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298:あっけない帰還

 冴内がこちらの宇宙との対話を終了して我に返った後、冴内達の目の前にゲートが出現した。それは宇宙連盟本部ビル大会議場のゲートと正反対の方向で、大きさは同じくらいのゲートだった。


 そしてそのゲートの先はどこか見覚えのある風景が映っており、なにやら日本の温泉街でよく見る懐かしい湯けむりアイコンのマークが見えた。

 その場所はなんとおとめぼしのおとめ観光株式会社が運営するおとめ温泉ホテルの目の前だった。


 冴内達が呆然として唖然として呆気に取られて見ていると、何やら鼻歌交じりで歩いてくる人物が現れてきた。


「ニャァ~♪ニャニャ~♪ニャァァァー・・・ッ?フニャァーーーッ!!なんか透明な扉があるニャァーーーッ!!」

「うひゃぁっ!何だこれ!?朝はなかったっぺ!」

「あっ!これゲートニャ!」


「おーい!ニャァちゃーん!」

「あっ!洋さんニャ!大変ニャ!あっちに洋さんがいるニャ!」

「うわっ!ホントだっぺよ!ありゃ洋さんだ!優さんも良子さんもいるっぺよ!大変だ!こりゃ皆に知らせないと!」


 それはしろおとめ・ニアとしろおとめ・元子(もとこ)の二人組だった。

 元子がすぐにゲートシーカー専用携帯端末を慣れた手つきで操作して、しろおとめ団全員に非常招集をかけた。


 すぐに全員駆け付けてきて冴内の無事の帰還と再開を喜んだ。

 冴内は簡単に事情を説明し、いったん宇宙連盟の人達にも事情を話して色々と整理してから改めてまた戻ってくる、それ程時間はかからないと思うと伝えて宇宙連盟の大会議場へと戻っていった。


 冴内が大会議場に戻るとゴスターグが「いかがなされた冴内殿?」と尋ねてきたので、この宇宙と対話してきたことと、元いた宇宙とのゲートを開通してもらったことを説明した。


 ゴスターグとその近くにいた宇宙連盟の人達は大いに驚き、元来好奇心旺盛なゴスターグは居ても立っても居られず、警備隊員が止める間もなくすぐに真っ白い部屋へと引き返していった。警備隊員達もゴスターグの後を追いかける形となったが、他にも沢山の宇宙連盟の代表達まで追いかけていった。


 すぐにゴスターグ達はゲートの前まで到着し、ゲートの中にある別の宇宙の様子を伺っていた。

 そこには美しい女性達が同じように驚きながらこちらを見ていて、何やら携帯端末を使ってどこかと連絡を取り合っているようだった。


 またしても好奇心がもはや若い頃の全盛期状態まで達していたゴスターグが何の躊躇も警戒心もなく警備隊の止める間もなくゲートに向かって入っていってしまった。


 しろおとめ団達はさらに驚いたが、ゴスターグの雰囲気から恐らく位の高い人物だということがすぐに分かり、以前宇宙海賊だった彼女達からすると信じられない程の成長ぶりとも言える程礼儀正しくお辞儀をした。


 ゴスターグは「はじめまして、こんにちは美しきお嬢様方、私は別の宇宙からやってきた、ゴスターグ・バリディエンシェと申します」と、同じようにお辞儀をしてきた。


 残念ながらしろおとめ団達にはゴスターグが何をしゃべっているのか全く分からなかったが、その時しろおとめ・るきが前に出てきた。


「ようこそ、ゴスターグ・バリディエンシェ様、私共はこちらで観光事業を営んでいるしろおとめ観光株式会社の従業員です。目の前にありますのは私共の温泉宿泊所です」


「おお!温泉とな!それは素晴らしい!久しく温泉に浸かっておらんかったので是非とも利用させていただきたいものだ!」

「はい!よろこんで!歓迎いたします!」


 しろおとめ・るきは以前試練の門の難易度「最高に難しい」の第10ステージの攻略ボーナスでゲットした「げんしょのきおく」を使ってあらゆる言語に関する能力を得ていたので、ゴスターグの言っている言葉をすぐに解析理解しスラスラと話すことが出来た。


「おめぇ・・・じゃない、あなたスゲェ・・・じゃない凄いわね」と、まだまだ元の言葉のクセから抜け切れずにいるしろおとめ・温子(あつこ)がるきの能力を賞賛した。


 そんな温子に突っ込みを入れることもなく、しろおとめ・恵子(けいこ)はその場で直接脳内でおとめぼしの空中庭園都市中央管理センターシステムにアクセスして、現在の様子を全て宇宙連合本部と日本の富士山麓ゲート研修センターへと送っていた。

 恵子も「げんしょのきおく」を使って総合的な情報処理能力をゲットしていたので、今や良子並みの情報処理能力を持っていた。


 この報は瞬く間に広がり宇宙連合本部も地球も冴内が無事だということと、別の宇宙とゲートが開通したことを知って、どちらの組織の建物内部も歓喜の渦に包まれた。そしてすぐに緊急速報ニュースとして一般人にもその状況が報じられた。


 一方冴内達は大会議場の最前面にあるスクリーンに出来たゲートのすぐ横に良子が勝手に何の許可も断りもなく警備隊員が止める間もなくさいしょのほしの冴内ログハウス前にゲートを開通して美衣達と合流した。警備員達仕事しろよと突っ込まれても仕方がないが、こんな人達を止めろというほうが無理な話だった。


「あっ!お父ちゃん達が帰ってきた!」

「ただいま皆!心配かけたね!」

「お帰り父ちゃん!」

「お帰りなさい!洋様!」


「父ちゃんこのゲートはどこに繋がってるんだ?」

「これは宇宙連盟のビルにある大会議場と繋がってるんだよ」

「ありゃ、元の宇宙やニッポンじゃないのか」

「うん、でもこの隣にあるゲートの先におとめぼしの温泉ホテルに繋がるゲートをここの宇宙さんに作ってもらったよ」

「しろおとめお姉ちゃん達のいるところか!すごいぞ!やった!」


「えーと・・・お父ちゃんがうまれそだったニッポンにも行けるようになったってこと?」

「そうだよ!初も遊びに来てくれるかい?」

「うん!行きたい!お父ちゃんのお父ちゃんとお母ちゃんに会ってみたい!本場のカップラーメンとポテトチップを食べてみたい!」

「そうだね!僕も初を両親に紹介しなきゃ!二人ともとても喜ぶと思うよ!」

「うん!」


 時刻は間もなく昼になろうとしていたので、いったん冴内達は久しぶりにログハウスにて昼食をとることにした。その間宇宙連盟どころかイリィーティアまでほったらかしという、かなり職務怠慢というか職務放棄だとお叱りを受けても仕方がない有様だったが、この辺りが冴えない冴内とそのファミリーならではといったところだった。


 代わりに音声ガイドロボ初号機が先に宇宙連盟へと向かって行き、やんわりと関係者達に冴内達は大事な要件があるのでいましばらくお待ちくださいと説明していた。

 こうした配慮がさすが音声ガイドロボだと褒めたいところだが実は音声ガイドロボの方も結構ちゃっかりしていて、こうして説明するのはついでのことで、実際にはいち早く2号機が経験したデータを回収したいのと、2号機がどのような変貌を遂げたか見たかったからであった。


 音声ガイドロボ初号機はすぐにさいごのひとロボ2号機とかつて自分の2号機だったらしいイリィーティアを見つけ合流した。


「まぁ!なんと素敵な姿でしょう!とてもこれが私の同型機だったとは思えない程に素晴らしい姿にリファインされています!」


「あっ!あなたは音声ガイドロボさんのオリジナルの方ですね!ああ・・・このたびは本当に申し訳ありません。そして本当に深く感謝いたします。2号機さんのおかげで私はこうして数百万年ぶりに身体を手に入れて宇宙の割れ目から抜け出すことが出来ました」


「いえ!どうかそのようなことはお気になされないでください!私は本来人の為になることをすることこそが使命であり喜びであり、己のアイデンティティなのです。そして私は今こうしてここにいます。2号機が経験した貴重な経験データもさいごのひとさんから受け取ることが出来ます。ですから2号機は私と同化し再生いたします。それよりも私の身体がこれほどまでにお役に立てたことが何よりも嬉しく思います。ですからどうか思い煩わないで下さい」


「ああ・・・ありがとう・・・本当にありがとうございます音声ガイドロボさん・・・」


 結局のところ、イリィーティアを直接的に救った大恩人は音声ガイドロボなのであった。

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