348:本格探索準備
夕食を食べ終え、食休み後に入浴し、入浴後に冷やしたスライムゼリーを食べてまったりとくつろいだ後に冴内達は就寝した。
余ったスライムゼリー3個は花子小隊が吸収し、何かあったときの為に花子達も漆黒の闇のゲートに入れるようにしておいた。ちなみに花子達にも腹部に多用途万能タンクが内臓されており、スライムゼリーはそこに吸収されているようだった。
翌朝、いつも通り朝早く起きた冴内達は朝食をとり、午前6時前には暗闇の中に入って行った。もちろん弁当も、というより作りたてのちゃんとした料理を宇宙ポケットに格納している。
昨日と同様に全員横に並んで真っ直ぐ前方に進んで行った。昨日のうちに9匹程倒していた優と良子はすぐにレベル2になった。やはり二人とも冴内と初のレベル2の時と全く同じステータスだった。
昨日美衣は初とペアを組んだのでスライムを倒した数が少なかったので今日は冴内が初と組んで、美衣は単独でスライムを退治して経験値を稼いでいった。冴内は初に経験値稼ぎをさせてあげた。
5時間程スライムを退治しながら進み、ゲートからの距離およそ450キロ地点まで来たところで昼食をとることにした。
昼食はさいしょの民達の主食のナンに似たパンとそれに挟んで食べる各種具材である。キーマカレーのようなものもあって、手軽に色んなものを味わえる上に生ごみはほとんど出なかった。
食後も進み続け途中3時のおやつに黒豆モチを食べてさらに進み、午後4時半程に達したあたりでその日の探索を終えてリビングに戻ることにした。
帰りはスライムは出ないので本気の冴内達としてはかなり控えめではあるがそれでも音速を超えるスピードを出して十数分でリビングに到着した。
「うーん・・・こりゃやっぱり泊りがけで探索しないとダメかなぁ・・・」
「日帰りだと早々に行き詰っちゃうわね」(優)
「うん、ワープ出来ないのが一番不便だね」
「明日から泊りがけするのか?父ちゃん」(美)
「そうだねぇ・・・そうしないと結局またスライム倒して同じ場所で家に戻る繰り返しになって、そこから先に進めないよね」
「それはつまらん、飽きる」(美)
「そうだね、宇宙崩壊の危機だというのに毎日スライムを倒すだけじゃ何の解決にもならないよね。よし、それじゃ明日から泊りがけで暗闇を探索するとしようか」
「「「 賛成~ 」」」
「ところで食料って今どれくらいあるの?」
「結局これまで大量に手に入れた食料がまだタップリ残っているのよね」(優)
「巨大恐竜の肉とか相当大きかったもんね」
「むげんに出てくる食料箱もあるぞ」(美)
「そうだね、僕等しかいないから箱にある凄い食べ物の食料も十分使えるよね」
「お米も納豆もたくさんもらったよ!」(初)
「うん、第3農業地の人達に感謝だね」
「食料は十分だけど、色々と他に用意するものがあると思う!」(良)
「全くその通りだね、ゴミとトイレの問題をどうにかしないと」
「私、ごみ処理分解装置を作る!トイレから出る排出物も一緒に分子レベルにまで分解して有効利用出来る物質に還元する装置!」(良)
「わっそれはいいね!是非ともお願いするよ」
「うん!まかせて!」
「じゃあこれまでみたいにキッチンとベッドとお風呂を持っていけばいいわね」(優)
「そういえばあのお風呂、どういう仕組みになってるのかさっぱり分からないけどお湯はいつも綺麗だし、身体を洗うのにお湯をいくらすくっても全然お湯が減らないよね。暗闇の中でもちゃんと使えるのかな?」
「先に試してみた方がいいわね」(優)
「そうだね、キッチンも含めていったんちゃんと使えるか試してみよう」
冴内達はもう一度漆黒の闇のゲートの中に入って行き、キッチンとお風呂を設置したところどちらも全く問題なく使用できるようだった。
「へぇーどっちもちゃんと使えるんだね、キッチンはともかくお風呂はどう考えても科学的じゃない不思議な仕組みのものだから、こっちの宇宙じゃ使えないかと思った」
「お風呂には新しく洗い場というかシャワー室みたいなのがいると思う。暗闇の中の地面は硬くて土じゃないみたいだから、身体を洗った後の排水を真っ黒い地面の上に流したままにしておいたら、ずっと排水が残ったままになると思う」(良)
「ホントだ、これじゃずっとビショビショに濡れたまま残っちゃうね」
「ごみ処理装置と一緒に何か役に立ちそうなものを考えて作っておくね」(良)
「うん、ありがとう良子」
とりあえず快適な衣食住が確保出来そうだということで一安心して冴内達はまたリビングに戻り、美衣と優は夕食の支度を開始し、良子は超高性能光演算装置のある建屋に行ってごみ処理装置やその他設備の設計を開始し、冴内はさいごのひとロボ4号機と音声ガイドロボ2号機と一緒に他に必要なものの検討を行った。ちなみに初はアシスタントとして良子について行った。
冴内は冴えまくっているさいごのひとロボ4号機の提案に何度もさすがと連呼し、冴内自身はほとんど何一つ冴え渡るアイディアは浮かばなかった。
さいごのひとロボ4号機は冴内の瞬間移動能力を活用して豊富な鉱石資源がある様々な場所からチョップ採掘と採取の依頼と、同じように木材も多く伐採してくるように依頼した。
それらの資材を使って暗闇の中でも様々な物を製造出来るようにするとのことだった。鉱石資源は機械を作るのに利用し、木材はトイレットペーパーなどの生活用品を作るのに使うとのことだった。
その話を受けて音声ガイドロボ2号機の方からは様々な植物の採取を依頼した。
冴内は自分で行くよりもさいごのひとロボ4号機と音声ガイドロボ2号機を一緒に連れて行く方が探す手間が省けるので、一緒に瞬間移動してどんどん2体が指示する素材を調達して宇宙ポケットの中に格納していった。
ちなみにかつて宇宙空間で大量に採取した隕石はドリームホープ号とコッペパン号の貨物室に大量にあるが、それらは復興支援などに有効に活用してもらうためそのままにしていた。
そうして夕食前の一仕事を終えた冴内と、短時間で大体の設計を完了させた良子と初も戻って来た。
良子が短時間で高性能な装置の設計を完了出来たのは超高性能光演算装置のAIのサポートを十分に活かしたからである。そのまま設計データをベルトコンベヤー式製造作業機械に転送したので、後は量産型花子達が夜通しでベルトコンベヤーに素材を置くだけで明日の朝までにはごみ処理装置や排水機能付き洗い場が完成するだろう。他にもさいごのひとロボ4号機と音声ガイドロボ2号機も何やらあれこれ製作するようだった。
夕食の支度が整い、冴内達は食事をしながらディナーミーティングを行った。
「9日後には神代さんの結婚式があるし、10日後にはりゅう君の婚姻の儀があるから、それを考えて行動しないとね」
「結婚式に参加なされるのでしたら、皆さんの礼服を用意しておきますね!」(花子)
「あっそうか!ありがとう花子、助かるよ!」
「どういたしまして!素敵なお召し物になるよう頑張ります!」
「花子お姉ちゃんまかせた!」(美)
「花子お姉ちゃんおねがいします!」(美)
「花子ちゃんありがとう!」(良)
「お願いするわね花子」(優)
「はい!お任せください!」
「明日からの行程についてだが、余裕を持って6日間で行けるところまで行って3日で引き返す行程を提案する。君達の移動速度であれば2日で戻れると思うが念のため1日多く見積もった」(最後ロボ)
「そうだね、僕は意義なしだけど皆はどう?」
「「「 意義なぁ~し 」」」
こうして冴内達は、まるで遠足かピクニックにでも行くかのような気軽さで明日からの暗闇宿泊探索に挑むのであった。
普通の人ならば1週間以上も得体の知れない暗闇の中で、しかも確実に危険なモンスターがいる場所で寝泊りするという境遇には耐えきれないであろう。