303:出雲へ
冴内の両親は美衣達が作った絶品料理を感激感涙しながら味わい、久しぶりに老夫婦二人以外の愛する子供と孫たちに囲まれた賑やかな夕食を大いに楽しんだ。
そしてまたしても冴内の両親は「もう思い残すことは皆無だ、最高最上の人生だった」と早すぎるセリフを口にした。
食後冴内の父親が現在は兄が住んでる島根の実家に電話して、息子が冴内家の先祖にまつわることを調べたいのでそちらに行きたいと言っていると伝えると、冴内の叔父にあたる冴内の父親の兄は大喜びでいつでも来てくれと言ってくれた。
冴内に電話を代わり、明日午前中に家族を連れて行ってもいいかと言うと二つ返事で歓迎すると言ってくれたのでお礼を述べた。
叔父は蔵に家系図とか古い巻物のようなものがあった気がするから出しておくとも言ってくれた。
その後風呂に入ろうと思ったが、冴内の実家の風呂は普通一般住宅の大きさの風呂なので、おとめ観光ホテルの大浴場に入ろうかと冴内が提案すると、美衣達は大賛成してきたので、またしても冴内と手を繋いでリング状になった。
当然冴内の両親も手を繋いで一緒に行くことになったが、またしても冴内は普通の地球人の人間が別宇宙の自然豊かな星に行くことで、もしかしたら地球人類には致命的なウィルスや風土病があるかもしれないとかいう心配を全く1ミリも想像せずに自分の大事な両親を別の宇宙へと連れだした。
瞬時におとめ観光ホテルのロビーに到着し、給仕ロボが出迎えてきた。すぐにしろおとめ・恵子が空間に自分を投影して現れて「あっ洋さんに皆さん!どうしたんですか?」と聞くと「ウチの実家のお風呂だと狭いから皆で大浴場を利用したいと思ってきたんだけど、いいかい?」と答えたところ「もちろん大歓迎です!今皆で迎えにあがります!」と言ってしろおとめ団緊急非常招集をかけた。
いくら冴内といえど、これから宇宙で最高級の温泉リゾート地になろうというホテルに予約もアポもなしにやってくるのはいかがなものかというものだが、今はまだ観光客はいないのでまぁ大目にみてもよいだろう。
すぐにしろおとめ団全員が気品漂う白い正装をして冴内達の前に参上した。
「わっ、ごめんね皆。ただちょっとお風呂を借りに来ただけなんだけど、何だか迷惑だったかな」
「迷惑なことなんて一つもありませんわ!」(える)
「そうですニャ!」
「洋さん達が来てくれるだけでも私達にとっては、とても嬉しいことなのですわ!」(拓美)
しろおとめ団達は珍しく言葉遣いを訂正することなくその名に相応しい口調で話した。ただしろおとめ・元子は口を結んで頷くだけで黙っていた。
「そういえば、宇宙連盟のオエライさん達は結局泊まっていったのかい?」
「はい、泊まっていかれましたわ。とても高い地位の方でしたので私どもも大変緊張いたしましたが、ご満足していただいたようで安心いたしました。次は宇宙連盟の他の星の代表の方々や警備隊の方々も是非泊りにきたいと言ってくれたそうですわ」(冷香)
「そうなんだ!それは良かったね!」
「はい!これも全て洋さんのおかげですわ!」(恵子)
冴内の両親は自分の息子が、とても美しく凛々しい白装束に身を包んだ絶世の美女と美少女達と普通に会話をしているのがとても信じられなかった。
考えてみれば優といい美衣に良子にグドゥルといい、およそ自分達普通の人間とは根本的に全く別の神々しい程に美しい存在であることを今更ながら痛感せざるを得なかった。
実は自分達はずっと夢を見ているのではないかとすら考えてしまう程だった。
ともあれ幾つか立ち話をした後、冴内達は大浴場で汗を流すことにした。男湯には冴内と冴内の父と初の3人だけで入って行き、他の女性陣達はすごく初を羨ましがった。もちろん冴内の母親も初ちゃんは男湯に行くのかいと少し寂しそうにつぶやいたが、美衣に良子にグドゥルがいるから我慢できた。
男湯で久しぶりに親子と一応孫の3人で風呂に浸かっていると、冴内の父親は先ほどまで見た光景といい、これまでの冴内の活動内容といい、息子が言うようにやはり冴内家には何かあるのかもしれないなと考えるようになり、冴内にもそう言った。
入浴後冴内達は結局そのままホテルに泊まっていくことにした。しろおとめ団達も大喜びで冴内達とゆっくり色々語り合うことが出来たし、他の皆と両親も喜んで睡魔が訪れるまで様々なことを楽しく語り合った。
一夜明けた翌日、早朝の朝風呂に入って皆で朝食をとり、冴内は母を実家に送り届け、父を会社近くの人気のない場所に送り届けた。
そして昨日連絡していた島根の叔父に電話し、今から行くけど良いかと尋ね、いつでも良いとのことだったので冴内は皆と手を繋いで瞬間移動した。
冴内が島根の家に行ったのはまだ幼い頃で、正確な場所など全く把握していないはずなのだが、父方の島根の実家の庭に瞬間移動した。
丁度冴内の叔父が庭にある蔵の整理をしていたところだったので、突然現れた冴内達を見て腰を抜かすほど驚いた・・・ということもなく「おう洋か、大きくなったなぁ」と普通の様子で久しぶりの挨拶をした。
「叔父さんお久しぶりです!すいません、急に大勢で押しかけてしまって・・・」
「なんのなんの、退職してから毎日ヒマを持て余していたから来てくれて嬉しいよ」
「あらあら洋ちゃん久しぶりねぇ、あらまぁたくさん来てくれたのね、きゃあ!小さい頃の洋ちゃんそっくりね!」
「あっ叔母さんお久しぶりです、すいません大勢でやってきちゃって、この子は初って言います」
「いいのよいいのよ、たくさん来てくれて嬉しいわ、初ちゃんっていうのね、こんにちは」
「こんにちは!冴内 初です!」
初に続いて美衣達も自己紹介挨拶をして、冴内と叔父を残して縁側から家の中に入って行った。
「それにしてもテレビで見た通りというかそれ以上にすごいもんだな、突然庭に現れる超能力といい、優さんや美衣ちゃん良子ちゃん、それからぐどるちゃん?もこの世の者とは思えない美しさだ。そして初ちゃんが小さい頃の洋そっくりで実に可愛い、この目で見るまではどこか空想の世界の話しだと思っていたが、本当のことなんだなぁ・・・」
「そう言われると、自分でも今こうしていることが夢物語なんじゃないかって思います、おととしまでは本当に普通と言うか少し冴えない人生だったんですが、はたちの誕生日にギフトを授かってからというもの毎日信じられないような出来事の連続で、本当にこれは現実世界の出来事なんだろうかって思うことがありますよ」
「ほっぺたつねってやろうか?」
「遠慮しておきます、夢ならまだ見ていたいです」
「ハッハッハ、そうだな自分でもそう思うだろう」
「さてと・・・この有様だもんでな、どこからどう手を付けてよいものやらって状況だ」
「なるほどこれはちょっと大変ですね・・・そうだ!ちょっと助っ人を呼んでもいいですか?」
「助っ人?」
「はい、こういうのが得意な者達を連れてきます」
「そりゃ助かるけど、その人たちに迷惑じゃないのかね?」
「うーん・・・人というか、でもこういうのが好きなもの達だと思います」
「良く分からんが人手があるのは助かるよ」
「じゃ、行って連れてきます」
冴内は惑星グドゥルに行って花子に事情を話したところ、花子本人が是非とも行きたいと言い、後のことは量産型花子に任せて小型の汎用作業支援ロボを数体引き連れて、冴内の父方の実家、かつての出雲の国がある島根へと移動した。
果たして冴内家一族には何か特別な力があるのだろうか?