346:初レベル2
初が初めて暗闇でスライムを倒して、4匹目でスライムゼリーを手に入れたので冴内と初はリビングに戻って来た。
早速さいごのひとロボ4号機と音声ガイドロボ2号機は手のひらをスライムゼリーに押し付けてゼリーを吸引した。
ちなみにこれまで特に詳細を描写してこなかったが、当然2体のロボットは共に口の造形はヒトの顔を模しているだけで声に合わせて口が動くこともないし、ましてや口で物を食べることもなかった。この点は花子も同じだった。
「ううむ・・・良く分からないがゼラチン質と様々なビタミンに近い成分があるところまでは検出出来た」
「そうですね、あと多糖類でしょうか?」
さいごのひとロボ4号機と音声ガイドロボ2号機は冴内達のように「うんめぇ~」と言うことはなく、淡々と成分分析をしながら吸収した。
「そのゼリーって二人の身体の中のどこに入っていくの?」(冴内)
「お腹の部分にタンクがあるんですよ」(音ロボ)
「その通りだ。私の場合はさらに簡易食料やいくつかの薬物を精製することが出来る。これは1号機から3号機には備わっていない機能だ」
「そうなんだ」
「君達には宇宙ポケットがあるから必要ないと思うが、仮に他の人間や動物と一緒に行動した時に食料や水が尽きた場合このタンクから栄養補給食を与えることが出来る」
「へー!それは便利だね」
「よし、一応全部吸収して格納することが出来た。それでは私達もゲートを通過出来るようになったか確認してみよう」
「そうですね」(音ロボ)
さいごのひとロボ4号機と音声ガイドロボ2号機は漆黒の闇のゲートの通過を試みたところ、2体とも無事ゲートを通過することが出来た。
「なるほど、推測は正しかったようだ」
「そうですね!これで私達も冴内様達とご一緒出来ますね!良かった!」
その後全員分のお弁当とヘルメットの用意も完了し、もう一度冴内達は全員で漆黒の闇のゲートの中に入っていった。
「やった!念願のヘルメットを被ったぞ!」(美)
「カッコイイ!」(初)
「初もカッコイイよ!」(美)
「うん!」
昭和世代からは君等は一体家族戦隊何レンジャーなんだ?と突っ込まれそうな姿だった。
冴内達は横一列に並び、最初と同様に向かって右から優、冴内、良子、美衣&初で真っ直ぐ前進していった。もちろん各々の前方にはドローンが先行している。
「あら、私のところにスライムがいるわ」(優)
「結構強くて速いから気を付けて」(冴内)
「お母さん気を付けて!」(初)
「分かったわ!」
優はあらかじめ準備していたライトサーベルの思念スイッチを入れた。ちなみに全員サクランボも何粒か携帯している。
「行くわよ!」
プニョン!
「えっ!?弾かれた?ウソ!キャッ!」
スライムの体当たりを食らった優は尻もちをついた。しかしライトサーベルで受け止めたので内出血で身体にアザが出来る程の打撲は回避した。
「そうはいかないわよ!」
バチュンッ!
スライムは再度優に体当たりをしてきたが、それに合わせてライトサーベルで突き刺したのでスライムは消滅した。
「確かに強いわね、それに速いわ。でも真っ直ぐ突進してくるだけだから対処出来るわね」
その後冴内達は3時間程前進した。距離はゲートのある壁から200キロ以上も移動した場所にいた。
スライムを発見したらそこで戦闘を行うので停止するが、そんなに沢山いるわけではなかったので、倒した後は大体時速100キロ前後で移動していたのである。
「そろそろお昼にしよう」(冴内)
「「「 了解~ 」」」
冴内達は中央に集まってお弁当を食べることにした。ドローンは4機あるのでそれが集まって輪になると結構明るく、弁当を食べるにはまったく不自由しなかった。しかしそれでも辺り一面は漆黒の闇で、床も真っ黒でほとんど光を反射しないので不思議な光景だった。
「なんかみんな宙に浮かんでるみたいだ」(美)
「ホントだ!」(初)
「でも皆がいて本当に良かったよ。一人でポツンとお弁当を食べてたとしたらすごく寂しい気持ちになったと思うけど、皆と一緒だと逆になんだか楽しい気分になるよ」
「ウフフそうね!」(優)
「うん!何だかワクワクする!」(良)
「ゲートシーカーってこういうお仕事なの?」(初)
「そうだね、とてもゲートシーカーっぽいよ」
「やった!ボクもゲートシーカーだ!」(初)
「アタイも!」(美)
そうして家族賑やかにお弁当を食べた。ちなみにお弁当はかなり豪華でボリューム満点の幕の内弁当だった。
「そのうちまたキッチンとベッドとお風呂を宇宙ポケットに入れて探検するのか?父ちゃん」(美)
「そうだね、ワープが出来ないとなると、この先そうなるかもしれないね」
「凄い!お父ちゃんの冒険映画みたいだ!すごく面白そう!」(初)
「うん、だけど危険もいっぱいあるから気を付けないとね」
「うん!」(初)
食後はさらに3時間程進み距離は400キロ地点まで到達した。この間初がレベルアップしてレベル2になった。
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冴内 初
45億歳男性
レベル:2
生命力:10
特殊力:10
攻撃力:2
防御力:2
素早さ:2
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各数値は冴内がレベル2になったときと全く同じだった。
ちなみに年齢の数値がなかなかに素敵なことになっているが恐らく億年単位から下は切り捨てられており、多分次の1億年が経過するまで年齢の数値は変わらないことだろう。
他のメンバーは優が9匹、良子が8匹、美衣が3匹倒した。美衣と初のコンビは最初に初が6匹倒したので美衣と初めのライン上には9匹いたことになる。
冴内は6匹倒したがこれも初がスライムゼリーを取るためにあらかじめスライムを4匹倒したためで、恐らく良子のエリアで1匹と冴内のエリアで3匹倒したためだと思われた。
このことから大体50キロに1匹程度のスライムがいることが分かった。最初の頃冴内は一人で結構ランダムに移動したので遭遇確率は低かったが、複数人によるローラー作戦のおかげで大分正確にスライムの分布を確認することが出来た。
「今日はもう戻ろうか、夕食の支度の時間もあるからね」(冴内)
「「「 りょうかーい! 」」」
誰一人としてあともう少しでレベルアップするからまだ進みたいと言う者はいなかった。
レベルアップに興味がないわけではないが、それよりも冴内と一緒に過ごすことが一番重要なのだった。
ちなみに帰る前に3時のおやつとして黒豆モチを食べた。スライムゼリーは合計8個ゲットしたがこれは食べずに家に戻って冷やして入浴後に食べることにした。
帰りは案の定スライムは全く出現しなかったので1時間程度でゲート前まで到着した。
「フルパワーで飛んでないけど、初が言ってた通り思ったよりも速く飛べていなかった気がする」(美)
「私も!」(良)
「そうね、それに洋と同じで私もワープの魔法が発動しなかったわ」(優)
「あっ、やっぱりダメだったんだね」
リビングに戻ったところ、オリジナル花子が戻ってきており、既に量産型花子達から大体の事情を聞いていたので、冴内達が漆黒の闇のゲートから出てきても驚くことはなかった。
「皆さんおかえりなさい、お疲れ様でした!」
「あっ花子おかえり!そっちはどう?」
「はい、大分落ち着いてきました。生活環境も以前に比べてとっても良くなりましたよ!」
「それは良かった。グドゥルにいる人達も元気になったかい?」
「はい!皆さんとても元気になられました!」
「グドゥルお姉ちゃんも元気?」
「はい!グドゥル様も元気ですよ!」
「わぁい!」
その後も花子と互いの状況について情報交換を行い、花子は今日から冴内ログハウスに常駐して冴内達の留守を守ることにした。こうして久しぶりに冴内ファミリーが全員勢揃いしたのであった。