359:平穏な1日
1週間ぶりに冴内ログハウスに戻って来た冴内達は早速いつもの定位置にキッチンや風呂やベッドを再配置して、すぐに昼食を作って食べて食後には花子が作ってくれた礼服に袖を通した。
「わっすごくピッタリ合う!しかもなんだかとても高級感が漂う仕上がりだね!最高だよ!」
「素敵よ洋」
「有難う優、皆もすっごく似合っているよ、なんだか皆すごい身分の人のようだ」
「アタイそれ知ってる!セレブっていうやつだ!」(美)
「せれぶ?」(初)
「そう!スッゴイお金持ちで片手でお酒をカッコ良く飲む大人のことだ!」(美)
「わぁカッコイイ!」(初)
合ってるんだか合ってないんだか良く分からない認識度合いだが、実際冴内はともかく、かなりレベルの高い最高級仕立ての礼服を着た優、美衣、良子は確実に異次元の美しさだった。初も可愛さレベルが相当引き上げられており、冴えない冴内ですら結構上品なお金持ちに見えなくもなかった。
「最高だよ花子!本当に有難う!」
「花子姉ちゃん有難う!アタイ最高に気に入った!」
「ボクもずっと着ていたいくらい気に入ったよ!ありがとう花子お姉ちゃん!」
「花子ちゃんこんな素敵な礼服を作ってくれて有難う!私もすっごく気に入ったよ!」
「有難う花子!洋とおそろいのこの礼服最高よ!皆にとっても自慢出来るわ!乙先輩やかぐやにも見せびらかしてやりたかったわね!」
「皆さん、有難う御座います!気に入ってくれて私もとっても嬉しいです!」
その後冴内達は久しぶりにまったりして過ごし、初はリビングで漢字練習帳を書き、冴内は大型ディスプレイにてここ1週間の様々な状況を各地に赴任しているさいごのひとロボ各機から報告を受けた。
良子が外に出て、隣接する超高性能光演算装置のある建屋に向かう時に、放牧していたモフモフの大きな4つ足動物の世話を一緒にしてくれているさいしょの民達に見つかり、冴内達が帰って来たのを知って大喜びして、一緒にご飯食べたいとせがまれたので夕食はさいしょの村にいってご馳走になることになった。
夕方5時頃に冴内達がさいしょの村の中央集会所となっている航宙艦とやぐらのある場所に行くと、既に段ボールを補強して装飾したテーブルが組まれていて、腰かけ絨毯や座布団も用意されていた。
主食のパンが沢山入ったカゴに大きな煮込み鍋や肉料理に魚料理が運ばれてきて。多くのさいしょの民達が自分達の分の料理も持ち運んできて宴の準備が着々と整いつつあった。
やがてやぐらから聞き慣れた何かの骨の笛の音が鳴り、航宙艦から何やら音楽が流れ始め宴が始まった。
皆大喜びで大いに食べて飲んで笑っておしゃべりしてまた食べて飲んで、とても大賑わいで楽しい大お食事会となった。
さいしょの民達のさらに小さな子供達が大勢冴内達の元に集まってきて冴内と優の膝の上に乗ってご飯を食べる順番待ちの列が出来、初や美衣や良子と一緒に仲良くおしゃべりしてご飯を食べる順番待ちの列が出来て大変な盛況ぶりで、さいしょの民達も冴内達も大喜びだった。
食後はもちろん恒例の盆踊り大会が始まり、全員疲れることもなく飽きることもなくひたすら楽しく踊り躍った。
それでもやはり冴内達もさいしょの民達も早寝早起きが習慣になっているので9時前には踊り終えて、冴内達はさいしょの民達と一緒にとても大きな共同風呂に入って汗を流し、10時前には全員就寝して辺りは虫の声や遠くの鳥の鳴き声だけがする静寂に包まれた。
これまで一週間程真っ暗闇の世界で過ごしてきたが、今日は沢山の素敵な住人達と一緒に楽しくて美味しい食事をタップリ食べて、その後は皆で楽しく踊り、さらに一緒にお風呂に入ってとても充実充足満足したおかげで冴内達は幸せ一杯の気持ちでグッスリと眠った。
明けて翌日、清々しい日の光が寝室を照らし、いつもの空腹アラームで皆スッキリと起床した。
そして皆1階のリビングへ向かったところ、冴内はある違和感に気が付いた。
「あっ!」
「どうした父ちゃん?」
「どうしたの?」(初)
「ゲートがない!真っ暗闇のゲートがなくなってる!」
「わっ!ホントだ!」
「ホントだ!」
「昨日は何か夢を見た?洋」
「いや、何も見なかったよ、何の連絡もない」
冴内と初は漆黒の闇のゲートがあった辺りの壁をさすってみたが、ただの単なる木製の壁だった。
「多分まだうまく出来てなかったから作り直してるんだきっと」(美)
「あ、なるほど、確かにそうかもしれないね」
「ボクもそう思う!」
「今度はまっくらじゃなくて明るくて、スライム以外に美味しいものくれるやつがいる場所だといいなぁ」(美)
「ボクもそっちの方がいい!」
冴内達は全く何の未練もなく、ないものはしょうがないと実にそっけなく淡白にスパッと切り替え、何事もなかったかのようにそれよりもっと重要な関心事の朝食のメニューに頭を切り替えた。
その代わりさいごのひとロボ4号機と音声ガイドロボ2号機はいつまでも壁の辺りをひたすら調査し分析し解析し続けていた。
その後、冴内と優と初は惑星グドゥルに行って復興支援活動を手伝った。グドゥルは普通に人間の姿のままでソティラ達と一緒に過ごしていた。初もそうだがグドゥルも他の宇宙達とは違って極端にシャイなこともなく、普通にその星の住人達と交流していた。
美衣は冴内ログハウスのキッチンに籠り結婚披露宴で作る料理のメニューをあれやこれやと考えていた。
良子はさいごのひとロボ4号機と音声ガイドロボ2号機と共にこの1週間の漆黒の闇のゲート内での様々な情報を解析していた。
花子達はさいしょの民達に今日も家畜の世話や農作業や編み物などの技術指導を行っていた。
お昼はそれぞれ別で食事をとることにして、冴内達は惑星グドゥルでソティラ達と一緒に大食堂で大勢の人達と楽しく食事をとり、美衣と良子はかなりの数の試作料理を二人で食べたが、途中から花子と一緒にいた何人かのさいしょの民達も誘って皆で楽しくおしゃべりしながら食べた。
食後冴内は例の白い消しゴム状の携帯端末で、夕食までには戻ると美衣に連絡した。
惑星グドゥルではちらほらと男性も見かけた。恐らく復興支援で来た宇宙連盟の関係者のようで、それらしい服装をしていた。
彼等は住人達とは打ち解けているようで、普通に会話したり協力し合って復興作業を行っていたが、ソティラからの話しでは最初はどう接したらよいのか分からず皆かなり遠慮というか怖がっていたとのことだった。しかし花子達が仲介役として間に入って大分活躍してくれたおかげで次第に打ち解けていったそうだ。
また、遠方にいる敵対勢力達にも宇宙連盟による復興支援の手が差し伸べられており、獣人など肉体強化している種族が多いため、冴内による虹色粒子によって健康を取り戻したおかげで、以前よりもさらに元気になって過ごしているとのことだった。
そして惑星グドゥル自体も同様に冴内の虹色粒子のおかげで豊かな自然環境を取り戻し、動植物も増えて食糧事情も問題なく改善されたおかげで、食べ物をめぐる争いもなくなった。
そうした事情を実際の現地で自分の目で見て確認した冴内は大いに安堵満足し、後は惑星グドゥルの住人達と宇宙連盟に安心して任せることにした。
その後夕方近くになり、大歓声の中冴内達はさいしょの星のログハウスへと瞬間移動で戻った。
リビングにあるダイニングテーブルを見ると、大量に作られた様々な料理が所狭しと並べられており、美衣から結婚披露宴パーティーで出すのでどの料理がオススメか覚えておいてくれと頼まれた。
ちなみに美衣と美衣を手伝っていた良子のお腹は妊婦の様にパンパンに膨れ上がっており、夕食は要らないようだった。
こうして、冴内達の平穏な1日は過ぎて行った。




