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345:全員突入

 その日の夜も冴内達はちゃんと寝室で寝て、さいごのひとロボ4号機と音声ガイドロボ2号機はリビングにある漆黒の闇のゲートを一晩中監視し続けた。


 冴内ですら油断するとアザが出来る程の危険なモンスターがいる得体の知れない不気味なものを一晩中監視し続けてくれるというのは実に有難い存在だった。


 結局その晩も何も起こらず、冴内が夢を見ることもなく朝が来た。


 朝食の支度の前に冴内はお弁当を作って欲しいと頼んだ。すぐに快諾の返事をもらったが、優は少し寂しそうな顔をした。やはり冴内と一緒にいたいのだ。


 それでもちゃんとボリューム満点で美味しそうなお弁当を作ってくれた。宇宙ポケットの中に格納するのでほぼ永久に作りたての温かい状態である。


 さらにおやつとして豆モチも沢山格納し、万が一の場合を考慮して簡易キッチンも格納した。食材は既に宇宙ポケットにかなりタップリ様々な物が入ったままなので、冴内一人だけなら下手したら数年分はもつかも知れなかった。


 そして昨日頼んでいたドローンも既に完成しており、全部で4機のドローンを横並びさせてローラー作戦を実行することが可能になった。これで昨日よりもさらに効率よく時間短縮して探索することが可能になった。


 朝食をしっかりとって、食休みも十分とって、午前6時頃に冴内は漆黒の闇のゲートの中に入って行った。


 漆黒の闇の中に入っていく冴内の後姿を見て、優は思わず後を追いかけてゲートに入ろうとしてしまった・・・すると。


「あっ!母ちゃん!」(美)

「わっ!」(初)

「えっ!?」(良)

「何ッ!」(最後ロボ)

「まぁ!」(音ロボ)


 なんと、優は漆黒の闇のゲートに弾かれることなく暗闇の中に消えていった。大いなる愛の力であろうか。


「よし!アタイも!」

「ボクも!」

「私も」


 優に続いて美衣達も次々とゲートの中に突入し、誰一人弾かれることなく全員暗闇の中に入って行った。もちろん美衣達にも冴内を愛する気持ちはあるのだが、どうやら大いなる愛の力とは別の理由のようだった。


 そんな姿を見たさいごのひとロボ4号機と音声ガイドロボ2号機も漆黒の闇のゲートの中へと突入を試みたがこちらは弾かれてしまった。


「コレは一体どういうことでしょうか?」

「分からん・・・ゲート自体が変化したのか、冴内 優達が変化したのか・・・」

「昨晩私達が監視し続けた様子ではゲートに異常は感じられませんでした」

「うむ、我々では感知出来ない可能性も否定できないが、それでも私と君とで様々なセンサーを用いて監視したところでは何も変化はなかった」

「では優様や美衣様達に何か変化が起きたということでしょうか」

「冴内以外全員ゲートの中には入れずこちら側の宇宙で過ごしていたが、たった一つだけ昨晩大きくこれまでと異なることをしている」

「スライムゼリーを食べたことですね」

「その通りだ。別の宇宙にあるものを体内に取り込んだのだ。これは極めて特別な要因として考えて良いと思う」

「そうですね。まさしくその通りだと思います」

「まず間違いなくゲートの中で、私の簡易AIも同じ結論に達するだろう。冴内 洋にスライムゼリーの確保を要求するはずだ。彼がスライムゼリーを持ち帰ってきたら成分分析を実施し、我々もスライムゼリーを取り込んでみることにしよう」

「そうですね!」


 一方暗闇の中の冴内達。


『・・・というのが私の推論だ』

「なるほど、スライムゼリーか・・・」

「こっちの宇宙の物を体内に取り込んだことで、ここの宇宙の構成や法則を身体が理解したってことかもしれないんだね!」(良)

『その通りだ』

「すごいなスライムゼリー!美味しいだけでなくこっちの宇宙と仲良くなれるのか!」(美)

「あと食べると元気になるんだって!」(初)

「そっかぁ」(美)

「「「アハハハハ!」」」(美&初&良)

「でも良かった。これからはこっちの宇宙でも洋と一緒にいられるのね」(優)


 優は暗闇で冴内と再開してからずっと冴内にくっついて腕を組んでいた。ちなみに再開してすぐに冴内に抱き着いて熱烈なキス攻撃をした。


「皆が来てくれて良かったよ、さいごのひとさんがいてくれるおかげで大分和らいでいたけど、それでもこんな真っ暗闇に僕一人だけっていうのは寂しいっていうか心細かったんだよね」

「ボクこんなまっくらにひとりぼっちだったら泣いちゃうかも」

「アタイもヤだ」

「私も百万年くらい一人で寝ていたけどもう二度とあんなのはイヤ」


「うん。それに皆が来てくれたからもっと効率よくあちこち調べられて助かるよ」

「アタイもゲートシーカーみたいだ!」

「ボクも!」


 冴内は早速ローラー作戦を説明し、全員横に並んだ。向かって右から優、冴内、良子、美衣&初で、各々の進行方向には増産したドローンが宙に浮かんでいた。


 いくらドローンの照明が強いといっても辺りは漆黒の闇であり、結構互いの距離も離れているのでドローンの灯り以外はほとんど見えず、その後ろにかすかに人影が見える程度であったが、それでも家族がそこにいるというだけでもひとりぼっちの寂しさや心細さはかなり払拭された。


 大声で話せば会話できるが、一番端にいる者同士が会話するには遠すぎるし大声を出し続けるのも大変なので、試しにいつもの白い消しゴム状の携帯端末を取り出して、暗闇の中同士でなら通話出来ないか試してみたがダメだった。


 しかし冴内のタクティカルベストの背中にある大きなポケットに入っている端末にインストールされているさいごのひと簡易AIが閃き、通信プロトコルを光通信に変えればうまくいくと提案した。


 早速冴内達は集合して、いったんリビングへと引き返した。そして良子とさいごのひとロボ4号機は全員分のヘルメットの製作に取り掛かり、優と美衣は全員分のお弁当の製作に取り掛かり、冴内と初はさいごのひとロボ4号機と音声ガイドロボ2号機のためのスライムゼリー確保のためもう一度暗闇の中へと入って行った。


 ドローン4機を横に並べて一斉に並列で移動するためスライム発見効率がはかどり、すぐに最初のスライムを発見した。


 冴内はヘルメットですぐに場所が分かったが、初の方も発見したドローンが他のドローンとは別の光で点滅して警告音を鳴らしたのですぐに分かった。


「ボクもスライムと闘ってみたい!」

「分かった、気を付けてね」

「うん!」


 初は全速力でスライムのいる方へと向かったが、初は自分が思っているほどに速度が出ていないことを肌で感じ取ったようだった。


「あれっ?ボク今結構速く飛んでるつもりなのにいつもよりもすごく遅い!」

「あっやっぱりそうなんだ。なんか僕もいつもよりも力が出ない気がしていたんだ。一人で寂しいからじゃなかったんだ」


 寂しいからという理由でいつもよりも力が出ないというなかなかに人間味の溢れるセリフを言う冴内ではあるが、それでも冴内自身はこの真っ暗闇の世界の中でも音速を超える速度で飛行することは出来るのだった。


「あっみつけた!スライム!ようし食らえ!ふらいんぐ・くろす・ちょっぷ!」


 冴内は間近で直に初のフライング・クロス・チョップを見た。なかなか格好良いので冴内も今度試して見てみようと思った。


ボヨォ~ンッ!

「わっ!」

 弾かれた初を見事に後ろで構えていた冴内が受け止めた。冴内にしては実に冴えていて、最初からこうなることが分かっているかのようだった。


「初、大丈夫!?」

「うん、ちょっと手が痛いけど大丈夫!あのスライム強いね!」

「うん、あっ!でも半分以上は弱まってるよ!もう一発で多分倒せると思う!」

「分かった!ボク頑張る!いくぞ!ふらいんぐ・くろす・ちょっぷ!」


 スライムはちょうど初に体当たりをしてこようとしていたので相打ちのようになったが、初の攻撃力が若干上回っていたようでスライムは消滅した。


「やった!でも手が痛いしちょっと疲れたかも」

「初、はいサクランボ、これ食べて」

「うん、あ~ん」

「チョップヒール!」

「あ~・・・気持ちいい~・・・モグモグゴクン、あっ元気になったよ!」

「どう?まだいけるかい?」

「うん!」


 初はその後もスライムを見つけて倒し、4匹目を倒したところでスライムゼリーが手に入ったので、リビングへと戻ることにした。

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