299:いったん解散
冴内達は久しぶりの冴内ログハウスにて昼食をとった後、もう一度今度は美衣と初とついでにグドゥルを連れて宇宙連合本部ビル最上階の大会議場へと戻っていった。
花子は量産型花子を3体つれてまた惑星グドゥルの復興支援のお手伝いに出動していった。
大会議場にいた宇宙連盟の人達もその場で軽食を取りつつ何が起こったのかを映像を交えながら説明報告していた。
全員の腹も満たされて、冴内ファミリーも宇宙連盟の各星代表の者達も全員揃って大会議場に集まったので、再度仕切り直しで冴内達の歓迎レセプションが始まったのだが、当初の予定には全く予定どころか予想もしていなかった人物も加わり、進行スケジュールは大幅に変更になった。スケジュール検討と調整を行う裏方の事務局の人々の気苦労は相当なものだったことだろう。
ともあれ、改めて冴内ファミリーともう一人今回の緊急特別ゲストであるイリィーティアの自己紹介が始まった。
冴内の方は既に先行していたさいごのひとロボ2号機と音声ガイドロボ2号機による情報提供により、冴内の生い立ちからこれまでに至る冒険の数々まで記録映像も交えて赤裸々に公開されていたので、本人達の肉声による挨拶だけでほぼ終了したが、これは冴内にとって実に有難い事だった。
ちなみに最も場が盛り上がり拍手も多かった順番は以下の通りである。
美衣>初とグドゥル>優>良子>>>冴内
次にイリィーティアの番となったが、こちらは冴内のようなこれまでの詳細な記録動画など当然ないので、全て彼女の口から説明することになったが、冴内達がのんきに昼食をとっている間にさいごのひとロボ2号機と初号機が連携して、みんなのほしにあるドームまでゲートリレーで移動して、数百万年前の記録を外部記憶装置にコピーして持ってきて、当時の事故の様子やその後のロエデランデ家の素晴らしい功績などを各種映像を交えて補足説明した。
イリィーティアも客観的な事故情報とその後の長年に渡る調査による事故原因、そしてさらにその後のロエデランデ家がどうなったのかを知ることが出来て非常に興味深くかつ喜んでいた。
長時間に渡る説明が続いたので、残る3体の量産型花子達が冴内ログハウスとさいしょのほしで採れた食材で作ってきたおやつを持ってきたので、大会議場にいる全員で食べた。
おやつはみたらし団子で日本茶にとてもよく似た味のお茶も配られ、宇宙連盟の各星代表は目を丸くして驚き大絶賛した。とりわけゴスターグのバリトンの利いた声による賛辞が響き渡った。
若干味ではなく量に物足りなさを感じた美衣が冴内ログハウスにすっ飛んでいき、おはぎとゴマ団子を大量に作って持ち帰ってきて再度全員に配られたが、それを食べた途端大会議場は一際大きな大歓声に包まれ、外で待機していた警備兵達も何事が起きたのかと驚きとても緊張したが、続く拍手とどうやら喜びの歓声らしいことが分かったので、引き続き警備を続行した。
本来ならば冴内達の歓迎レセプションということで、歓迎式典の後はディナーパーティーを行いさらに翌日からは記念パレードというスケジュールだったのだが、イリィーティアの件から発展して別の宇宙と繋がるゲートが出来てしまってそれどころじゃなくなってしまった。
当然一ヶ月以上も行方不明になっていた冴内は一度戻って無事を報告しなければならないだろうし、イリィーティアに至っては数百万年も行方不明だったのである。これは一刻も早く故郷に帰って一族との再開を果たさねばならないのは当然であろう。
しかもこちらの宇宙連盟よりも遥かに進んだ科学技術水準を持つさいごのひとロボのいた宇宙の宇宙連合と、冴内の所属するゲートシーカー協会なる組織とも会談を開かねばならない。
そして最後に極めて恣意的利己的自己中心的な理由として、強く温泉に入りたがっている約一名のせいで夕方以降の予定は全てキャンセルになった。
宇宙連盟の事務方の面々は宇宙連盟発足以来の未曾有のこの事態に頭を抱えつつも別の宇宙、それも単に知的生命体といった存在ではなく、自分達よりも遥かに高度な文明社会をもつ星々との交流がこれから始まるのだと思うと湧き上がる好奇心と熱意で奮起し今後のスケジュールを検討していった。
夕方近くになって、冴内達は久しぶりに富士山麓ゲート前の研修センターに行くことにして、さいごのひとロボ2号機はみんなのほしのホールケーキセンターにあるドームに留まって宇宙連合に全てを説明する必要があると言い、音声ガイドロボ初号機はイリィーティアと共に惑星シュリューリンのかつてフォルローと呼ばれた国、数百万年という年月によって大分地形が変わってしまい国名もフォルロイデンとなった場所へとゲートリレーで移動した。ロエデランデ家もその国の閑静な郊外にあった。
ゴスターグ・バリディエンシェは早速今晩はしろおとめ観光ホテルに泊まると言い張って一同を唖然とさせ、急遽随行する警備隊が結成された。それに便乗して私も参りまするぞと言った宇宙連盟の古参の代表達も数名同行することになった。
しろおとめ団達はてっきり社交辞令かいつか機会があれば泊りに来てくれる日もくるだろう程度に考えていたのだが、出会ったその日に泊まりに来るとは思ってもいなかったので大慌てで支度に取り掛かった。以前参考意見を聞くために力堂達にお試しで泊まってもらったのだが、いよいよ本物のお客さん第一号が、それも別の宇宙のしかも宇宙連盟とかいう宇宙最高の組織のトップである総司令長官と数人の古参の重鎮達がやってくるというのである。
しろおとめ・温子がこの事態にテンパってしまい、恵子に「おいどうすんだ!こんなとんでもないオエライさん達がいきなり初めてのお客さんだぞ!もしも機嫌を悪くするようなことがあったら宇宙大戦争になりかねないぞ!どうすんだオイ!責任重大過ぎて頭がどうにかなりそうだ!鎮静剤を処方しなきゃ!」と、食って掛かったが、極めて冷静な恵子に「うるせぇなヤブ医者、いや、今は少しムカつくがスゲェ医者か、お前は観光の仕事は何一つ出来ない外野じゃねぇか。外野が外からあれこれとやかく言うんじゃねぇ・・・わよ」
「なんだと!いや、なんですって!だがしかしよぉ・・・だっ大丈夫なのか?」
「ガハハハ!大丈夫だっぺ!心を込めたガッツでおもてなしすればいいんだっぺ!」(元子)
「いや、心を込めるのはいいがガッツは要らねぇと思うぞ・・・」(温子)
「そうですよ!良美姉さんの料理と、宇宙一素晴らしい温泉があればそれだけでもきっと大満足してくれますよきっと!」(るき)
「アタシもそう思うニャ!」(ニア)
「ままま・・・まかせてくれ・・・この日のために美衣師匠直伝のレシピを授かってんだ」(良美)
「いっ・・・今からでも、何かとびきりの食材を探してこようか?」(冷香)
「おう、そんならいつでもハンターボートを出してやるぜ」(拓美)
「待て待てお前ら、じゃない、アナタ達。いつも通りでいいんだいつも通りで、いつもと違うことをやるとかえって失敗するかもしれない。だからいつもの練習通りにいつも通りのことを誠実にやるんだ」
「「「 わ・・・分かった 」」」
こうしてそれぞれの面々はそれぞれの地へと向かっていったん解散した。冴内やイリィーティアはしっかりと目的があっての移動だったが、約一名に関しては完全に個人的な願望だけの移動だった。