表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
314/460

314:龍人星観光

 龍人族の星へとやってきた冴内達を出迎えに来てくれたのは身長、いや全高3メートル程の龍人達であった。


 遠目に見た同じような龍人達の第一印象は小型の二足歩行の肉食恐竜といった感じだったが、実際目の前にして見るとどこかしら知的な雰囲気を漂わせる印象があった。

 冴内達の目の前には3匹、いや3名の龍人族がいたがどの者も何故か穏やかな人物、龍物?に見えた。


「ようこそいらっしゃいました冴内様方、龍人族を代表して歓迎いたします」

「わざわざ出迎えていただき有難う御座います」

「いえ、とんでもありません。冴内様は我ら龍人族の大恩人であられるお方、出迎えるのは当然のことです。ところで族長会議は3日後ですが、本日はどのようなご用件で参られたのですか?」

「はい、事前に族長会議の場所を知っておけば僕の瞬間移動能力で当日は遅れることなく参加することが出来ると思ったんです。あと名誉会長のグワァーオーゥゥさんやりゅう君のところに挨拶に行こうと思っています」

「アタイは出来ればウマイもの食べ歩き観光をしたい!」

「僕も!」

「私も!」

「・・・だ、そうです」

「ハハハ!なるほど分かりました。それではこうするのはいかがでしょう、冴内様と奥方様は族長会議の場所に案内し、お子様方は我が星の美味しいものがある所にお連れし、その後合流して名誉会長のおられる宇宙連合龍人族支部に向かうというのは」


「僕はそれでいいですけど、皆はどうする?」

「「「さんせい!」」」

「私もいいわよ、何か美味しいものがあれば私達の分もお土産に持って来てね」

「「「わかった!」」」

「それでは、参りましょうか、冴内様と奥方様は私が、お子様方はこちらの者がご案内いたします」


 冴内達は二手に分かれ別々に行動することになった。完全自動運転のタイヤのない乗り物が2台やってきてそれぞれに別れて出発した。


「すごい技術力ですね、僕はてっきり皆さん空を飛んで移動するものだと思っていました」

「なるほど、確かにはるか大昔はそうだったかもしれません。しかし非常に長い年月を経て今では龍神族も多種多様な者達が多くおります。私達のような小型の者は名誉会長殿を代表とする大型種とは異なり、空を飛んだりブレスを吐いたりすることは出来ませんが、手先が細かく技術的な方面に秀でている者や学術研究などに長けている者が多く、食料も大量に消費しないので経済的で繁殖能力も高く、今では人口比率でいえばほとんどが我々のような小型種が多いのです」


「なんと、そうなんですね。族長を務める長老さん達の中にもそうした小型の龍人の方はいらっしゃるのでしょうか?」

「はい、おります。我らが最も尊敬する頭脳明晰な長と、慈愛に満ちた徳の高い偉大なる母と称される長と、多大なる発明を数多くした技術長官の3名がおります」

「族長と呼ばれる方は全部で何名いるんですか?」

「7名おります。かつては6名だったのですが、冴内様の偉大なる力のおかげで名誉会長が見事復活なされましたので、今は名誉会長を頂点とする7名となっております」

「なるほど」


 冴内達を乗せた方の乗り物はハイウェイと思しき道を走っていた。地面付近を宙に浮かぶタイヤがない乗り物なのでアスファルトなどで舗装する必要はないのだが、地球上でも惑星ファルでも見かけない不思議な道路だった。


「この道路は何で出来ている道路なんですか?」

「これはブレスで硬質化した道路です、ほとんどの土はブレスの高温でガラスになってしまうのですが、先ほどお話しした技術長官が発明した物質を混合することで、ほぼ永久的に劣化しない人口鉱石のようなものになります。非常に目の細かい穴が無数にあるので水はけが良く、それでいて非常に高強度なんです。まれに他の宇宙からの訪問者でタイヤ付きの乗り物でこられる方や、趣味でタイヤ付きの古い乗り物を楽しむ者もおりますので、こうした舗装路が必要なのです」


 全くと言って良い程揺れや振動もなく、まるで静止しているかのような状態にも関わらず時速200キロ超で完全自動運転浮遊カーは背の高い建物が多く連なる街並みを抜けていき、やがて森林地帯へと入っていった。

 すると遠くからでも一目で霊験あらたかな雰囲気を漂わせる見事な山が目に飛び込んできた。


「うわぁすごい!」

「あれこそ、族長会議が行われる場所のある霊峰、牙龍山です」

「なるほど、確かに龍の牙のようですね」

「言い伝えではかつて神の龍が形を変えてこの星となり、その牙があそこに見える山となったと言われております、まぁ実際のところ単なる自然の造山運動で形成された山なんですけどね、名誉会長もありゃただの山だと言っております」

「ははは、でもそういう言い伝えって良いですよね

、僕は好きです」

「そうですね、我々龍人族も皆そうした話しは好きですよ」


 それから1時間程で牙龍山の麓に到着した。牙龍山は空を飛ぶ乗り物でもない限り山を登っていくのは不可能だろうという程に険しい山だった。

 麓周りは森林や湖など自然豊かな美しい場所なのだが、麓から先の山はほとんど草木のない岩石だった。

 麓には宿泊施設と思われる大きな建物がいくつかあり、周りの景観を損なうことのない美しいデザインだった。また、恐らく他の宇宙から来た観光客を相手にしていると思しき出店も結構あった。この辺りは地球上でも良く見られる光景なのですぐに分かった。

 しかし地球上ではまず見られない光景として、麓から山頂へと向かう登山道のようなものが真っ直ぐ一本の直線の道だった。場所によっては垂直に近いような傾斜角のところもあり、普通はZ型にジグザグと斜め横の道を作っていくものだが、崖に近いようなところがあろうともまったくお構いなしに真っ直ぐ一直線の道だった。

 だがその理由も一目見ればすぐに分かった。

 冴内達を乗せた浮遊カーのようなものが、水平を保ったまま、まるでエスカレーターのように上昇移動しているのである。

 実際冴内達を乗せた浮遊カーも他の乗り物に乗り換えることなく登山料金支払い所ゲートを通過してそのまま牙龍山を昇って行った。

 冴内達は座席を180度回転させて素晴らしい景色を堪能しながら快適安楽な牙龍山観光を楽しんだ。


 一方の美衣達は、やはり他の宇宙から来た観光客達に向けた食べ歩きグルメスポットツアーを楽しんでいた。


 これまでりゅう君やオジサン、さらにグワァーオーゥゥ名誉会長も果物を好んで食べるので龍人族は基本的にあまり肉や魚を食べないのだと思っていたが、どうやらそういうことはないらしく、美衣達を案内してくれた小型の龍人族は何でも食べるようで、肉も魚も米もパンも食べるとのことだった。


 肉と野菜の串焼きや、魚の揚げ物や、フルーツを挟んだパンなど色々なものを食べ歩き、美衣達は大満足だったが、中でも一番気に入ったのが爆弾と呼ばれる大きな丸い団子のような食べ物で、モチモチした食感の揚げパンのような分厚い生地の中に、なかなかパンチの効いたスパイシーな肉の塊が入っており、この肉を噛むとジュワァ~と旨味タップリの肉汁がスパイスと交じり合い、そしてほんのり甘味のあるパンのような生地の味が絶妙に交じり合って抜群に美味しかった。一つ食べるともう一つ食べたくなり、なかなかに中毒性のある食べ物だった。もちろん人気ナンバーワンだった。


 その次に人気なのがフルーツ串で、龍人族の大型種は宇宙一の果物グルメとして知られているだけあってこちらも非常に美味であった。

 フルーツ串は3種類の果物が刺さっているのだが、最初に滑らかな舌触りで柔らかいバナナのような果物が刺さっていて、次には爽やかな酸味を感じられるシャキっとした食感のものが続き、最後に結構歯ごたえのある果物が続いたがこれがまるでバニラアイスのような味で、この3種類の味と食感の連携が抜群でこれも一度食べたら病みつきになりそうなくらい美味しかった。

 美衣達はなるほどと深く頷き、りゅう君達の気持ちが分かった気がした。


 とりあえず冴内と優へのお土産は爆弾とフルーツ串で決まりだなと全員一致で決まり山ほど買い込んだ。


 多分8割近くは自分達用のお土産だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ