284:食料工場と食堂の建造
冴内達を乗せた外宇宙開拓用大型航宙艦は既に惑星グドゥルの宇宙港に到着しており、辺りはまだ虹色の光の粒子がうっすら残っていた。
美衣達は早速大小様々形も様々な汎用作業支援ロボを大量に引き連れて外に出て、全く生命反応のないビルや工場跡地のような大量のガレキの山の荒れた場所を少女2人と3歳児の素手による凄まじい破壊力であっという間に更地にした。
その後すぐベルトコンベヤー式作業機械の作成にとりかかったが、既にこれまで何台も作ってきたので手際も良く支援ロボ達の手も借りて10分程度で初号機が完成、それもかなり巨大なものが出来た。
それからそのベルトコンベヤー式作業機械を利用して、さらに一回り小さいベルトコンベヤー式作業機械を5台作成して、いよいよ食料工場の作成にとりかかった。
良子によると惑星グドゥルにいる人々が眠りから覚めるのは恐らく今から2時間後の朝8時頃とのことで、余裕で間に合いそうだと言った。現実世界の地球の技術力だと完成まで数年はかかるだろう。
美衣達はビルや工場などを片っ端から破壊して更地にしたが、その際に出た大量のガレキをベルトコンベヤー式作業機械に乗せていくと、それらはすぐに分子レベルで分解再生成されて食料工場のための建築材料や機械部品になって出てきた。
良子はいったん航宙艦に戻って高性能演算装置を作って持ってくると言って作業場を後にした。
どんどん作られる部品を大量に連れてきた大小様々な汎用作業支援ロボ達が凄まじい速度と正確さで組み上げていった。
美衣と初はせっかくなので、他のビルやら工場やらも破壊という名の解体と区画整理と再利用資源の調達活動を行っていった。
これで宇宙港から真っ直ぐに伸びる導線が確保され、さらに多くの人間がいる場所から真っ直ぐ最短でこれるように、その導線にあるビルやら何やらも全て木っ端微塵にして綺麗な更地の道路にした。
これらのことを永遠の13歳の可憐な乙女と見た目3歳児程度の小児が素手で行っているのであった。
一通り区画整理という名の破壊活動が終了した頃に何やら大きなカーゴホバートラックが近づいてきた。そのホバートラックが建造中の食料工場近くで停車すると、中から良子が出てきてこの大きなカーゴホバートラックを使って工場で生産された食料を運ぶのだと言った。
このカーゴホバートラックは完全自立自動運転であり、この後も数台程やってくるとのことだった。
食料工場はみるみるうちに出来ていき、良子は工場が美味しい食料を作れるように持参してきた高性能演算装置を組み込むと言って食料工場の中に入っていった。
美衣は沢山の人達が眠ってる場所に行って食堂を作りたいと言うと初も一緒に手伝うと言ってくれたので、いつも通り美衣は喜び愛情表現のほっぺた同士をくっつけてから初を抱いて惑星グドゥルのソティラ達の同胞達が大勢いる場所へと向かった。
それほど遠い場所じゃないので十秒程度で到着したが、そこは巨大なドーム状の建物だった。建物の手前には物見やぐらがあちこちにあり、後から追加したと思われる封鎖ゲートがあって、分厚い鋼鉄の門の前面には鉄のトゲがいっぱいついていて、世紀末バイオレンス映画とかアニメとかマンガに出てきそうな物々しさがある印象だった。
しかし今は全員眠っているのと、そもそも美衣は空を飛んで空中機動で移動しているので、全くそれらの防衛設備は無意味無力で、そのまま上空を通過して巨大ドーム状の建物内部へと入っていった。
巨大ドーム状空間の中にはさらに多くの建物があったが、綺麗で整然と並んでいたものではなく、薄い金属板のつぎはぎだらけのあばら家が複雑にごちゃごちゃと無秩序に所狭しと立ち並んでいた。
ドーム空間に入った時から酷い悪臭がたちこめていて、付近を見渡してもゴミや汚水を処理する機能が見当たらず衛生環境は極めて劣悪な印象だった。
「これじゃ美味しい食べ物もおいしく食べれない」
美衣は鼻をつまんでそう言った。
「うん、ここはよくない」と初も同意。
いったんドーム空間の外に出て、ドームの入り口付近にあるそこそこ大きな建物へと入っていった。そこは防衛戦闘員達の待機所施設として使われている平屋の建物だった。
有事の際にすぐに戦闘配備につけるように出入口は開口されていたので、そのまますぐに入って行くことが出来た。これならば風通しが良く匂いも気にならなかったし、冴内の虹色の光の粒子も既に良く行き渡っているようでここは空気が美味しかった。
「ここがちょうどいい、ここを食堂にしよう!」
「わかった!」
早速美衣と初は勝手に大事な防衛戦闘員の詰所を無断で簡易食堂に改装する作業に取り掛かった。
まずは例の白い消しゴム状の携帯端末で良子に連絡して、テーブルとイス、それから汎用作業支援ロボを数体こちらの作業にまわしてもらうよう要請した。
次にこの詰所にも何人かの人達がスヤスヤと血色が良くなった顔で眠っていたので、あまり寝心地が良くなさそうな簡易ベッドごといったん外に出して日陰部分に並べていった。
もぬけの殻になったところで、今度は内装を全て放り出して建物内部も完全に何もないがらんどうの状態にした。武器やら何やらいっぱいあったが、お構いなしに全て建物の外に放り出した。
建物を支える大事な骨組みや壁とトイレを残し、それ以外の単なるパーティション用の内壁は全て美衣と初の二人のチョップでぶち壊し、ほぼほぼ巨大なワンルームというかまるっきり倉庫のような状態にした。
それから簡易的なキッチンと配膳コーナーと食堂をパーティションで区切るため、二人の破壊的解体作業ででた金属版を美衣の全宇宙の万能チョップで器用に綺麗に叩いたり切削して壁や配膳用のカウンターを作り、初が軽々と自分の身体の何倍もある金属部品を持ち上げて組付けていった。
作業中に美衣の白い消しゴム状の携帯端末が鳴ったので応答すると、汎用作業支援ロボやテーブルやイスを乗せた大型カーゴホバートラックがドームの前にあるトゲトゲがいっぱいついてる大きな鋼鉄のゲートが閉じてて入れないから、トラックが通れるようにして欲しいとのことで、初が「ボクいってくる!」と言ってゲートに向かって飛んでいった。
初はゲートについたものの、開門システムとか分からないので数メートルの分厚さはあろうかという程の鋼鉄製のゲートをチョップで易々と切断し、そのまま持ち上げて大型カーゴホバートラックが通れるようにした。
せっかくなので切断した分厚い鋼鉄も何かの材料になるだろうということで頭の上に2個重ねて持ち上げて空を飛び美衣のところに戻っていった。
汎用作業支援ロボ達も到着したことでさらに作業は速度をあげていった。食堂らしく清潔な内装に仕上げていき、さらに多くの人達が利用できるようにテーブルとイスの配置や、入り口から配膳カウンターへ向かう通路とそこから食堂へと向かう導線も考えて汎用作業支援ロボ達は内装や設備を整えていった。
およその見立てでは室内では200人ほどが利用できる広さで、さらに野外にも追加で200人ほどが利用できるように机とイスを並べた。
いよいよ時刻は7時半を過ぎて、あと30分程でここにいる人々が起きてくる時間となった。
すると数台の大型カーゴホバートラック数台がまさにコンボイといった様相でやってきた。
もちろん中には食料工場で作られた出来立ての食料が満載されているのであった。