316:族長会議
順調に訪問目的を消化していった冴内は最後にりゅう君としろおとめ・龍美の様子を見に行くことにしたのだが、りゅう君は龍美と一緒にゲートにある駐在所にいるとのことだった。
既に氷漬けの優の監視も必要なくなり、さらに良くないものとして存在していた良子も良い子に生まれ変わっており、ゲート内に存在する駐在所に常駐して監視する必要はないのだが、今度は地球と宇宙連合との橋渡し的な役割として駐在し続けることになっていた。新婚ということで色々とアレだろうと周りが気を使った配慮でもあった。
冴内達はいったん瞬間移動でみんなのほしのホールケーキセンター前に置きっぱなしの通信機能付きテーブルに移動してりゅう君に電話した。
冴内の瞬間移動は便利ではあるが、いきなり移動して相手が色々とアレな状況だったりするとその後の関係にとても支障をきたすので、当然のことながら緊急事態や単なるフィールド移動以外で友人知人家族や知り合いなどがいる場所への移動はあらかじめ事前連絡してから移動するのが当然のエチケットである。
すぐにりゅう君が出てきて、冴内達が元気な様子であるのを見てとても喜んだ。
「おお冴内殿!お元気そうで何よりです!この度は別宇宙でのご活躍、真に見事あっぱれでございました!」
「冴内様、ご無事の帰還嬉しく思います!」(龍美)
「うん、二人の結婚式の前までに戻ってこれて良かったよ。さっきまで龍人族の星に行って、3日後の族長会議の場所に行ったり、宇宙連合の建物に行って名誉会長さんに会って来たんだ」
「おお、牙龍山に参られたのですね!」
「美味しいグルメツアーも行ってきたよ!バクダンとフルーツ串美味しかった!」
「おお美衣殿、フルーツ串はいかがでござった?」
「とっても美味しかったよ!うんめぇー!っていうくらい美味しかった!」
「ハハハハ!ウンメェー!ですな!拙者達も拝見いたしたでござるよ。たすけてのすけ殿のお話しですな!」
「あら、アナタ、たすけてのすけではなくて、たつのすけ殿ですわよ」
「おっと、これは失礼申した、たす・・・たすけ・・・たつのすけ殿でしたな!」
「ところで二人は族長会議には参加するの?」
「いえ、我々は族長会議には参加はいたしませぬ。ちょうど20日後の婚姻の儀にて我々も牙龍山へと参ります」
「あっそうなんだね。いや~良かったよ二人の結婚式までに戻ってこられて」
「はい、我らがこうして夫婦として結ばれることになったのも全て冴内殿のおかげ。是非とも皆様に我らの門出を見届けていただきたいと願っておりましたので無事の帰還に大変安堵いたしました」
「婚姻の儀にはしろおとめ団の皆は参加出来るの?」
「はい!私の身内は彼女達だけなので、特別に参加を許可していただきました!皆喜んで来てくれるそうです」(龍美)
「それは良かったね!皆すごく喜ぶと思うよ!」
「はい!」
冴内はりゅう君達に無事の帰還と結婚式の参加を報告し二人を安心させることが出来た。これで当初の目的は全て完了したので、冴内達はさいしょのほしの冴内ログハウスに戻ることにした。
帰宅後、良子が地球とみんなのほしの宇宙とさいしょのほしの宇宙の3っつの宇宙間で連絡可能な通信装置が作れないかどうか研究と試作実験を試みるということで、超高性能光演算装置のある建物へと入って行った。美衣達は夕食の支度のためにキッチンへと向かって行った。
冴内はログハウスのリビングでくつろぎ、初は冴内の両親から買ってもらった漢字の練習帳を書いて楽しんでいた。
すると宇宙連盟の最上階にある大会議室に勝手に設置した小型ゲートを使ってさいごのひとロボ2号機がやってきて、もう1台さいごのひとロボを作るのとさらに音声ガイドロボも新たに2号機を作るので手伝って欲しいと言ってやってきた。
龍人族の星ではほとんど身体を動かさなかったし浮遊カーの中では少し眠ってしまったし龍人料理と爆弾とフルーツ串でお腹いっぱいだったので、夕食前の丁度良い腹ごなしになりそうだということで冴内は二つ返事で協力した。
龍人族の族長会議が開催されるまでの3日感、冴内達は久しぶりに何も起きない平穏な生活をのんびり過ごした。
その間良子が作った通信装置が完成し冴内ログハウスの近くに設置した。大きさといい形状と言いまるでテントというか小さなミニピラミッドのようでもあった。この通信装置のおかげで例の白い消しゴム状の通信端末でも3っつの宇宙のどことでも通話可能となった。一応ログハウス内のリビングの壁にも大型スクリーンと通信装置を備え付けた。
またさいごのひとロボ3号機と新たな音声ガイドロボ2号機に加え、さらにもう1台さいごのひとロボ4号機を完成させた。
さいごのひとロボは地球と宇宙連合と宇宙連盟の3か所に常駐し、新しい4号機と音声ガイドロボ2号機が今後冴内と一緒に行動することになった。
ちなみにさいごのひとロボ4号機は1~3号機と少しだけ細部が異なり、様々な機能や記憶容量も増加しているとのことだった。
音声ガイドロボ初号機はまだイリィーティアのところにいるらしく、しばらくは行動を共にするとのことだった。ただ、良子の通信装置のおかげで3っつの宇宙どこにいようとも情報記憶や経験共有が可能になったようで、互いに常に同じ状態であることが出来てとても良かったとのことだった。もちろんさいごのひとロボにもこれは当てはまる。
そうして龍人族の族長会議の日となり、さいごのひとロボ4号機と音声ガイドロボ2号機を冴内ログハウスに待機させて、冴内達は龍人星の牙龍山山頂へと瞬間移動した。
どうやら一番最初にやってきたようだが遠目からでも100メートル級の名誉会長がこちらに近づいてきているのが分かった。他にも3人、3匹?の大きな龍も飛んでいるのが見えた。さらに例の浮遊カーもやってきて小型の龍人が3人、3匹?車から降りてこちらに歩いてきた。
小型の龍人達は冴内達を見てまずは一礼し静かに席に座った。
やがて上空から大型の龍人達が円弧を描くようにグルリと横たわり、最後に名誉会長が半円を描くほどの巨体を横たえた。
「うむ、皆の者集まったようだな。それでは始めよう、しばらく死んでたワシはともかくとして、こうして集まるのはいつ以来のことじゃ?」(名誉会長)
「前回はそこの者、今では冴内殿の妻となりすっかり心を入れ替えて良き者になった♪ー♪♪ー♪♪♪♪人の処遇を決めるときじゃった」
「そうじゃ、えぇと・・・どれくらい前だったかの」
「1万年くらい前か?」
「オヌシ大分もうろくしとるのう、桁が違う桁が。千年程前のことじゃ」
「おおそうじゃった、そうじゃった」
正確には800年程前のことだが、長老である龍人達にとっては100年くらいは誤差のレベルだった。
「しかし今年はどエライ年じゃのう、我らもそろそろ後進に任せて引退しようかと思っとったのに、まさか名誉会長殿が我らよりも随分若々しく復活なさるもんだからやめられなくなってしもうたし、かつてない規模の宇宙イナゴ発生事件もあったし、さらに龍封じの儀によって封じられた上位種の龍が復活して若い者と結婚するというのじゃからな」
「まったくじゃ、こんな年は後にも先にもないじゃろうて」
「それもこれも全て冴内殿がこの宇宙に現れたおかげじゃな」
「うむ、これまでの冴内殿の見事な活躍の数々、そしてつい先日の初代冴内殿の活躍、どちらもまさに宇宙に選ばれし大いなる愛の使者だと感服いたしましたぞ」
「い・・・いやぁ・・・どうも・・・」
まさに宇宙に選ばれし者の対応というより、まさにごく普通の平民が恐縮しているリアクションの冴えない冴内であったが、そんなうわべだけの行動と見てくれには全く目もくれず、途方もない年月を生きてきた長老の龍人達の瞳には冴内が内包する凄まじいまでの力とそれを包み込む心の強さと慈愛に満ちた優しさはすっかりお見通しだった。