358:帰路
ゲート入り口から5千キロの地点で行き止まりとなり、他に通路もなく本当にそこが終点だったため、これ以上進む場所もないので冴内達は自分達の家へと引き返すことにした。
午前中に倒したスライムは再出現しないので、ノンストップの猛スピードで進み、さらに昨日の晩からまだ24時間経過していない場所と思われる地点ではスライムは出現しなかった。
そうして24時間以上経過した場所へと差し掛かってきた時に通常のスライムが出現したが、冴内達はそのまま減速せずに突っ切った。スライム達も冴内達が速すぎるのか、それとも自分達よりも遥かに強い存在と認識して怯えたのか、冴内達を攻撃してこなかった。
冴内達は午後の移動時間だけでかなりの距離を進み、このまま一晩頑張ればリビングに辿り着くところまで到達して今日の移動を終了した。
「このままだと予定よりも1日早く明日の昼ぐらいには家に到着するね」(冴内)
「やった!皆でりゅう君と神代のおっちゃんの結婚式に参加できるぞ!」(美)
「やったぁ!」(初)
「花子には私から電文を送っておこう」(最後ロボ)
「うん、お願いするね」
真っ暗闇の中で食べる最後の夕食はカツ丼とべったら漬けに似た漬け物と赤だしの味噌汁で具にはキノコが入っていた。
「あ~美味しぃ~・・・真っ暗闇の中で食べる夕食も今日で最後かぁ~。皆と一緒に探索出来て本当に良かったよ。自分ひとりだったらこんなに美味しい食事も出来なかったし、何よりひとりぼっちでずっと暗闇の中で過ごすなんて出来なかったかも」
「アタイも結構楽しかった!でもずっと真っ暗闇でスライムしかいなかったのは残念だ」(美)
「そうだね、でもきっとゲートがちゃんと完成したらまた違う風景になると思うよ」
「そうか、そしたらまた来よう!」(美)
「「「 さんせーい 」」」
美衣と良子は何杯もカツ丼をおかわりし、冴内と初はべったら漬けが気に入ったらしく、赤だしの味噌汁とべったら漬けだけで白米をおかわりした。
そうして真っ暗闇の中での最後の晩餐を終えて、お茶をすすりながら食休みをしていた。
「父ちゃん今日もお風呂に何か入れるのか?」(美)
「そうだね、明日の昼には家に着いちゃう距離にいるから、もう少し大目にミラクルミックスジュースを入れてみようか」
「でも結局今日はスライムを倒してないから、私達が強くなったのか分からないわよ?」(優)
「多分強くなってると思う。今日移動してみて思ったんだけど、さらに速く動けている気がしたんだ」
「あっそうね!言われてみれば確かにこれまでよりもかなり速く動けるようになったわ!」(優)
「アタイも!」(美)
「ボクも!」(初)
「私も!」(良)
「じゃあどうする父ちゃん?今日はどれくらい入れるんだ?コップ一杯分いれるのか?」(美)
「いや、そんなに入れたら倒せなくて家に帰れなくなっちゃうよ、りゅう君達の結婚式に間に合わなくなっちゃう」
「あっそうか、それはダメだ」(美)
結婚式に間に合う間に合わないどころの話しではなく、一家全滅して永久に結婚式などには参加出来なくなる可能性については1ミリも考えなかった。
「今日は大さじ二杯入れようかと思う・・・僕等がお風呂から上がった後で」
「アタイらがお風呂に入る前には入れないのか?」
「うん、そしたらきっと全員お風呂の中で眠っちゃうよ、下手したらおぼれて死んじゃうかも」
「そういえば、アタイ昨日お風呂に入ってからの記憶がない」
「ボクも・・・」(初)
「私も・・・」(良)
その後冴内とさいごのひとロボ4号機と音声ガイドロボ2号機から昨晩の入浴後の有様を説明されて、美衣達は納得して入浴後にミラクルミックスジュースを投入することに承諾した。
冴内達は通常のお風呂に入って疲れを癒し、入浴後に大さじ二杯のミラクルミックスジュースを入れて、スライム達がポチャポチャと風呂に入っていく姿を見ながらピーチスライムゼリーを少しだけ砕いて入れた普通の果物を使ったフルーツポンチを食べた。
おかげですっかり疲れもとれて、今日はちゃんと全員しっかり歯磨きをしてから就寝した。
明けて翌日7日目の朝。
真っ暗闇最終日の朝食を食べ、冴内達はゲート入り口へと向かった。
そして早速スライムが出現した。
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ミラクルスライム
生命力:100
特殊力:100
攻撃力:10
防御力:10
素早さ:10
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「あれっ?昨日のミラクルスライムと変わってない」(冴内)
「ホントだ!昨日はみらくるみっくちゅ・・・ミラクルミックスジュースを大さじ二杯入れたのに変わってない!」(美)
「もしかしたら、スライムさん達はこれ以上は強くなれないのかも!」(良)
「そうかもしれないわね」(優)
「なるほど、そうかもしれないね」(冴内)
「ボクやっつけてみる!」(初)
「気を付けてね初!」(冴内)
「ウン!」(初)
冴内達は各自時間差で二段攻撃を撃ち放ったところ、スライムは消滅した。
「わっ、あっけなく倒したぞ!」(美)
「ボクも!」(初)
「私も!」(良)
「私もよ!」(優)
「そうだね、これはそんなに力を込めなくても倒せるね。やっぱり僕等は強くなったんだよ」(冴内)
「やった!」(初)
「これだとお昼前には入り口まで余裕で着いちゃうから、いったんまた入り口と反対方向に戻って、ミラクルスライムがいなくなるまでミラクルスライムを倒してから入り口に向かおう」(冴内)
「「「 りょうか~い! 」」」
そうして冴内達は元来た方向にいったん戻って、ミラクルスライムがいなくなって通常のスライムが出現するまでミラクルスライムを倒してから、ゲート入り口まで向かった。
冴内達はミラクルスライムを各自一対一で難無く撃破していける程にまで強くなっており、疲労度もかなり低下して通常のサクランボを数回に一度食べればいい程までにスタミナも向上していた。さらに移動速度も向上したため、結局昼前にはゲート近くまで辿り着いてしまった。
「ミラクルスライム10匹以上倒したのにレベルアップしなかったね」(初)
「そうだね、もうこれ以上は僕等もレベルアップ出来ないのかもしれないね」(冴内)
その後も特に新たな事象は発生せず、冴内達はちょうど一週間の遠征探索を終了してリビングへと戻った。
「「「 ただいま~ 」」」
「皆さんお帰りなさい!皆さんが無事で良かったです!」(花)
「うん!ボク達元気だよ!」
「はい!お元気そうで嬉しいです!」(花)
「どう?そっちはこの1週間何かあった?」
「特に何もありませんでした、一応さいごのひとさんから送られてきた情報で、皆さんが日々探索を無事に進めていたことは、ゲート機関と宇宙連合と宇宙連盟の3か所に伝えていました。今日にも戻ってくることもお知らせ済です」
「それは良かった、ありがとう」
「どういたしまして」
「他には何かあった?」
「そうですね、小人さん達がたまに遊びに来て、食べ物をくれたり一緒に編み物を編んだりしました。冴内様達の冒険を見るのが楽しみだって言っていましたよ」
「そっかぁ~」(初)
「「「 アハハハ! 」」」
「ありがとう花子、お留守番ご苦労様、それじゃ早速グワァーオーゥゥさんと神代さんに報告しよう」
冴内は無事探索活動を終了して戻って来たことを報告し、それぞれの結婚式にはこの先突発的な事件が起きない限り当初の予定通り全員で出席することを伝えた。
また、さいごのひとロボ4号機と音声ガイドロボ2号機は今回の漆黒の闇ゲート内での冴内達の探索データを凄まじい情報処理速度で精査し、さいごのひとロボ4号機は情報分析を担当し、音声ガイドロボ2号機の方は広報担当として、地球と宇宙連合と宇宙連盟に対し今回の探索活動記録をデータ送信した。
もちろんさいしょの民達も楽しみにしているだろうから、さいしょの村にある航宙艦にもしっかりデータ送信しておいた。