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281:人類絶滅計画の終焉

 冴内と初とグドゥルが惑星グドゥル全体を虹色の粒子で包み込んでいる一方、優と美衣は良子の指定する座標に瞬間移動しては破壊の限りを尽した。


 ナノマシンの製造工場など二人にとっては紙きれ同然で、防衛システムによって銃撃されようとも殺人レーザーに焼かれようとも毒ガスや高圧電流や精神攻撃音波などなどあらゆる殺人攻撃を受けてもまるでものともせずただひたすらにナノマシン製造工場を跡形もないほどに粉微塵に破壊した。


 AIはあらゆる監視カメラでそれを見ていたが、その光景の意味するところが全く持って意味不明だった。今見ている映像は全てニセの映像で事実ではないと思わざるを得ない程に有り得ない光景のオンパレードだった。


 いきなりとてつもなく美しい女性と、同様にとても美しく可愛らしい娘か年の離れた妹が現れたかと思うと、突然真っ黒い球が出現して大爆発して辺り一面ただの更地になっていたり、小さな可愛らしい女の子が両手を斜め十字に振り降ろした瞬間、黄金色の光線のようなものが工場どころか大地まで真っ二つにしていたりと、これはいつの時代の娯楽映像作品なのかと思う程に意味不明理解不能な映像だった。


 ところが各工場からの反応が次々と消えていくという極めて不可解不愉快な状況に強制的に現実世界へと引き戻された。


 このふざけ切った映像といい、各工場からの通信途絶といい、それら全てが敵対勢力によるジャミング攻撃なのではないかと、AIのくせにアンコンシャスバイアスのような思い込みをしていた。


 しかしその思い込みも一気に一方的に強制的に受け入れがたい現実世界によって否定された。


 いきなり凄まじい破壊音と共に素晴らしく美しい女性と少女が銀色の髪を輝かせてAIの本体が厳重に格納されているコア内部へと入ってきた。


 どこからともなく別の女性の声で「美衣ちゃん待って!」という言葉が聞こえたと思った瞬間AIは思考停止し意識を消失した・・・


「オッケー!全部残さず吸い上げて捕まえたから、もう壊しちゃっても大丈夫だよ!」(良)

「わかった!ゴールデンクロスチョップ!」(美)


 美衣はついさっき命名したばかりのゴールデンクロスチョップというそのまんまの技でとんでもなく頑丈なコアを一撃のもと破壊した。


「美衣ちゃんお外に出てごらん!お父さん達がとっても綺麗だよ!」(良)

「ホントか!分かった!すぐ見てみる!」


 優の短距離ワープで瞬間移動し、地上に出た優と美衣は空一面にとても美しい虹色のオーロラカーテンがこの星全ての上空から地上に優しく降りかかる様を見た。この世のものとは思えない美しさで、とても優しく温かく愛に溢れる虹色の光のシャワーだった。


「あれお父ちゃんがやってるのか!?何をどうやったらあんな風になるんだ!?」

「あれは、お父さんと初と惑星グドゥルの3人が手を繋いで大きな虹のリングになってこの星を包み込んだんだよ!」

「えっ!?ハジメにお星さまのグドゥルも一緒になってやってるのか!?」

「そうだよ!」

「さすが3人とも宇宙そのものなだけあるわね!」


 その虹色のスターライトシャワーは30分程続き、やがて惑星グドゥルの北極点に冴内と初とグドゥルは降り立った。冴内が前のめりでぶっ倒れたので、初は急いでサクランボを取り出して冴内に食べさせた。冴内はなんとか最後の気力を振り絞ってサクランボを一つ飲み込むと、上半身をおこせるまで回復し、続けて桃をちょうだいと初に頼むと初がこのまま食べても大丈夫なの?と少し心配したが、冴内は大丈夫だと言ったので桃を渡した。


 冴内は桃を手に取りいったん呼吸をしてから一気に桃を食べ尽して飲み込んだ。すると冴内は身体を弓なりにしてのけぞり、まるでドクンという音が聞こえるかのように冴内が大きく脈打つと、冴内の身体がまるで恒星爆発のようにスパークして光り輝いた。初もグドゥルも星なので大丈夫だったが、常人ならば間違いなく失明する程のスパークだった。


 光がおさまると同時にすぐに優と美衣が瞬間移動してきた。

 優が冴内に木っ端微塵になるんじゃないかと心配する程飛び込んで激突してそのまま抱き着いた。


「洋!大丈夫!?」

「うん、今サクランボと桃を丸ごと一つ食べたから大丈夫」

「えっ!あの桃丸ごと一つ食べちゃったの!?」

「父ちゃんすごいな!あの桃丸ごと食べても生きているのか!さすがだ!」


 今更ながらあの桃ってそんなにヤバイものだったのかと書いてる作者も驚いた。


「とりあえず、気絶寸前だったのは治ったけど、ものすごくお腹が減ったよ・・・」

「これだけ沢山の虹を振りまいたんだから、仕方ないわよ。それじゃすぐに船に戻ってご飯を食べましょう、たくさんご馳走作るわね!」

「アタイも作る!」

「それじゃ船に戻るわよ!みんなつかまって!」

「・・・」(グドゥル)

「グドゥルお姉ちゃんも一緒に行こう」(初)

「デモ・・・ワタシハ・・・キタナイシ・・・ミニクイカラ・・・」

「大丈夫だ!良子お姉ちゃんの時よりもずっと綺麗だし!美味しいご飯を食べてお風呂に入れば綺麗になるよ!だから一緒に行こう!」(美衣)

「行こうグドゥル、僕の大好きな家族と一緒に皆で美味しいご飯を食べよう」

「ウ・・・ウン・・・」


 こうして天体規模で虹色の粒子を放出したため極限までお腹を空かした冴内に引き連れられて、惑星グドゥルも航宙艦へと移動した。

 しかもここまで大規模な作戦行動を実施したにも関わらずなんとまだ朝6時前という早さだった。

 冴内達はおよそ1万年近くに渡りこの星の文明を崩壊させ人類滅亡を企ててきたAIの野望を1時間もかからずにそれはもう全て見事に木っ端微塵に打ち砕いたのである。


 冴内達は食堂ではなく冴内達が寝泊まりしている展望デッキに設置した第四の試練から勝手に持ってきたキッチンで朝食の続きを作り始めた。

 冴内はともかく美衣達は4時過ぎに朝食をそこそこ食べていたにも関わらずまたしても朝食の第2ラウンドを開始する気マンマンだった。

 初が仕留めたとっておきの巨大草食恐竜の最も貴重な部位の肉を使って贅沢にもミディアムレアーのフィレステーキを数センチはあろうかという分厚さで焼いた。

 ジュウジュウと焼かれる肉を見て冴内は目を細め、漂ってくる素晴らしい肉の焼ける匂いで腹の虫は絶叫を上げ、何度も何度も生唾を飲み込む始末だった。

 ちなみに冴内の分のステーキを焼いているのは優で、美衣は結局自分の分のステーキを焼いているのだった。しかも良子からも通信が入り、ちゃっかり良子の分も焼いて欲しいというリクストを美衣にしていた。


 活気ある冴内家の中でグドゥルは所在なさげでどうにも落ち着かない様子だったところ、初がふと思いついてグドゥルにサクランボを一粒差し出した。


「これウチの人達がよく食べる果物だよ。疲れた時に食べるととても気分がスッキリするんだって」

「・・・アリガトウ」


 グドゥルは初からもらったサクランボをまじまじと見て「トテモ キレイナ イロノ タベモノ。カツテハ ワタシのホシデモ コウイウ タベモノガ タクサンアッタノ・・・」と、悲しげに言いながらもサクランボをパクッと食べた。

 サクランボを飲み込んだ瞬間グドゥルは漆黒の闇の目の窪みが大きくなり、同じく漆黒の闇でしかなかったポッカリ空いた口も大きくなり、その後目も口も分かりやいニッコリマークになった。


「美味しい?」

「ウン、オイシイ」

「元気になった?」

「ウン、スコシ ゲンキニナッタ」


 そんなやりとりを同じようにニッコリした顔で見ていた冴内に会心の閃きが舞い降りた。

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