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277:到着

 - 午前4時40分 -


 滅びの星グドゥルにて異変が起きているのを誰よりも最も早く認識したのは、移行したばかりの新型自立思考型AI航宙艦総合管理システムだった。


『警告、惑星グドゥルにて異常を検知、危険な量のナノマシンが確認されました』


「何ッ!」(さいごロボ)

「何ですって!」(音ロボ)


『ナノマシンの異常な増殖により、地上の知的生命体のバイタルが衰弱しています、まだ致死量ではないようですが、このままでは生命活動に影響が出ていずれ死に至る可能性が大きいです』


「大変だ!すぐに冴内達に知らせないと!」

「そうですね!」


 その頃冴内達は既に腹を空かせて目覚めており、朝ご飯を食べているところだった。


「やっぱり第3農業地産のお米と納豆と漬け物は最高に美味しい!アタイでもコレには敵わない!」

「美衣お姉ちゃんでも敵わない存在っているんだ」

「うん!第3農業地の人達は凄いんだよ!」


「冴内 洋、起きていたか。食事中のところ申し訳ないのだが緊急事態だ、惑星グドゥルでナノマシンが異常増殖していることが確認された」


「えっ!そうなの!?大変だ!星にいる人達は大丈夫なの?」

「まだ致死量ではないとのことだが、このままではやがて死に至る。早急に対処しなければならない」

「分かった!出来る限りのことはやってみる!」

「頼む、あと20分程で惑星グドゥルに到着する」

「了解!すぐそっちに行くよ!」


 冴内達は一気にご飯をかきこんだ。美衣は残ったご飯を卵かけご飯にして一気に飲み込んだ。

 冴内達は花子小隊達に乗組員達の朝食をまかせるとメインコントロールルームに駆け込んだ。

 メインコントロールルームは冴内達が寝泊まりしていた展望デッキの真下にあるのですぐに到着した。

 そこには既にソティラの姿があった。ソティラは艦長室で寝ていたが、艦長室はメインコントロールルームのすぐ近くにあり、緊急事態の報告にもすぐに反応していち早く駆け付けていた。

 冴内達と違って朝ご飯を食べていたわけでもなかったのと、日頃から過酷な環境で生きてきたので有事の際の即応能力が鍛えられていたのだ。

 ソティラは様々な回線を使用して惑星グドゥルにいる仲間達に緊急連絡を試みたがどのチャンネルからも応答がなく、事態の深刻さを物語っていた。


「だめだ!どの回線も応答しない!一体何が起きてるっていうんだ!」


 冴内がソティラに声をかけようとした時、緊急SOS通信が割り込んできた。


「コチラ 惑星グドゥル! 緊急応援ヲ乞ウ! 敵対勢力ニヨル攻撃ヲ受ケ 現在戦闘中! 至急救援サレタシ! 繰リ返ス!コチラ 惑星グドゥル!・・・」


「何ィッ!?敵対勢力だと!!」


 その時すぐにさいごのひとロボと音声ガイドロボがソティラに近付き、さいごのひとロボは口に手を当てて静かにというジェスチャーをして、音声ガイドロボは空間に文字を投影して「静かに、これは敵の罠で偽情報です」とソティラに分からせた。

 そして音声ガイドロボがソティラの代わりにソティラそっくりの声で「分かった!今すぐ救援に向かう!ガイドビーコンを送ってくれ!ただちにそちらに航宙艦を着陸させて救援に向かう!」と、言ったところすぐにガイドビーコンが送信されてきた。


 いったんこちらからの通信回線の音声をミュートにした後で「実に稚拙な罠ですね」と、音声ガイドロボがそう言うと、ソティラが「これが罠だというのか!?しかし一体誰がそんなことを!」と声を張り上げた。


「恐らく君達の星の文明を滅ぼした張本人だ」

「私達の文明を滅ぼした者だと!?」

「そうだ、それを今から確かめる」

「なっ!そんなことが出来るのか!?」

「冴内 良子、協力してもらえるか?」

「うん!分かった!」


「着陸まであとどれくらいかかるの?」(冴内)

『指定したガイドビーコンに入港するまでおよそ35分です』

「35分・・・」冴内は冴えない頭で必死に考えようとしたが、考える前に直感に従うことに決めた。


「ボクは先に行って星の外からレインボーチョップを最大パワーでやってみるよ!」

「私も行くわ洋!もう星の近くまで来ているから私のワープですぐに連れていってあげる!」

「アタイも行く!」

「ぼくも行く!」

「ありがとうみんな!」


 冴内はさいごのひとロボに向かって「ごめん、何か考えがあるのかも知れないけど僕は行くよ、ナノマシンで苦しんでいる人達が大勢いるのなら、僕は今すぐにでもその人達を助けたい」と言った。


「何も問題ない冴内 洋、君は君が思った通りのことをやりたまえ、我々も出来る限り全力でバックアップする」

「ありがとう!」

「サエナイ!」(ソティラ)

「・・・」(冴内)

「頼む!皆を、この星に住む全ての生命を救ってくれ!」

「分かった!」


 ソティラは全ての生命を救ってくれと言った。それには彼女達の敵対勢力も含まれていることは、冴えない冴内でもしっかり分かった。


 早速冴内達は航宙艦よりも先んじていち早く滅びの星グドゥルへと優の短距離ワープでの移動を開始した。


 残った良子とさいごのひとロボは航宙艦に搭載された超高性能光演算装置をフル稼働して、惑星グドゥルから送られてきた偽のSOS通信の出所と、それを送ってきた何者かの特定を開始した。

 まさにここからは情報戦の戦いの場となった。


 - 午前5時 -


 冴内達は目の前いっぱいに広がる惑星グドゥルの軌道上にいた。青々とした海もなく広大な緑豊かな陸地もなく、星全体は淀んだグレーだった。


「このほしはとても悲しんでる」と、初は言った。

「そうだね、僕にも分かるよ」

「アタイは分かんないけど、きっとこの色は良くない。だからお星さまは悲しんでると思う」

「そうね、私にも分からないけど、とても不健康な色ね」


「じゃぁ早速やるよ!フルパワーでやるからもしも僕が気絶したら起こしてね!」

「「「 わかった! 」」」


「スゥゥゥ・・・ハァァァ・・・スゥゥゥ・・・」

 冴内は真空の宇宙空間なのに深く呼吸をした。


 冴内は初めてチョップで岩を割った時を思い出した。あの時も深く呼吸を繰り返して集中したなと思い出したのだ。そして自分の身体の頭のてっぺんから自分の精神、魂だけが飛んで行って自分を上空から見下ろしたような気になったことを思い出した。

 さらに吉野熊野国立公園内で滝に打たれたり、山の頂で瞑想をしながら朝日を見たり、さらに夢で宇宙と対話したりしたことを思い出した。

 全ての行為は最終的に宇宙と一つになるためのチューニングだったのだということを彼自身がその身をもって理解したのだった。

 そして今、冴内は別の宇宙でもそれを実行していた。この宇宙にも大いなる意思があるはずだと、そしてそれは大いなる愛であるはずだと信じて疑わなかった。


 完全に冴内が起きたまま、呼吸をして目を開いたまま現実世界とは別の世界に行ったことを、優、美衣、初は肌感覚で察知した。


 いつもなら左手を水平横に、右手を垂直に高々と掲げて虹色の螺旋が出現するのだが、冴内は両手をダラリと脱力して普通に降ろして佇んでいた。


 冴内は何度も深く呼吸を繰り返していた。真空の宇宙空間には当然空気も酸素もないのだが呼吸を繰り返していた。以前冴内がさいごのひとロボと宇宙空間での生存練習をしていたときは冴内が太陽になって酸素を作り出していたが、今冴内が吸っているのは空気ではなく宇宙粒子だった。


 この時冴内の肉体は人間の肉体とは別のものになっていた。

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