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329:可愛いは絶対完全正義

 湖に漁に行っていた者達や森に狩りや植物採取に行っていた者達もさいしょの村に戻ってきて、なにやら「おかし」とかいう美味しい間食の食べ物を配っていると聞きつけ、彼等も列に加わって並んだ。


 あちこちで座ってお菓子を食べている仲間達を見ると、一目で相当美味しい食べ物らしいことが分かり、後から並び始めた者達も期待に胸を高まらせた。


 神様冴内様の仲間の3人の女の神様が「おかし」を配っているというのを聞いていたが、近づいてみるととても優しそうで3人ともすごく嬉しそうにニコニコ笑顔だったので、さいしょの民達は安心して彼等も嬉しい気持ちになった。

 3人の女神達はとても気前のいいことに、それぞれ別のおかしを全部くれるようだった。


 手渡ししておかしををくれる時に一人一人名前を聞いてちゃんと名前を呼んでくれたので、彼等は神様に名前を呼んでもらってとても喜んだ。


 ちなみに良野達は事前に冴内からさいしょの民達は宇宙連合の標準語を話すと聞いており、ゲートシーカー専用端末に宇宙連合標準語の同時通訳アプリを入れていた。

 当然挨拶や簡単な日常会話は短時間で凄まじいまでの集中力をフル稼働させて学習練習済みである。


 名前を聞かれて自分の名前を言う時に女神達は何か黒くて細長くて平べったい何かのキカイを彼等の顔にかざしていた。キカイをかざしたときに何か小さなカシャッっていう音がしたが何も起きなかったので何も気にならなかった。


 良野達は一応冴内に撮影許可を取ってはいたが、場所と状況によっては完全に個人情報保護の観点ではアウトな行為であった。

 しかし彼女達は上位のゲートシーカーと機関の正式研究職員という肩書を盾に、絶滅危惧の知的生命体の個体確認作業というなかなかに悪辣な理由付けで自らの行為を正当化していたのであった。


 そんな行為の真意など全く意に介さないさいしょの民達は、お菓子をもらって早速近くの空きスペースに座り込んで、既にお菓子を食べている仲間に教わってフタを開けてお菓子を食べ始めた。


 既に情報が出回っており、おすすめの食べ方は何かのとても小さい動物の形をした物の次に小さな細い木の枝のような物を食べて最後に丸い形の物を食べるのが一番美味しい食べ方の順番だと教えてもらった。また、小さい小枝のような食べ物は2種類あるようで、仲間と分け合って2種類とも食べると良いということも教えてもらった。


「最初はこの動物の絵が描いてあるやつだ」

「どれどれ・・・」

「わっ!すごく小さい動物だ!これ食べるの?」

「あれっこの動物硬いよ、死んでるのかな?」

「これ木で作ったお人形さんなんじゃない?」

「食べられる木なのかな?」

「お人形さんを食べるの?」

「わっ!箱の中にいっぱいお人形さんが入ってる」

「やっぱりこのお人形さんを食べるんだ」

「え~なんだか可哀想な気がするなぁ・・・」

「う~ん・・・えいっ!パクッ!」

「モグモグ・・・」

「「「・・・」」」

「どう?」

「あんまぁ~い!おいしぃ~い!」

「わぁー!ボクも食べるー!」

「わたしもー!」

「「パクッ!モグモグ・・・」」

「あんまぁ~い!おいしぃ~い!」


「まだ残ってるけど、次のやつを食べてみよう!」

「次はこの小さくて細い木の枝みたいなやつだね」

「今度も木を食べるの?神様は木が好きなのかな」

「美味しいなら木でもいいよね」

「どれどれ・・・ポリッ!わっ硬いね」

「ボリボリ・・・ゴクン」

「わぁー!しょっぱぁ~い!おいしぃ~い!」

「ボリボリゴクン、おいしぃ~い!」

「これ木じゃないね!なんかイモと同じ味がする気がする!」

「そうだね!これは木じゃなくてイモだ!イモをふかして練り上げて干して焼いたんだきっと!」

「すごいなぁカミサマは。カミサマはミィちゃんと同じでみんな料理が上手なんだね!」

「料理が上手な人のことはコックって言うんだって!」

「そっかぁ」

「そうだ、こっちの緑色のとそっちの赤い色のをはんぶんこして食べるといいって言ってたね」

「そうだった!じゃあこれどうぞ~!」

「ありがとう、ボクのもどうぞ~」

「「えへへへ」」

「「ボリボリ・・・ゴクン」」

「「わぁー!こっちもおいしぃ~い!」」

「なんかこっちは他の野菜の味がする!」

「こっちは固めたお乳の味がする!」

「「どっちもおいしぃ~い!!」」


「よし!これもまだ残ってるけど最後のまぁるいのを食べてみよう」

「あっこれも甘い良い匂いがする~」

「ほんとだぁ~」

「これは小さい粉焼きみたいだね、硬いからほとんど水気がなくなるくらい焼いたのかな、長持ちの食べ物なのかも」

「サクッ、ボリボリ・・・ゴクン」

「わぁ!あんまぁ~い!おいしぃ~い!」

「あんまぁ~い!」

「おいしぃ~い!」

「そうか!甘いのとしょっぱいのを交互に食べると美味しいってことなんだ!」

「そっかぁ!」

「そっかぁ!」


 さいしょの民達は毎度お馴染みのワァワァキャァキャァ言って大喜びした。


 そして彼等は女神達にこの食べ物はどれくらい長持ちするのかを聞いて、開封後は出来るだけ早く食べたほうが美味しく食べられるがそれでもこの気候ならば1日は美味しく食べれると教えてもらったので、全部は食べずに明日の分として大事に取っておくことにした。


 そんな健気で可愛い天使のような小人達を見て、良野達は自分達の稼ぎの全てを注いで彼女達が死ぬまで、いや死後も財産全てを投入して彼等にお菓子を与え続けようかと本気で考える程、彼等を愛おしく感じるのであった。

 彼女達にとって、可愛いは絶対完全正義のようだった。これで明日も頑張れる!これで明日も戦える!と彼女達は心の底から癒しのパワーをチャージした気分だった。


 さらに追い打ちをかけて、さいしょの民達が良野達に「女神様達にお返ししたいから、一緒に夕食を食べて行ってくれませんか?」と言われ、周りのさいしょの民達からも「お願い、お願い」とせがまれて、またしても嬉しさの余り感激死しそうになるのを必死でこらえ、いや、半分程死にかけながらも笑顔でOKの返事をすると、さいしょの民達は大喜びでワァワァキャァキャァ言って良野達に抱き着いてスリスリとすり寄せて来たので、とうとう吉野は堪えきれずに昇天して立ったまま気絶した。その顔はまさに我が人生に一片の悔いなしといった感じで、満足しきって人生を生き切った者の顔だった。

 木下の「吉田さん!まだですよ!まだ一緒に夕食を食べるまでは終わってはだめですよ!」という声でなんとか覚醒したが、その声がなければ人類初の感激死という死因が誕生するところだった。


 夕食まではまだ時間があるので、良野達は大量に余った段ボールをパタパタと折りたたんでいたところ、さいしょの民達は物凄く興味深く見ていて、自分達にも手伝わせて欲しいとお願いして手伝った。

 大きな箱がパタパタと折りたたむとペッタンコになるのでさいしょの民達は最初はとても面白がったが、やがて彼等の頭脳が理解すると真面目な顔でとても感心した様子になり学習した。

 また何人かの者達は軽くたたいたり、乗ってみたりして木ではない軽い板が箱の形にすると丈夫になることに驚き感心した。


 さいしょの民達が段ボールに強い感心を持っているのが分かったので、良野が「段ボール欲しい?」と尋ねると皆目をキラキラ輝かせて「欲しい!」と応えたので「全部あげる」と言ったらさいしょの民達は大喜びして良野達に抱き着いてきたので、いよいよ今度は3人全員感激死するところだった。

 この調子でいったら、夕食を食べ終わる頃には本当に全員感激満足死するのではないだろうか。


 ともあれ、さいしょの民達は大喜びで段ボールを各々家に持ち帰っていった。

 ある者はテーブル代わりに使い、ある者は病人や怪我人を寝かせるベッドに使った。


 彼等は思った以上に賢く有効利用していった。

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