表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
360/460

360:結婚式

 明けて翌日、冴内の夢の中に別の宇宙がやってくることもリビングに新たなゲートが出現することもなく、無事神代の結婚式に全員で参加することが出来た。


 結婚式場が富士山麓ゲート研修センターということで、世界各国から大勢の人達がやってきた。当然各国のゲート機関局長達やトップクラスのゲートシーカー達、そして政府高官や経済界の重鎮、さらに宇宙連合や宇宙連盟の要人までやってきて、加えて報道関係各社も入り混じり大変な盛況ぶりだった。


 そんな中一際目立っていたのが、新郎新婦・・・ではなく、気品漂う白装束に身を包んだしろおとめ団と礼服に身を包んだ冴内以外の冴内ファミリー達だった。


 普通にいるだけでもこの世のものとは思えない美しさにも関わらず、とても品のよい上質な礼服に身を包んでいるものだから、新郎新婦には申し訳ないがどうしてもそちらに目がいってしまうのだった。


 それはしろおとめ団達も同様で、そもそも皆目鼻立ちが整った美しい容姿であるのに加え、全員がお揃いの美しい白装束に身を包んで凛とした佇まいでいるので、こちらも冴内以外の冴内ファミリー同様に目を奪われてしまうのだった。


 神代も結構なイケメンで日本を代表する局長という身分相応のオーラもあるのだが、いかんせんこうした飛び抜けた容姿の存在がいるとなれば、一歩譲る形になるのであった。


 対する新婦の元副機関長だったしろおとめ・(まこと)はそれこそ誠に美しい花嫁に仕上がっており、本人の要望で純白の和服姿での登場だった。


 さすがにこれは皆目が釘付けになる程のもので、あちこちからため息が聞こえてきた。


 遠目からでもカチンコチンの氷漬けになってる神代の様子が見て取れたが、それでも新婦の誠が目の前に立った途端神代も男を見せて立ち直った。


 純和式の結婚式は世界各国だけでなく宇宙各国からも大変好評で、和式にして大正解だった。


 しろおとめ団達も全員大感激して涙を流し、とりわけしろおとめ・温子(あつこ)は号泣と嗚咽がとまらず、しろおとめ・恵子(けいこ)に何度もドヤされ小突かれていたが、そんな恵子も涙が止まらなかった。


 巨大な龍になったしろおとめ・龍美(たつみ)はさすがにこの場に参加することは出来なかったが、この様子は立体映像で富士山麓ゲート奥深くにある山の頂の駐在所内でりゅう君と一緒に見ていた。


「しろおとめのお姉ちゃん達よかったな、アタイもすごく嬉しい」と、美衣も涙を流していた。

「ボクもここがとっても温かくなって嬉しい」

「ウン、皆とっても幸せそう」

 同じく初も良子も胸に手を当てて温かい涙を流していた。

 三人ともとても大事なものを積み重ねていた。


 純和式の結婚式であるのと日本を代表するゲート局長という身分であるのと地球人類史上冴内に続く二人目の宇宙人との結婚式ということで、しっかりと形式と格式を重んじて進行したのが幸いし、涙腺崩壊の元になる親類縁者友人知人との至近距離でのお涙頂戴のふれ合いもなく、神代はなんとか最後までしっかりと男を通して見せた。


 冴内も神代に余計な気を使わせないよういつも以上に目立たぬよう控えめに冴えないいつもの冴内であり続けた。


 その後は親類縁者と世界各国のゲート局長や政府高官と報道各社を交えた形式的な結婚報告会が開かれ、大々的な結婚披露宴パーティーは後日みんなの星のホールケーキセンター前の大型広場にて宇宙を跨いで盛大に行われることになっていた。


 神代も含めてゲートに入れない人物については、冴内の範囲ごと瞬間移動能力で全員連れて行くと発表し、神代含め多くの一般人は初めてゲートの世界、それも別の宇宙の星へと赴くことが出来るということで大興奮大感激して喜んだ。


 ちなみに神代の新婚旅行は当然おとめ星観光で、しろおとめ団達も大はりきりで大自然の絶景スポットを案内すると意気込み、美衣一番弟子の料理人しろおとめ・良美(よしみ)は絶品料理と精のつく料理で沢山子供が出来るように腕を振るうぞと意気込んだ。


 こうしてまずは1日目の神代としろおとめ・(まこと)の結婚式を冴内達は無事に見届けることが出来た。


 冴内達はしろおとめ団達と一緒におとめ観光ホテルに行き、翌日のりゅう君としろおとめ・龍美(たつみ)の婚姻の儀に備えた。

 その夜はしろおとめ団達と一緒に食事をし、色んな思い出話をして楽しいひと時を過ごした。


 一夜明けて翌日の昼過ぎに冴内はしろおとめ団達と一緒に瞬間移動で龍人族の星にある牙龍山山頂へと移動した。


 時差のため牙龍山山頂はまだ夜明け前で、山々が連なるその光景だけでもとても荘厳な雰囲気が漂っていた。


 出席しているのは冴内達を除いて全て龍人族しかおらず、巨大龍の長老達が数頭と小型龍の長老達と従者の龍達が多くいた。小型龍の方は特別な装束に身を包んでおり、いかにもといった雰囲気だった。


 やがて大きな銅鑼(ドラ)のような音が轟き渡り、空から二頭の大きな龍がクルクルと螺旋を描きながら牙龍山山頂の石畳に舞い降りてきた。


 その時丁度タイミングよく日の出が出てきて、黄金に光り輝くりゅう君と純白に光り輝くしろおとめ・龍美(たつみ)をよりいっそう神々しい程に美しく煌めかせた。その姿はさすがの名誉会長グワァーオーゥゥですらも声を漏らす程だった。


 冴内達人間からすれば、この光景はもう結婚式というよりは何かの一大スペクタクルショーというべきもので、確かにこれはそう易々と行われるものでもなければ部外者が易々と見ることなど出来ないものだと実感した。


 恐らく二人でかなり練習したと思われる空中の舞いが繰り広げられ、眩しい朝日の光に照らされて美しく輝き見るものすべてを魅了した。


 大きな銅鑼(ドラ)の音に続いて、龍人達は静かにリズミカルに低い咆哮をあげた。その音に合わせるかのようにりゅう君と龍美は舞い続けたが、冴内達もしろおとめ団達もただただ声もなく見惚れ続けるばかりであった。


 ここで予想外な事が起きた。あまりの美しさにすっかり魅了され、無意識のうちに身体が共鳴してしまった冴内が虹色粒子を放出し始めたのだ。さらに美衣も続いて黄金色の粒子を放出し始めた。


 周りの龍人達も目を丸く見開いて冴内と美衣の姿を見たが、名誉会長のグワァーオーゥゥが何か閃いたようで低く一声発すると近くにいた小型の龍人が冴内達に空を指さして一緒に舞いをするように促した。


 冴内と美衣は頷いて空を飛び、りゅう君と龍美の周りをグルグルと円を描いて飛び回った。すると虹色の粒子と黄金の粒子も螺旋を描き、いよいよもって牙龍山山頂は息を呑む神秘的な光景となった。


 銅鑼(ドラ)の音と龍人族達の咆哮は勢いを増していき、まるでトランス状態になったかのように龍人達は咆哮を繰り返した。


 凄まじいまでの神々しさで、普通の人間のみならず普通の龍人ですら、その場にいたらその圧で気絶してしまう程のエナジーが漂っていた。


 りゅう君も龍美もトランス状態に入ったようで、美しい二頭の大きな龍は互いの身体をくねらせながらまるでドリルのように身をよじらせて小さな螺旋回転を描き、それこそまさに竜巻のようだった。


 この模様は特別に全宇宙に配信されており、それを見ていた全ての場所で人種を問わず見る者すべてが言葉を発することも出来ずただただその光景に目が釘付けになった。


 やがて完全に太陽が姿を現すとともに銅鑼の音も龍人族達の咆哮もりゅう君と龍美の二人の舞いもピークを迎え、最後に二頭の大きな龍のドラゴンブレスが大空に向かって耳が割れんばかりの咆哮と共に撃ち放たれた。


 こうして凄まじい閃光が空高く光り輝き婚姻の儀は終了した。


 牙龍山山頂は龍人達の祝福の大咆哮が鳴り響き、石畳も観客席も地響き振動する程だった。


 冴内達もしろおとめ団達も両手の拳を天に突き上げて大声をあげた。全宇宙で見ていた人々も大歓声をあげた。あちこちで興奮し過ぎた人達が失神したり興奮した人同士が衝突したりする事故が起こる程だった。


 事前に龍人族の婚姻の儀はとても特別で厳格なものであるということを繰り返し知らされていたが、これほどのものとは誰も想像出来なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ