356:一対一
さすがに今日はこれまでと同じ進撃速度とはいかず、お昼までに進めた距離は先日の3分の2程度といったところだった。
チェリースライムも残りわずかであと2回戦分くらいしか残っていなかった。
それでも冴内達は全くこれっぽっちも悲観することなく、いつも通り前向きに楽しんでいた。
お昼は冴内が大好物のラーメンで、今日は味噌ラーメンだった。味噌は第3農業地の人達からもらった大豆を使い、製法についてはさいしょの民達の手法を取り入れた美衣オリジナルの味噌だった。
「ホントはもっと熟成させてから使いたかったんだけど、宇宙ポケットの中に入れて持ってきたからまだまだ半分の旨味しか出てないんだ」(美)
「ズルッ!ズルルーッ!でも凄く美味しいよ美衣!ズルズルーッ!これまで食べた味噌ラーメンの中で一番美味しいよ!ズルルーッ!」(冴内)
「ズババーッ!ゴクン!ボクおかわり!」(初)
「えへへ、あいよ!」(美)
ラーメン以外にピーチスライムゼリーを砕いて混ぜ合わせたフレッシュサラダも用意したので、冴内達は蓄積した疲労を完全にリフレッシュした。
「チェリースライムがなくなったら、ピーチスライムゼリーを少しだけ食べればいいね」(冴内)
「うん!ピーチスライムゼリーがあればボクまだまだ戦える!」(初)
昼食を食べ終え、しっかり食休みをした冴内達は午後の進撃を開始した。
開始から間もなく各自1匹相当のスライムを倒したところでレベルアップした。
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冴内 洋
21歳男性
レベル:7⇒8
生命力:120⇒170
特殊力:120⇒170
攻撃力:7⇒8
防御力:7⇒8
素早さ:7⇒8
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「やった!あともう少しでミラクルスライムと同じ強さになる!」(美)
「ホントだ!やった!」(初)
「よし!皆その調子で頑張ろう!」(冴内)
「「「 おぉーっ! 」」」
レベルアップ後にミラクルスライムを倒したところ・・・
「なんかさらにラクになった気がする!」(美)
「ボクも!」(初)
「うん、明らかに大分ラクになったね!」(冴内)
「でもやっぱり2回倒さないとダメなのね」(優)
「そうだね、1回目はやっぱり生き返っちゃう」(良)「でもこれならいつものサクランボでも夕方までならなんとかなるかもね」(冴内)
冴内達はさらに午後の進撃を続けた。やはりこれまで程の距離は進めなかったがそれでもゲート入り口から4千キロの距離まで到達した。
♪ファァァ~~~ンッ
「あっ!またレベルアップしたぞ!」(美)
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冴内 洋
21歳男性
レベル:8⇒9
生命力:170⇒230
特殊力:170⇒230
攻撃力:8⇒9
防御力:8⇒9
素早さ:8⇒9
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「やった!これでミラクルスライムと同じ強さだ!」(美)
「やった!」(初)
「う~ん・・・どうする?ちょっと夕食が遅くなっちゃうけどもう少し試してみる?」(冴内)
「試してみたい!」(美)
「そうね、皆であと5匹倒せばいつも通り一人十匹倒すことになるわね」(優)
「あと5匹なら倒したい!」(初)
「賛成!」(良)
「よし、それじゃいつもと同じ距離に着くまでもう少し頑張ろう!」(冴内)
「「「 りょうかぁ~い! 」」」
そうして冴内達は少しだけ残業することにした。
ドガドガドガァーン!
と、これまで記載してこなかったが美衣、初、良子の3人の同時攻撃の轟音が鳴り響いた。
「あっ!スライムが生き返らないぞ!」(美)
「ホントだ!消えたままだ!」(初)
「ひょっとしてほんの少しだけ攻撃が当たる時間がずれてるから、生き返ってもすぐにまた死んじゃったのかも!」(良)
「こっちもよ!」(優)
「そうだね、これはもしかしたらもう一対一でも相手に出来るかもしれないね」(冴内)
「試してみよう!」(美)
早速次のミラクルスライムは美衣と冴内が各々一対一で戦ってみた。残りのメンバーは臨戦態勢で身構えた。
「行くぞ!二段ゴールデンチョップ!」
「僕も!二段レインボォー!!」
ドカドカァーンッ!
「やった!消えた!倒したぞ!」(美)
「うん!それなりに疲れるけどいけるね!」(冴内)
「ようし!ボクも!」(初)
「私も!」(良)
残り2匹のミラクルスライムも初と良子が一対一で挑み二段攻撃で難なく撃破した。
結局残業時間は1時間にも満たずに終了し、移動距離もいつもと同じ程度まで進むことが出来た。
夕食は新鮮な魚介をふんだんに使ったパエリアとソパ・デ・アホを作って食べた。ソパ・デ・アホはスペイン中央部にあるカスティーリャ地方のスープでソパはスープ、アホとはニンニクを意味する。
「あ~美味しいィ~パエリアもこのスープもすごく美味しい、身体がホカホカしてくるよ」(冴内)
「サクランボやゼリーもいいけど、疲れた身体には栄養タップリの食事で回復するのがいいのだ」(美)
「うん、美衣お姉ちゃんの作る料理を食べたらボクいつも元気になる!」(初)
「えへへ!」(美)
いつも通り美衣は初にほっぺたをくっつけた。
「冴内 洋、花子からの連絡で、どうやら君達の礼服が完成したようだぞ」(最後ロボ)
「えっホント?それは良かった!」
「特に向こうでは変わったことはないようだが、予定通り戻って来れそうか聞いてきている」
「そうだね、今の所こっちも特に問題ないから明日の探索を終えたら予定通り戻ると花子に伝えておいてくれる?」
「了解した」
「父ちゃん今日のお風呂はどうするんだ?」(美)
「そうだなぁ・・・もうほんの少しだけミラクルミックスジュースの量を増やしてみようか?」
「どれくらい入れるの?」(初)
「そうだなぁ・・・そうだ、このスプーンに入る量を入れるのはどうだろう?」
「うん!それがいいかも!」(初)
「「「 さんせ~い! 」」」
こうして食後、冴内はまたしてもミラクルミックスジュースを風呂の湯に投入した。昨日はコヒースプーン一杯分だったが、今日は大さじ一杯分も投入した。
冴内達の風呂は銭湯の風呂並みに大きいので、微々たる量ではあるが、それでも昨日の倍はありそうな量だった。もちろんさいごのひとロボ4号機と音声ガイドロボ2号機は今回も黙っていた。
「明日進める所まで進んだら引き返すのか?父ちゃん」(美)
「うん、そうだよ。このまま何事もなければ神代さんやりゅう君の結婚式に皆で参加できるね」
「やった!ボク結婚式見るの初めてだから楽しみ!」(初)
「私も!」(良子)
「私も龍人族の結婚式を見るのは初めてだから楽しみ!」(優)
「それにしても5日も進んでるのにまだ何も起きないんだよね、やっぱりまだちゃんとゲートが出来ていないのかな」
「うちゅうさんから何も返事がこないもんね」(初)
「そうなんだよ、あれから全く何の連絡も来てないんだよね、向こうの宇宙は僕等のいる宇宙とは大分違うみたいで話をするだけでもかなり難しいって言ってたからやっぱりそんなにすぐにはゲートが出来ないんだと思う」
「今いる場所はまだ作りかけのゲートっていうことなのかしら?」(優)
「う~ん・・・作りかけのゲートってこういう真っ暗でスライムがいるようなものなの?」
「私の知る限りではそういうのはない」(最後ロボ)
「うん、私もこういうのは知らないよ」(良)
「やはり別の宇宙ということで、私達のものとは異なるということでしょうか?」(音ロボ)
「やっぱりそうなんだ、でも僕等に出来ることと言えばこうして探索することぐらいだから、出来る限り探索し続けて別の宇宙さんからの連絡を待つとしよう」
「「「 りょうか~い 」」」
その後冴内達は入浴したが、昨日以上に入浴中に寝オチしそうになり、かろうじて冴内と優だけが全員を引き上げたところで意識が途切れて熟睡した。
そしてさいごのひとロボ4号機と音声ガイドロボ2号機が冴内達の身体を拭いてベッドに寝かしつけるという有様だった・・・