
『ゲート ドコ オケバヨイカ?』
「えっ?いつもの場所でいいですよ」
『イツモノバショ シラナイ ソレハ ドコ?』
「えっ?家のリビングにあるテレビの横の壁のことですよ」
『ソコニハ オケナイ』
「えっ?でもこれまでそこにゲートがありましたよ」
『ソレハ ワタシノ ゲート デハナイ』
「えっ?あれはあなたのゲートじゃない!?」
『ワタシノ ゲート ヨウヤクデキル ソレマデハ ゲートハ ナイ』
「えっ・・・じゃあこれまでのゲートは一体誰のゲートなんだろう?」
『ワカラナイ ワタシノゲート ドコニオケバヨイ?』
「えっと・・・家の近くならどこでもいですよ」
『ワカッタ カンセイ シタラ サエナイ ヨウ イエ チカクニ ゲートオク』
「わかりました」
『ソレデハ サヨ オナラ』
「はい、さようなら」
冴内はまた深い深い眠りについた。朝起きたらこの夢のことは全部忘れてしまうんじゃないかと思うくらい心地よい眠りについた。
翌朝。
いつものように空腹による腹時計と良い匂いによって冴内は目が覚めた。
毎朝5時前には目を覚ます早寝早起き冴内一家であるが、この日は珍しく朝6時近かった。それだけ昨日の優との2回戦で疲労したのかもしれなかった。
良い匂いのする方へ本能の赴くまま階段を降りてリビングに向かうと朝から肉の焼ける良い匂いがしていた。
肉の焼ける匂いはしたが、お約束のステーキではなく、スライスしたバラ肉と玉ねぎやニラなどの野菜と一緒にジャアジャアと炒めているようで、生姜の匂いも漂ってきた。醤油の香ばしい匂いと交じり合って非常に食欲をそそるものだった。
やがて食卓に運ばれてきたのはスタミナどんぶり略してスタどんだった。一時期日本のあちこちでチェーン展開していたスタどんの店で出てくるものに似ており、冴内も何度か学生の頃に入った記憶があった。
朝からスタどんとはなかなかに重たい食事内容であったが、昨日大ハッスルしてスタミナが切れかかっている冴内にはピッタリの朝食だった。
スタどんの真ん中には何かの卵が乗せられており、冴内はこれをかき混ぜて一気にかきこんだ。
ニンニクと生姜のすりおろしと醤油が見事にマッチしており、甘くクタクタになるまで炒めた玉ねぎやニラ、そしてほんのり甘味を感じる脂身が適度にある何かの肉を薄くスライスしたバラ肉、そして炊き立てホクホクのご飯、さらに今しがたかきまぜた卵が絶妙のハーモニーを奏でており、冴内はたまらず一心不乱に一気にかきこんだ。
時折味噌汁を飲んで胃に流し込んだが、なめこのような小さく可愛らしいキノコが沢山入った味噌汁だった。ヌメヌメしておりサイズも小さいのでそのまま飲んでも喉に詰まることなく飲めた。
朝からスタミナたっぷり栄養満点のスタどんを3杯もおかわりして冴内は腹をパンパンに膨らませて大満足した。
食後のお茶をすすって一息つくと、ようやく昨晩の夢のことを思い出す余裕が出てきた。
「そういえば、昨日久しぶりに夢を見たよ」
「私も見たわよ!」
「えっ!優も見たの?」
「うん!洋と初めて会った時の夢!それから一緒にアリオンに乗って空を飛んだ時の夢!」
「そっかぁ」
「アハハハ!洋の夢はどんな夢?」
「うん、やっと別の宇宙さんが出てきたよ」
「あら!そうなのね!」
「うん、それがどうにも変なんだ」
「変?」
「うん、これまでそこにあったゲートは別の宇宙さんのものじゃないんだって」
「えっ?じゃあ誰のゲートなの?」
「分からない・・・そして、別の宇宙さんのゲートはウチの中には置けないって言っていたよ」
「そうなの?」
「うん、もうすぐ完成するから、そしたら家の近くに置くって言っていたよ」
「フム・・・これまでのゲートが別の宇宙のものではないということは実に興味深い」(最後ロボ)
「私、ちょっと外を確認してきます!」(花子)
「私も行きます!」(音ロボ)
オリジナル花子と音声ガイドロボ2号機は冴内ログハウスの外に出て別の宇宙のゲートがないか確認して回った。既に外でモフモフの大人しい4つ足や巨大なニワトリに似た鳥の世話をしていた量産型花子にも確認したがそれらしいものは全くなかった。
「既にある冴内様のゲート以外にゲートらしいものはありませんでした」(音ロボ)
「他の花子達にも聞きましたがそれらしいものは何もありませんでした」(花子)
「ありがとう、別の宇宙さんはもう少しで完成するって言っていたから、これからなのかもしれない」
すると大型ディスプレイから音がして画面を見ると「冴内 美衣」という文字が表示されていた。
「もしもし」
「おはよう父ちゃん!ゲート出来たか?」
「いや、まだだよ。でも昨日別の宇宙さんと話してもうすぐ完成するからそしたら家の外にゲートを作るって言ってた」
「家の中じゃないのか?」
「うん、それがこれまで家の中に出来たゲートは別の宇宙さんのゲートじゃないって言っていたんだ」
「えっ!それじゃ真っ黒ゲートと真っ白ゲートは誰のゲートなんだ?」
「別の宇宙さんにも分からないって」
「うーむ・・・」
「ところでそっちはどう?」
「やっ!それが大変なんだ!一大事なんだ!ニャアちゃんが前にアタイと戦ったミャアちゃんのご先祖様の子供の子供の子供の・・・えーと、こういうのなんていうんだっけ?」
「・・・子孫?」
「しそん?しそん・・・しそん・・・あっ、そうかもしれない、そうだ、しそんだ。ミャアちゃんのご先祖様の戦士にいでんしがそっくりなんだって」
「えっ!ニャアちゃんが!?」
「うん、そして昨日久しぶりにニャアちゃんとお稽古したらミャアちゃん達から褒められたよ。ニャアちゃんはめいよなんとかをもらったんだ」
「へぇー凄い!そうだったんだ!」
「このあとなんかエライ人達と沢山会うみたいだからそっちに帰るのは夕方前になると思う」
「分かった、まだこっちはゲートはないからゆっくりしておいで」
「うん、それじゃ!」
「なんだか向こうでも大変なことになってるね」
「ニャアちゃんはミャアちゃんと姉妹ってことになるのかしら?」
「あっそうか、なるほど・・・まぁ直接の姉妹ではないかもしれないけど、同じ血縁関係にはなるのかもしれないね」
「めいよなんとかって何かしら?」
「ウム、獣人惑星の名誉市民と名誉顧問のようだ。どうやら昨日の様子が情報公開されている。冴内 美衣が言っていた通り今日正式に授与式が行われると報道されている」
「へぇー!凄いなニャアちゃん!」
「良かったわね!」
大型ディスプレイに獣人惑星の報道ニュースの映像が映し出された。美しくも恰好良いニアの戦闘獣モードと美衣の戦闘獣モードも映し出され、凄まじい練習試合の様子も映し出された。さらにニアの遺伝子情報と獣人族最強の伝説的英雄【ギャオウギャウウギャミィー】の遺伝子情報に多くの一致する部分があるということも紹介された。そして本日名誉獣人賞の授賞式が行われると報道されていた。立会人として美衣、良子、初に加えしろおとめ団達も直々にやってくると紹介されていた。
その後しろおとめ団達が冴内の家にやってきて、これからニアの授賞式に参加するのだと報告しにきた。ニアからは既に昨日の出来事を説明されていたようで、これからもニアはしろおとめ団として活動すると言ってくれたことを喜んでいた。
そんなことがあったので、冴内の関心事は昨日みた夢の事からニアの方へと完全に移ってしまったのであった・・・