33:最終日の昼食
早乙女達一行が洞窟から出てきて1時間後、手代木達は戻ってきた。
携帯通話はオンだったので、残された全員は手代木達の会話を聞いており、安否を心配することはなかったが、それでも会話の発言の一言一言の重大さが凄まじくただただ押し黙って聞いていた。
戻ってくるなり手代木は「すいません、ちょっと時間を下さい。この先のスケジュールは大幅に変更になります。本部にどう連絡するかも考えなければなりません。とにかく・・・とにかく少し時間を下さい。それまで皆さん各自の判断で行動願います。ホント・・・こんな指示ですいません」
「気にするな!お前はお前のやるべきことをやれ!」
「ありがとうございます、なるべく早く考えをまとめますが今はとにかく、とにかく考える時間を下さい」
早乙女さんはすかさず手代木に水を差しだした。手代木は一気にゴクゴクと飲み干すと、フーーーーッと深く息を吐き「ありがとう」と言って一人小屋に向かっていった。
その後早乙女さんは梶山君に声をかけ、一緒に鉱石を選別して巨大タンスに搬入し始めた。矢吹さんと鈴森さんはそれぞれゲート村に状況報告開始。
自分だけ何をどうするべきかさっぱり分からず、経験の無さと己の無力さを思い知らされるが、何かしていないとどうにかなりそうなので薪き割りしてかまどに火をつけ湯を沸かした。
湯が沸いたあたりで早乙女さんがやってきて「お湯ありがとう、お茶をいれますね!」といって後を引き継いでくれた。矢吹さん、鈴森さん、梶山君の分は自分が配って周り、手代木さんの分は早乙女さんが小屋に持っていった。
時刻は11時になろうというところで、早乙女さんが昼食を作るということで「冴内君手伝って!」と言われたので、やることがなくて困っていた自分は二つ返事で了解した。
早乙女さんの指示通りに動き、大きな失敗もなくご飯を炊き上げることが出来た。早乙女さんはまだ残っている根菜、キノコ、そしてトカゲ肉を入れた味噌汁を作った。料理の匂いを嗅いでいるとそれまでの緊張感をかなり和らげてくれた。
12時近くになって間もなく料理が出来上がるというタイミングで手代木さんがやってきて「お待たせしました、もう大丈夫です」と皆に報告した。
「とりあえず飯食ってからにしようや!」と矢吹さんが言うと「そうですね、食事にしましょう」と手代木さんが言ったので、皆いつもの手代木さんに戻ったようだと安心して、出来上がった料理を小屋に運んでいった。
これが今回の探索任務の最後の昼食になった。
昼食後、手代木さんから、まず本部への報告は済ませており、この後調査チームがすぐにやってくるとのこと。ルビー(仮)はそのままここに置いておき、それ以外の鉱石は持ち帰ってくれとのこと。
梶山君が選別した重要鉱石は研修センターの研究職員がゲート村に待機しているので、全て渡してくれと指示。現地に残るのは手代木さんと鈴森さんのみで、それ以外のメンバーはゲート村に帰還し、その後は自由行動とするが3日間はすぐにゲート村に戻れる範囲での行動をしれくれとのこと。
また今回の件の専用サイトを立ち上げ、随時そのサイトで情報更新するので、サイトが出来たら携帯で知らせるのでそれを確認して欲しいとのこと。自由にコメント出来るようにするので、些細な事でもいいので思いついたことがあれば是非書き込んでくれとお願いされた。
最後に今回このメンバーで探索活動が出来たことを全員に感謝し、世界的大発見なので今後の調査結果は大いに期待して欲しいと述べた。
そして必ずやそう遠くない日に、盛大に打ち上げをやりましょうといって締めくくった。
その言葉でようやく全員満面の笑みを取り戻し元気になった。