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313:龍神⇒龍人の星へ

 連日のおとめ観光ホテル無賃宿泊で、さすがにクレームが出る・・・ということもなく、その夜はこの3日間で最も盛り上がった夜になった。


 りゅう君のおじさんから優の逮捕時の記録画像をコピーさせてもらったので、当時の本物のたつのすけの姿を映しながら、冴内家最大の秘密、冴内 一之進の生涯を皆に語って聞かせた。


 いつもの冴えない冴内ならば何度も話しに詰まったり、説明不足でうまく話せないところもあったはずなのだが、スラスラとまるで今目の前で起きていることのように、自分のことのようにとても鮮明に話が途切れることなく話しをした。


 また、たつのすけが話すときのセリフをプロの役者が演技するよりもリアルに話すので、まるでたつのすけ本人がその時その場で話しているかのようだった。


 時折水で喉を潤しつつ延々と冴内は話し続けた。誰一人として退屈そうにしているものはおらず、それどころか全員若干前のめりの姿勢で冴内が話す昔話に聞き入ってしまっていた。


 そうしてたつのすけが優と別れた後、諸国漫遊の旅に出て様々な物を見て様々な人に出会い様々な出来事を経験していったことを話した。

 時折り人々を襲うクマやイノシシやサメや山賊や海賊などを単身素手の手刀で倒していったことも話した。


 刀などの武器を持たなかった理由は刀を持っていると関所を通る時や他国に入る時に色々と面倒事が起こるのを避けるためで、他にも山賊などの野盗と思われないようにするのと、剣術修行者などと思われて要らぬ剣術試合などの争いごとを避けるためでもあったが、一番の理由は優が荘園主の屋敷の庭にある巨岩を手刀で真っ二つにした時の光景がとても強烈に印象に残り、それ以来たつのすけは時間のある時はひたすら優の姿を思い浮かべて手刀の練習をしていたからであった。


 力堂や神代達はこの話のくだりを聞いて、冴内のスキルがチョップしかなかったことについて納得理解したのであった。


 様々な国を歴訪し、最後に神社の境内で自らを冴内 一之進と名乗り当時は高級で貴重だった紙に名前を書き記したところで冴内は話を締めくくった。


 おとめ観光ホテルの宴会会場での冴内の一人演目舞台は拍手喝采で終了した。ちなみに当然のことながらさいごのひとロボもしっかり参加しており、彼の超高性能な目を通してこれらの模様はしっかり記録されており、ほぼリアルタイムでおとめぼしの空中庭園都市中央管理システムを経由して宇宙連合本部に送信されていた。

 すぐに地球と別宇宙の宇宙連盟にも同じ記録データがもたらされることだろう。


 その後各々温泉大浴場に行ったり、酒を交わしたり、語り合ったりして夜を過ごした。


 翌朝、冴内は昨日の参加者全員をそれぞれの場所に送り届けた。花子とグドゥルは惑星グドゥルに戻って復興支援作業を継続するとのことで、グドゥルに送り届けた。


 残った冴内達は龍人族の長老達が集まる族長会議に参加するために、龍人族が住む惑星へと向かうことにした。せっかくなので冴内の瞬間移動ではなく、大きなリングゲートを通過していくことにした。


 いったんおとめぼしの小ゲートからみんなのほしのホールケーキセンター前に出ると、さいごのひとロボは宇宙連合への報告があるのと、さすがに神聖な龍人族の族長会議に自分が出るわけにはいかないだろうと言い、それにげんしょのひとの末裔である良子がいれば知識共有することも可能なので問題ないだろうとのことでドームへと戻っていった。


 龍人族のリングゲートまでは冴内達ならひとっ飛びなのだが、初が珍しがっていたのと以前よりも機関の研究職員や通常のシーカーが増えていたのでそれらを見ながら歩いて行った。

 例の豆腐のような白い建物が綺麗に整然と並ぶかつての街並みに少しづつ生活臭と活気が復活しているかのようだった。


 冴内達が普通一般人の歩く速度で歩いていると、いつからどこから現れたのか、一人の老人が初の前にいた。


「お前さんずいぶん遠くからよう来たねぇ」

「お爺さんこんにちは!ボクは冴内 初です!別の宇宙から来た星です!」

「おお、おお、そうかい、よう来たよう来た」

「お爺さんはこのお星さまですね!」

「そうじゃよ、お前さんのお父さんがわしにも名前をくれたんじゃよ、みんなが来てくれるようにみんなのほしっていう名前をのう」

「みんなのほし!ボクの星にもみんな来てくれるといいなぁ!」

「ホッホッホッ、うんうん、お前さんの星にもいつかいっぱい色んな者達がやってくるじゃろうて」

「ほんとう?」

「ああほんとうだとも、お前さんを見ていれば分かる。お前さんは色んな多くの者達が喜んで集まりたくなる星になるじゃろう」

「ありがとう!お爺さん!」

「うんうん、こちらこそありがとうな、遠くから来てくれて。久しぶりに別の星、それも別の宇宙からやってきた生まれたての元気な者と会って話しが出来てとても嬉しかった。冴内殿この者を連れて来てくれて感謝します」

「どういたしまして、今度は別の可愛らしいお星さまを連れてきますね」

「おほっ!それはまた楽しみじゃわい、それではわしはこれにて失礼する」

「さようなら!」


 みんなのほしはかつて惑星間戦争で破壊された星のカケラだったのをげんしょのひとにより復活再生された星である。

 しかしその後長い年月を経てげんしょのひと達は子孫を残すのをやめ、思念データをホールケーキセンターのドームにある超大規模記憶装置に残し、後は皆寿命と共に消えていった。

 それからさらに途方もなく長い年月が経過して原生生物以外は全て絶滅し、地表もすっかり風化してしまった。

 その星は名前も付けられずただ一人この先数億年を孤独に生きるだけだったところに突如冴内達がやってきて、試練の門の最大難易度「この世の地獄」で得た特別報酬「惑星改良のたね」を使って緑豊かな星へと改良し、さらにみんなのほしという名前をつけて見事生まれ変わった。

 生まれ変わったにも関わらず年老いたままの姿で冴内達の前に出現したのは、元が一度破壊された星のカケラだったからなのか、それとも星自身がその姿でいたかったからなのか、いずれにせよ冴内には老人の姿がこの星に合っているように感じた。


 お爺さんの姿のみんなのほしとの挨拶を終え、冴内達は龍人族のリングゲートに到着しそのままゲートを通過した。


 通過した後に目に飛び込んできたのは何もかもが巨大過ぎる宇宙港だった。超大型宇宙船が何隻も並ぶ姿は壮観で、コンテナ貨物も桁外れに大きく、倉庫と思われる建物の大きさも尋常じゃない大きさだった。


 その光景は冴内が思い描いていたものとはかなり異なっていた。龍人族の星ということでもっと原始的というか科学的な機械や建造物などはほとんどないものだと思っていたのだが、今目の前にあるのは科学文明が進んだ人工建造物だらけである。


 美衣、良子、初はすぐに垂直上昇して、辺りを見回していた。

 冴内もそれにならって垂直上昇して辺りを見回してみると、大きな龍が巨大なコンテナを腹の下に抱えて上昇していく姿や、着陸してコンテナを倉庫に運んでいる姿などが見てとれた。

 さらに良く目を凝らして見ると、小型の二足歩行している龍、というよりは小型の肉食恐竜のような者達も大勢いた。

 どうやら超大型宇宙船はそれら体の小さい龍人たちが利用しているようだった。


 優が下から冴内達を呼んだので、冴内達は地上に降り立つと、そんな小さい体の龍人が数体ほど優の前にかしこまった様子で立っていた。


 どうやら冴内達の訪問理由を知らされて出迎えてきた龍人達のようだった。

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