343:高性能ヘルメット
昨日からの累計で10匹のスライムを倒してレベル2になった冴内はリビングへと戻った。帰りはゲートまで一直線に飛んで戻ったが、スライムは全く現れなかった。
「ただいま~」
「おかえり洋!もう少しでお昼ご飯出来るから待ってね!」
「うん、なんだかすごくお腹が空いちゃったよ」
「えっそうなの?分かったわ!それなら追加でステーキも焼くわね!」
「やった!」
「あっおかえり!お父さん」
「わっそのヘルメット何!?すごくカッコイイ!」
「うん、赤外線センサーとかバイオセンサーとか色々センサーを内蔵したヘルメットを作ってみたの」
「すごいね!早速午後に試してみてもいいかい?」
「うん!使ってみて!」
「そうだ、それとお願いがあるんだけど、これと同じドローンをあと3っつくらい作って欲しいんだ」
「うん分かった!」
さいごのひとロボ4号機はドローン及び冴内のタクティカルベストの背中の大型ポケットに入っている端末のデータを無線で受信した。ちなみに音声ガイドロボ2号機も並列で同一データを受信した。
昼食の準備が済んだので、冴内達はダイニングテーブルに座り食事をおこなった。昼は冴内の好物のラーメンに加えて分厚いステーキも一緒に並べられていた。
「うわぁ最高!僕の大好物ばかり!ご馳走だ!」
「ウフフ、沢山食べてね!」
「うん!いただきまぁす!」
「「いただきまーす!」」(優&良)
優のウフフは冴内のウフフと違ってまったくキモイことはなかった。
冴内は大盛りラーメンを3杯もおかわりして、分厚いステーキもペロリと平らげ、食後のフルーツも全て完食した。
「いっぱい探索したのね」
「うん、昨日倒したのと合わせてスライムを10匹倒したよ。そしたらさ、レベルアップしたんだ。しかもレベルがたったの2で思わず笑っちゃったよ!」
「えっ!10匹も倒したの?そしてレベル2?」
「わぁその映像見たい!」
「うん、一緒に見てみようか」
冴内達はリビングにあるソファに腰かけてちょうどその先にある大型ディスプレイで、冴内がスライムを倒す映像を見ることにした。
「画質に補正を加えて分かりやすいよう、明るさを上げてみた」(最後ロボ)
「あっホントだ、少し明るくなって前よりも見やすいね」
「あっスライムがいる・・・ってえっ?今の斬撃でも倒れないの!?」
「そうなんだよ、まぁでも半分くらいの力加減なんだけどね」
「あっ、綺麗!お父さんのこの動きすごく綺麗!」
「洋の十八番なのよね!すごく綺麗!」
「ウッフッフ・・・さいごのひとにも同じこと言われたよ、ちょっと照れるね」
やはり冴内のウフフは少しキモかった。
スライムが現われるまでの間の映像はスキップしてスライムとの戦闘シーンだけが再生された。
「このスライム結構速いんじゃない?」
「うん、速いと思う。それにお父さんのチョップ一発でも消えないから防御力も強いと思う」
そして10匹目を倒した時の映像が再生された。
「あっ!洋の前に何か表示されたわ!」
「あと、何か落ちてるよ!」
「あっ忘れてた、ゲートの前に置いたままだった」
冴内はドローンを両手に持ってゲートを通過する時にいったん漆黒の闇のゲートのすぐ前にスライムゼリーを置いたままだったのを思い出して、上半身だけ漆黒の闇のゲートの中に入れてスライムゼリーを回収した。
優と良子は大型ディスプレイに映し出された冴内のステータス画面と、ドロップアイテムの説明文を見て笑っていた。
「アハハハ!ホントだ!洋レベル2だって!」
「アハハハ!この数字の値本当なの?お父さん!」
「でしょ?僕もかなり笑っちゃったよ」
「あっ!それがスライムゼリーね?」
「わぁとても美味しそう!」
「冷やしておいて美衣達が帰ってきてからお風呂に入った後で皆で食べよう」
「そうね!」
「うん!楽しみ!」
説明文には【食べると元気になる】とまでは書いていたが、どこにも美味しいとは書いてはいない、果たして味の方は大丈夫なのだろうか・・・
昼食後十分食休みをとってから冴内は良子が製作した各種センサー付きヘルメットを被って漆黒の闇のゲートの中に入った。
残念ながら漆黒の闇が一変して明るく見渡せるようになることはなかったが、それとは別に状況を一変させる程劇的に改善したことがあった。
「すごい!目の前にマップが表示されてる!」
冴内の目には視界を妨げないように透過光でマップが表示されていた。まさに上から見下ろしたマップになっていて細長い部屋にいることが分かり、自分が動くと自分を中心にマップが動き、回れ右をしてもしっかり追随し、自分が今どこにいるのかが把握出来るようになった。
『ドローンと連動しているから、スライムの位置も表示されるようだ』
「えっホント?それはすごい!」
『とはいえどうもスライムはいないようだ・・・』
「そういえば、試練の門の時はほぼ1日経過しないと出現しなかったけど、ここも一定時間が経過しないと出てこないのかも」
『フム・・・』
「じゃあちょっと飛ばしてまっすぐ先を進んでみようか」
『了解した』
冴内は時速100キロから徐々に速度をあげていき、時速500キロを超え千キロを超えて音速に達した。
10分も経たずに午前中に到達した地点を超えたところで警告音が鳴り冴内は急停止した。ドローンも同様に急停止した。内部には精密機械があるから急停止性能には限界があるかと思ったが冴内と同じように急停止した。重力制御機能によってそれを可能にしていると思われるが相当な高性能である。
「あっ!ヘルメットのマップにもスライムが映ってる!これは便利だなぁ!あっ!別の場所にもう1匹別のスライムがいる!これはいいぞ!」
冴内はダッシュでスライムに向かって行き、勢いそのままに割と強めの斬撃を加えた。
「ヤァーッ!」
ザンッ!・・・パァンッ!
「あっ!やった!一撃だ!一撃で倒した!おっと!ゼリーをドロップしたぞ!あっどうしよう・・・リュックかなんか持ってくるんだった・・・うーん、どうしようかな・・・」
『マーカー機能を使ってみてはどうだ』
「えっ、そんな機能があるの?」
『音声で命令してみたまえ』
「えっと・・・ここをマークして・・・あっ、点滅した!うわーこれは便利だね!すごいなぁ良子は、このヘルメット最高だよ。それじゃあこのゼリーはこのまま置いといて、次のスライムのところに行こう」
そうして冴内は次のスライムも一撃で倒した。今度はゼリーは出なかった。
その後3時間程スライム狩りをしてこれまでの累計で30匹のスライムを倒したところで、ファーンという音がして冴内はレベルアップした。
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冴内 洋
21歳男性
レベル:2⇒3
生命力:10⇒20
特殊力:10⇒20
攻撃力:2⇒3
防御力:2⇒3
素早さ:2⇒3
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「やった!レベルアップした!って相変らずショボッ!アハハハハ!」
「さて、ドロップしたゼリーは4個か・・・」
『ドロップ率は2割程だな』
「面倒だけど、いったんリビングに戻って何かゼリーを入れる袋を持ってこよう」
冴内は最初からマッハを超える猛スピードで一直線にゲートに向かった。さすがに水平の姿勢での飛行だった。しかもヘルメットがあるおかげで風切り音も軽減されるし、空気抵抗で苦しくなることもなかった。
『ところで冴内 洋』
「どうしたの?」
『今更の質問で申し訳ないのだが確認したいことがある』
「うん、何?」
『ここでは君の瞬間移動は使えないのか?』
「あっ・・・忘れてた・・・」
『そっそうか・・・いや、実は既に試していて出来ないから飛行移動しているのかと思ったのだ』
「・・・」
明るい場所で見たら恐らく冴内は顔を赤くしていたことだろう。
すまん冴内、実は書いてる作者がすっかり忘れていた。