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364:ウェディングケーキ

 大結婚披露宴パーティー2日目は昼過ぎから神代とりゅう君がそれぞれのパートナーと出会うまでの軌跡が大型スクリーンにて映し出された。同じものはあちこちの端末でも見ることが出来た。


 どちらもやはり冴内がきっかけで起きたことなので話しの中心は冴内になってしまうのだが、それでも神代とりゅう君、そして龍美と誠についてはなるべく過去の辛い境遇については避けて互いの足跡を紹介する動画が流れた。


 大分盛ってる部分もあり、神代は名前の通り今現在こうしてあるのは神の代理役として先祖代々から定まっていた宿命なのだと大袈裟なナレーションが入り、りゅう君についても同様にはるか昔からこうなることが運命づけられていたのだなどと、ドラマチックにナレーションが入った。


 神代もりゅう君もかなり本気でそれを信じ込んでしまうという有様だった。


 ちなみに巨大スクリーンから流れる音声は宇宙連合の標準語だったが、各端末では自動的にその近くで見ている人に合わせてその人の母国語が流れており、音声字幕も同様に自動的に出力された。


 ゲート世界では異国間でも音声による会話は全てその国の母国語として変換されて会話出来ていたが、さすがに三つの異なる宇宙、しかも宇宙連盟とは最近接触したばかりなのでさすがのホールケーキセンターにあるげんしょのひとの最高のシステムといえどもすぐにはそこまで対応出来なかった。しかしそれも近いうちに対応されることだろう。


 その後神代やりゅう君はともかく龍美や誠まで幼い頃の映像記録が出てきて、会場は大いに盛り上がった。


「よくこんな映像が出てきたなぁ」(龍美)

「ホントですね、こんな映像どこで撮ったんでしょう」(誠)


 そこにはまだ少女の面影が残っているしろおとめ団達が映っていた。恐らく防犯カメラか監視カメラか何かの機械の光学センサーカメラだと推測できるが、しろおとめ団達が映っていた。


 るきやニアはまだ幼く、恵子と温子は何か食べ物のようなものを引っ張り合っていた。


 その後は恐らく海賊稼業としてあまり良くない生業をしている時と思われる映像が流れており、さすがに音声はカットされていたが、それでも何かお宝を手に入れたらしい様子で全員満面の笑みを浮かべていた。


 さらに続いてかなりオンボロで乗るのにかなりの勇気が要りそうな航宙艦の前で全員誇らしげな顔で整列している姿が出てきた。時折機関室などの映像も流れそこに機関長の拓美と副機関長の誠の姿があった。


 そんな映像を見て、しろおとめ団達は全員ボロ泣きしていて、そんな彼女達を見て周りの人達もホロリと涙を流していた。この場にいるほとんどの人がしろおとめ団達の境遇や生い立ちを知っているだけに彼女達の心境が良く分かるのであった。


 それとは対照的なのがりゅう君で、恐らく全宇宙初公開となる生誕の儀の模様が映し出された。

 ピギィーッ!っと元気よく鳴きながら大きな卵から孵った時の様子が映し出され、りゅう君は「恥ずかしいでゴザル」とイケメンでイカツイ巨大な顔を真っ赤にさせながら言い、それを一緒に横で見ていた龍美は「きゃぁ!なんて可愛いのかしら!」と大喜びだった。


 その後も小さいりゅう君がコロコロと転がって遊んでいる姿や、重力制御で飛ぶので羽ばたく必要はないのに小さな羽をパタパタと振りながら飛んでいる愛らしい姿を見て、龍美だけでなく他の多くの宇宙人達も一様に可愛い可愛いと癒されているようだった。


 小型の龍人族の何名かはこれはぬいぐるみにしたらかなり売れそうだと思った程だった。


 龍美はかなりメロメロで、りゅう君は別の意味で恥ずかしさのあまりメロメロになっていたが、龍美はりゅう君の耳元でこんなに可愛いのなら私沢山子供が欲しいわと小声でつぶやいたものだから、りゅう君はさらにメロメロになった。


 同様の流れで神代の幼児期姿が出てきて、今でも結構なイケメンの神代は幼児期もかなりの可愛らしさで、七五三祝いと思われる映像で出てくる着物姿や背景に映る建物などからやはり神代家は古くから名家だったことが分かった。


 しかし厳格な家という雰囲気はなく、さらに時が進んで幼少期の頃の神代が恐らくゲートシーカーの冒険記録と思われる大きな本を抱えて嬉しそうにしている様子や手作りのゲートシーカーの恰好をして探検ごっこをしている様子などが映し出されて、今度は神代が若干赤面し、誠は龍美と同様に可愛い幼少期の神代を見て喜んだ。


 この様子はちょうど昼の料理を全て作り終えて厨房で一休みしていた美衣と良美も頭上空間に投影されたスクリーンで見ており、タイミング良くしろおとめ団達の昔の映像もしっかり見ることが出来たので良美は嗚咽を漏らす程泣いており、美衣もホロリと涙を流しながら優しく背中をさすっていた。


 冴内自家製ハチミツとミルク(といっても動物達の世話をして採取しているのは量産型花子達なのだが)を温めてホットハニーミルクを作って良美と一緒に飲んで心を静めると、美衣は良美に「二人のためにも最高のウェディングケーキを作ろう!」と檄を飛ばし、良美も涙目から一気に闘志あふれる料理人、というよりパティシエの目になって「はい師匠!」と力強く頷いた。


 それを見た周りのパティシエ達も闘志の炎に燃えるパティシエの目になった。どういう目なのかは分からないがともかく意気込みだけは伝わった。


 野外会場のステージ上では親類縁者や友人知人代表などが次々と壇上に現れて結婚披露宴ではお約束のお祝いの言葉が告げられていった。


 恵子と温子は壇上でもどつき漫才を繰り広げる有様で、元子は「だっぺ」とか「ガハハ!」とか素が出てしまわないようにカチンコチンのセリフを言ってたがニアから普通でしゃべる方がいいニャ!と言われていつもの元気の良い元子の口調に戻った。


 さらに神代の大親友でもある力堂が出てきて、これまで誰よりもゲート世界への憧れと探求心を抱いてきたにも関わらずゲートに入ることのできなかった神代に対して万感の想いがこみあげて途中声を詰まらす一幕もあり、横で見ていた矢吹が手代木に小声で「ダンナの涙初めて見た」と驚きの表情で話し手代木や良野も頷いたが、吉田はそっけなく「あいつは情にもろいから意外によく泣くぞ」と言った。


 りゅう君側からもオジサンが登場し、りゅうはかなりマイペースな子だったが、これまで感情をあらわにして怒ったりしたところを見たことがなく、単調で辛い仕事も一切不平や文句を言わずしっかりとやり続けてきたと褒めた。そして冴内から名前をもらったことで一気に成長したと誇らしげに語ったのだが、オジサンは自分の話で徐々にこみあげてきてしまいオイオイ泣き始める始末だった。


 それを見た何人かの宇宙人達が血相を変えて飛んできて、オジサンの涙を飲み物のグラスや空になったボトルなど、とにかく涙を集められる入れ物をもって確保した。キッチンからも大鍋を持ってゲートにすっ飛んでいく者達もいた。


 龍の涙はとんでもなく価値があるらしく、病気や延命などに良く効くと言われているからである。

 ちなみにクリスタル星人の何人かは滝のように落ちてくる涙を直接飲んでいて、クリスタル女王から後でこっぴどく叱られた。


 その後も次々と様々な関係者達がスピーチをし、夕方近くになっていよいよお待ちかねの特大ウェディングケーキの出番となった。


 10メートル近いセンタータワーケーキにそれを取り巻くサテライトタワーケーキが並ぶ姿は遠目からでは円錐形状となっており、生クリームであしらえた彫刻がエングレービングのように美しく、純白の芸術作品としてそのまま美術館に永久展示しても良い程の美しさだった。


 その壮観な姿は浮遊ドローンで様々な角度で撮影されて、立体映像として空間スクリーンにも投影され、見る者全てを魅了した。


 そして良く見るとセンタータワーケーキには龍美と誠の顔がまるで女神のように彫刻されており、それを取り囲むサテライトタワーケーキにはしろおとめ団達の顔が彫刻されているのが分かった。


 またしてもそれを見た龍美と誠としろおとめ団達は涙を流して喜んだ。何人かの宇宙人が龍美の涙を手に入れたがったがさすがに今度は差し控えた。

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