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300:どこでも冴内

 冴内達は久しぶりにみんなのほしを経由して富士山麓ゲート前研修センターに戻って来た。初は目の前にある富士山がとても気に入ったようだった。


 やはりいつも通り今や日本を代表するゲート局長の神代がエントランスまですっ飛んでやってきて、新たな来訪者、それもとうとう本物の星そのものがやってきたということで研究職員も総出でやってきたのだが、神代が見た目3歳児の冴内のような初を見て、その場にひれ伏しそうなそぶりを見せたので冴内が慌てて制止した。


 時刻は間もなく5時になるところだったので、冴内達はそのまま久しぶりに食堂へと向かった。

 久しぶりの食堂に着くと料理人達が冴内達を出迎えて無事の帰還と元気な姿を見て喜んだ。

 美衣がとっておきで残しておいたさいしょのほしで獲った食材を幾つか取り出して「これで何かウマイもの作って!」と言ったので、料理人達には戦慄が走り緊張したが、久しぶりに挑戦意欲も湧いてきてなんとか美衣シェフの舌を満足させてやるぞという意気込みで彼らの戦場であるキッチンへと向かっていった。


 その後力堂達もやってきた。力堂達は試練の門の「非常に難しい」に挑んでいる最中で、冴内達が一ヶ月以上別の宇宙に飛ばされていた間に、全20ステージのうち10ステージまで攻略していた。

 現在11ステージ攻略中だが、11ステージ目からはしろおとめ団が攻略した「最高に難しい」や冴内達が攻略した「この世の地獄」と違って、非常に強い少数の敵単体を倒すというよりは、複数の多様な敵が出現してきて戦いにくい地形やトラップなどもあるため、頭を使う戦術的な要素が多いとのことだった。そのため余程ずば抜けて強くない限り、チーム戦でしっかりと考えて挑まないとまず攻略は不可能だとのことだった。

 それを聞いた美衣は面白そうだ!そっちをやりたかった!と残念がっていた。


 そんな話をする力堂と冴内など完全に目に入っていなければ耳にも入っていない人物がいた。それは良野、吉田、そして今ではシーカー研究職員の木下で、今彼女達の目に映るのは見た目3歳児の初と一緒に手を繋いでいるグドゥルだけであった。


「さっ!冴内君!コココ、このっ!この子は誰!?冴内君の子供!?」

「うん!ボクの名前は冴内 初!冴内 洋の息子!そしてこっちはグドゥルお姉ちゃん!ボクもグドゥルお姉ちゃんも別の宇宙から来た星です!」


「「「 キャァァァァーーーッ!! 」」」


 その瞬間3人とも顔面崩壊して腰を抜かしたかのように座り込みそのまま溶けてドロドロになってしまうのではないかという程メロメロになった。すぐに冴内に撮影の許可をとってシーカー携帯端末で四つん這いになって撮影しまくった。


 さらにその後鈴森、宮夫妻、梶山もやってきてとても賑やかになってきた。

 冴内が初の写真を久しぶりの個人用スマホで両親や姉に送ったところ、今すぐにそちらに向かうとレスがあったので、優が短距離ワープで迎えにいきすぐに両親と姉二人とその子供達を連れてきた。

 これでますます冴内の周りは賑やかになり、そんな様子を遠目で見ていた食堂の料理人達はますますやる気溢れる心の炎とコンロの炎を燃やしていた。

 冴内の父も二人の姉もいつも通り最高レベルのプロ仕様ビデオカメラに一眼レフカメラを持ってきたので初とグドゥルを撮りまくった。

 良野、吉田、木下もいつも通りそんな冴内の父と姉二人にどうかそのデータを私達にも下さいと懇願していた。

 冴内の母は初を見て破顔し嬉し涙が出たが、抱っこしてもいいかと聞いて、いいよ!と初の許可をもらって抱いたところ、初がほっぺたをくっつけてきたので冴内の母はボロ泣きする程喜んだ。

 以前は美衣が中年キラーとして道明寺や神代をボロ泣きさせたが、初もなかなかのキラーだった。


 もちろんアニメかゲームかコスプレの世界にしか存在しないであろうエメラルドグリーンに光り輝く髪の毛に眉毛に長いまつげのとびきり美しい少女グドゥルも放っておかれるわけがなく、美衣や良子も含めてこの世は美少女の天国楽園かと言わんばかりに良野達はメロメロになった。

 当然似たような女性職員達もここぞとばかりに給料やボーナスをつぎ込んだカメラをもって食堂にやってきていた。恐らく情報管理部の職員だろう。

 そうして食堂は大賑わいとなり大変な盛り上がりをみせた。


 その後久しぶりの大浴場で汗を流し、同じく久しぶりの富士山麓ゲート前研修センター最上階の冴内専用部屋にて冴内達と両親と姉二人親子は一晩を明かした。

 明日は朝から大忙しで、初とグドゥルと美衣と良子の服を買いにいつものアパレルチェーンの店に行き、午後からは大会議場にて別宇宙からやってきた星そのものの二人の挨拶と、冴内達が別宇宙に飛ばされてからの出来事を報告する予定だった。

 冴内は心の中でどうにかしてさいごのひとロボの初号機か2号機のどちらかに来てもらわなければと考えていた。場合によっては3号機の製作を・・・などと考える程に必死だった。


 初めての別の宇宙にやってきて、多くの人間にあてられたせいか、はたまた気疲れしたせいか、初とグドゥルは部屋に戻ってくるなりスヤスヤと眠り始めた。冴内の両親と姉二人はそれを見ているだけで幸せな気持ちでいっぱいになった。


 その後冴内達も眠りについたのだが、その夜冴内は久しぶりに夢を見た。


「ここもいいところだね。あのなんていったっけ、フウ・・・サン?とかいう山、実に見事な山だね」

「富士山です、気に入りましたか?」

「うん、見事な大きい三角形で、それが一つだけあるというのが凄いね」

「それにしてもこっちの宇宙にまでやってきて、僕の夢の中に現れるとは驚きました」

「うん、まぁここの宇宙のおかげなんだけどね。僕だけではこうして他の宇宙にやってくることは出来ないんだ。そしてやってくるといっても物理的には無理で、君を通して感じることが出来るというくらいなんだ」

「そうなんですね」


「有難う冴内 洋、君には色々とお世話になったからお礼をしたいと思ってやってきたんだ」

「そんなお礼だなんて、僕達こそおかげでとても素敵な経験と新しく大切な人達と巡り合うことが出来たので僕の方こそお礼をしたいくらいです」

「あぁ・・・そこなんだなぁ・・・なるほど、前にも言ったけどここともう一つの宇宙が君を絶賛していたのも分かるよ。ともかくどうか受け取ってよ。もしかしたらお礼返しにもなるかもしれないからさ」

「お礼返しにもなる?それはなんですか?」


「うん、それは君がゲートなしでも宇宙のどこにでも行ける瞬間移動能力のことだよ」


「えっ!?宇宙のどこにでも行けるんですか?」

「うん。といってもこのフジサンのある宇宙と、イリィーティアが元いた宇宙と、僕の宇宙の3っつだけどその宇宙の中でならどんなに距離が離れていようとどこだろうと宇宙から宇宙だろうと君が行きたいと思い描いた場所ならすぐに移動出来るよ」


「わぁ!それは凄く便利ですね!でもそれがどうしてお礼返しにもなるんですか?」

「うん、今回みたいにもしも困っている人や星がいればすぐに助けてくれるかもしれないじゃない?そうすれば僕達3っつの宇宙としては喜ばしい限りなんだ」

「なるほど、そういうことですね。僕は全てを助けることはできないですが、それでも僕に出来ることならこれからもやっていくつもりです」

「有難う冴内 洋、僕ら宇宙はただ宇宙としてあり続けるだけで直接的に何かを助けることはできないんだ。そして君が言ったように僕等も全てを助けることはできないし全てを見通すことも出来ない。でもせめて僕が感じた助けを呼ぶ声には出来るだけ助けてあげたいんだ」

「分かりました!もしも僕の助けが必要ならいつでも呼んでください、僕に出来ることなら出来る限り全力を尽します」


「有難う冴内 洋、僕も他の宇宙達と同じくらい君のことが大好きになったよ。それじゃあ僕は行くね。冴内 洋、いつかまた会おう」

「はい!また会いましょう!さようなら!」


 こうして冴内は宇宙からのお礼と深い友情を手に入れたのであった。

 冴えない普通の一般人にしか見えない冴内であったが、ますますおよそ人間とは思えない存在自体が超常現象に近い何かになっていった。

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