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331:力堂達の進捗状況

 良野達は夕方5時過ぎに夕食を食べ、6時を過ぎたあたりから延々3時間近く全く飽きもせずひたすら盆踊りを踊り、夜の9時前にはお開きになった。

 さいしょの民達は全員早寝早起きなので、9時近くなると皆眠くなるのだ。


 良野と吉田はこの後9時から明日の試練の門のためのミーティングがあるので戻らざるを得ず、木下も一応今回の交流は調査研究の一環という名目で来ているので報告レポートをまとめなければならないので、まさに断腸の想いで泣く泣く各自日本へと戻っていった。恐らく明日は各自相当テンションが低いことだろう。


 しかしさいしょの民達から「カミサマまた来てね!」と次々に手を繋いで声をかけられたので、さいしょの民ロスに打ちひしがれて絶望することなく、良野達は「明日からまた私は頑張れる!私達はまだ戦える!」と妙なテンションで明日への希望と闘志を燃やすのであった。


 そうして良野達はゲートを通過してそれぞれの戻るべき場所へと帰還していった。


 木下はさいしょの星に最初に入植してきたさいしょの民と命名された小人達に関する報告書を書いていたが、気が付くと画面には「小人さん可愛い大好き」という文字しか書かれていないことに気が付くということを何度も繰り返していた。


 良野と吉田は明日の試練の門対策ミーティングに参加したが、何を尋ねても「うん」とか「あぁ」というカラ返事で完全に上の空の心ここにあらずといった状態で、力堂はヤレヤレといった表情で、矢吹は「ダメだこりゃ」と言った。


 力堂達は現在試練の門の「非常に難しい」に挑んでいる最中で、前回の報告では全20ステージ中11ステージ目を攻略しているとのことだったが、それから3週間程経過した現在は14ステージまで攻略完了しており、2日前からは節目の15ステージの攻略を開始し始めていた。

 この難易度では5ステージごとにボス部屋となっており、既に昨日威力偵察を行い、攻略対象の戦力分析や地形やトラップ等の状況視察を行った。

 午前7時から11時までの4時間、その後休憩と状況分析と昼食をはさんで午後2時から午後6時までの4時間の2回威力偵察戦闘を行い情報収集を行った。

 翌日は休日として心身をリフレッシュすることにしたということで、良野と吉田は心の充電をしにやってきたというわけである。ただリフレッシュし過ぎて腑抜けた状態になって帰ってきたが・・・


「どうします?明日の攻略は延期しますか?」

「2人がこんなフヌケた状態じゃ戦闘にならんぜ大将」

「うーむ・・・そうだなぁ・・・とりあえず明日の朝集合してから決めさせてくれ。朝もこんな状態なら明日は中止して、オレと矢吹と手代木の3人で14ステージに行って素材集めをしよう」

「そっすね」

「了解です」

「よし、それじゃ今日は解散!」

「・・・」

「ホラ、2人とも解散だ解散!」(矢)

「えっ?あぁ・・・そうか」(吉)

「えっ?あらっ、もう終わり、分かったわ」(良)

「ヤレヤレ、こりゃ明日はダメかね・・・」(矢)


 明けて翌朝5時半、奈良ゲート研修センター食堂には予想外にかなりやる気満々の良野と吉田の姿があった。


 矢吹はヒソヒソ声で手代木に「昨日はアレの日だったのか?」と聞くと「いえ、違うと思います」と答えた。彼等は一応これでも一流のプロ集団なので当然バイタルチェックは重要な職務の一環であり、良野も吉田も事前に生理日は申告してその日は休日もしくは軽い素材採取や後に続く挑戦者達への指導などを行っていた。


「どうやら、冴内達のところに行って、小人達に会って来たらしい」

「小人ッスか?」

「あっ、それって確か冴内君がなんとかっていう衛星に絶滅寸前の知的生命体を発見して保護したとかいう話しですか?」

「そうだ、昨日木下から最新映像だけが先に公開された」

「どれどれ・・・」

「わっ!可愛いですね!」

「うわっホントだ!これホンモノか?まるでゲームのCGみたいだな!」

「うわぁ・・・これは確かに癒されますねぇ」

「なるほどこりゃ2人がフヌケになるわけだ」


「おい!そろそろ行くぞ!」(吉)

「行くわよ!」(良)

「まぁこれなら大丈夫だろう。よし!行くぞ!」


 こうして力堂達は2日連続休みになることなく、試練の門「非常に難しい」第15ステージのボス部屋攻略へと向かっていった。


 第15ステージのボスはカエル将軍率いるカエル軍団で前衛にはやたら筋骨隆々のボクサーのようなカエル戦士がおり、後衛には毒を吹きかけてくるカエルがいた。とりわけ後衛の毒ガエルが厄介で、地球上の生物で最強といわれるほどの猛毒を持っているコロンビアの太平洋側に分布するモウドクフキヤガエルに似た黄色のカエルであった。


 また、地形についても厄介で全体的に湿原地帯のようになっており、足を取られる泥沼や逆に足を滑らせるコケが生えた岩などがあり、それらが自然のトラップとなっていた。


 しかし手代木の分析スキルの能力が上がったことでそれらのトラップ位置は把握しており、さらに現代の先端機器を利用してアクションカメラやドローンで地形を撮影し3Dのバーチャル空間を作成して、何度もシミュレーションをしているので、敵の巧みな誘導にさえ気を付ければそれらにはまることはなかった。


 とはいえ戦闘は実に厄介で、単純に肉弾戦闘力に勝るカエル戦士に手間取っていると後方から絶妙なタイミングで毒液が飛んでくる、そして倒しきれなかった前衛のカエル戦士が下がるとカエル将軍によって回復されるという実に厳しいものだった。

 そこでまずは毒ガエルを何とかしなければならないということで戦術が考えこまれた。


 こちらにはチートに近いが美衣が入っていた卵の殻の盾と、しろおとめ団の龍美(たつみ)からもらった重力制御マントがある。ちなみに重力制御マントは今力堂達が挑んでいる難易度の次にある「最高に難しい」の第7ステージの報酬アイテムである。


 力堂はタンク役として盾を構え、ひたすら前衛のカエル戦士のパンチとキックを受けて耐えた。力堂は第5ステージの報酬アイテムで入手したブーツによりしっかり踏ん張れば後ずさりすることはない。


 そして力堂が持つ盾の表面には重力制御マントが被せてあり、毒ガエルが毒を吹きかけてくると身体を小さくして盾の内側に身を隠し重力制御マントを被せた盾で毒を跳ね返して、接近していたカエル戦士に浴びせ返した。

 力堂の横や背後に回り込んで攻撃しようとする相手には力堂の背中を守る矢吹が迎撃した。


 毒ガエルの猛毒はカエル戦士にも有効で、手代木が大声で「向かって右!毒有効!HP半減!」と言うと良野の火属性魔法と吉田の連射ボウガン火炎弾頭の矢で集中砲火を浴びせ、膝をついて弱ったところに冴内を除いて現在地球人類最強の攻撃力を誇る矢吹のパンチでとどめを刺した。


 この戦術で確実にカエル戦士を倒していき、前衛に穴が出来たところで防御力が弱く接近戦も苦手な毒ガエルを矢吹がヒットアンドアウェイで各個撃破していった。


 矢吹も第5ステージの報酬アイテムで入手したブーツにより俊敏さが増大しており、カエル戦士よりも動きが鈍い毒ガエルは矢吹の相手ではなかった。しかも毒ガエルは毒を吹きかける時に両方のほっぺたをプクッと膨らませるので、ボクシングのジャブを避けるよりも遥かに簡単だった。


 こうしてカエル将軍の取り巻きを撃破して確実に戦力を削いでいくことで、形勢は力堂達に大いに傾いていった。


 ちなみにここまで実に3時間もかかっており、力堂達が容易く攻略しているかのような記載内容ではあるが実際には力堂達も必死に戦っていた。

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