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272:驚きの大変化

 航宙艦の乗組員達はまばらに起きてきたので、食堂は大混雑することもなく花子小隊と調理担当の乗組員達だけでまかなうことが出来た。


 既にお昼近い時間帯だったので、今日は午後に優と花子小隊でおやつを作ることにして、夕食まで時間があるので美衣は航宙艦の外観を可愛くする作業の続きを行い、良子は精密部品製造機械を使って、昨晩たっぷりとってきた隕石のカケラから超高性能光演算装置の製作にとりかかり、冴内と初は航宙艦内部の改修作業を継続した。


 冴内達が寝ている間もさいごのひとロボと汎用作業支援ロボが航宙艦改修作業を続けていたので大部分が完成しており、後は美衣画伯御自慢の外観フォルムに整えるのと、この航宙艦の頭脳を良子が作っている超高性能光演算装置に組み替えるのと、新しい宇宙粒子放出エンジン及び宇宙粒子放出スラスターベーンに交換するのみであった。

 さすがにエンジンとスラスターベーンについては航行しながら取り替えることは出来ないので、滅びの星グドゥルに到着してから交換することにして、ひとまず部品の製作を行うことにした。

 いつものようにさいごのひとロボが指示する隕石のカケラを冴内がベルトコンベヤー式工作機械に運んで、出来上がった部品は初が組み立てるという方式で新造エンジンとスラスターベーンを組み立てていった。


 他の乗組員達は航行性能には直接関係ない、居住設備に関する内装工事の仕上げを汎用作業支援ロボ達と共に行っていた。大浴場や運動施設や娯楽施設など、かつては存在していたらしいそれらの設備が当時よりもさらに素晴らしい程に良くなって生まれ変わってリノベーションされており、文化的な娯楽やスポーツなどと完全に無縁だった乗組員達にはそれがどういうものなのか完全に理解出来る者は少なく、良く分からないがとても綺麗な施設だとただ感心するのみだった。

 大浴場についてはさすがの彼女達にも理解することが出来たが、入浴という習慣が喪失しているため湯船に浸かるという行為には不思議がっていた。


 ソティラと上級幹部達も目を覚まして食堂に行って遅い朝食をとってからメインコントロールルームに入ってみると、まるで様変わりした様子に唖然として言葉が出なかった。

 これまで各自の持ち場であったコックピットのような座席ユニットが全てなくなり、リクライニングシートユニットが整然と並んでいるだけというあまりにもシンプル過ぎる場所に変わり果てていた。

 これでどうやってこの大型航宙艦の膨大な情報管理や外界の情報などをモニタリングするのかと彼女達は大いに困惑した。

 すると中央のリクライニングシートに座っていた音声ガイドロボが近づいてきて、これからは人間が航宙艦の管理を行うことは余程の緊急事態が発生する時以外は必要なく、全て安全に自動で管理されるのだと答えた。

 ソティラ達はそんな事が到底出来るとは信じられず、とにかく状況をモニタリングしたい時や手入力でデータをインプットしたいときはどうすればいんだと音声ガイドロボに問いただすと、見たい情報についてもデータインプットについても口に出してリクエストするか、リクライニングシートに座れば口に出さなくとも脳内でリクエストすれば、その者の目の前の空間に見たいデータは投影されるしデータもインプット出来ると言った。


 上級幹部達は「そんなバカな!」と言って信じられない様子だったが、ソティラが「ならば現在の船の外観がどうなってるのか見せてくれ」とリクエストしたところ、非常に高画質な映像がソティラの目の前に出現した。


「な!なんだコレは!?コレがアタシらの船だってのか?」

「おい!お前!いい加減なコトを・・・」

「ちょっと待て!おい、画面をもっと大きく拡大してくれ!」


 ソティラ達の目の前の画像が大きく拡大され、何か物凄く小さい物体がせわしなく動いており、その物体の動きと共に航宙艦のフォルムがみるみる変わっていく様子が見て取れた。


「なんだこの小さい点は?おい!ここをもっと拡大してくれ!」


 ソティラのリクエスト通りにその小さな点を拡大すると、冴内 美衣が生身の身体のまま白い服と帽子を被って素手で金属を叩いて航宙艦のシルエットを整えていた。その近くにはソティラが監視を支持した部下が宇宙服を着ており、しかもその身体を覆うように見たこともない機械を装着していた。その見た目は重作業用パワードスーツのようだった。

 上級幹部の一人がその監視役と連絡を取りたいと音声ガイドロボに言うと、その者と通信したいと口に出せば良いと言われ半信半疑でその通りにしたところ「はっ!はい!なんでしょうか!?」とビックリした様子でその監視役の人間が返答して、少し驚いた様子もソティラ達が見ている画面の映像で確認出来た。


 ソティラ達は改めて冴内達がもたらす超文明技術力にある意味恐ろしさを感じる程に驚嘆した。しかも音声ガイドロボによるとこれでもまだ不完全で、今冴内 良子が製作している超高性能光演算装置とやらが完成すれば音声ガイドロボを超える性能の頭脳がこの航宙艦に搭載されるとのことだった。そして船の心臓ともいえるエンジンも現在冴内達が今のエンジンよりも遥かにパワフルで高性能なものを新しく作っているとのことだった。


 ちなみに誰でも何でもリクエスト出来るわけではなく、今はソティラと冴内達に最高権限が付与されており、次いで上級幹部達に重要度の高い権限を付与したとのことだった。一般の乗組員達には閲覧したり操作出来ることは限定的だということも付け加えて説明した。


 そんな一幕もありつつ時刻は午後3時を回り、多くの乗組員達が若干小腹が減ったと感じた頃、優が艦内のあちこちに空間投影で出現し「美味しいおやつを作ったから食堂に来るといいわよ!」と言った。


「オヤツ?オヤツとは何だ?」

「美味しいって言うくらいですから食べ物ですかね?」

「その通りです、おやつというのは食事の間に食べるもので栄養補給というよりは嗜好品といった食べ物です」

「シコウ・・・ヒン?」

「何と言いますか、生命維持というよりも喜びを満たす食べ物だと思って下さい。実際に食べて見ると分かりますよ。人にもよりますがとても幸せで嬉しい気持ちになる人もいます」


「分かった、行って食べてみよう。サエナイ達が提供する食べ物はどれも素晴らしいものだから、このオヤツなる食べ物も間違いなくウマイものに決まっている」

「ボス!アタシもお供します!」

「アタシも!」「アタシも!」


 ソティラ達が食堂へと近づくにつれて、これまでとは全く違った香りが漂ってきた。いつもの食欲とは完全に異なる何か別の欲求が掻き立てられる香りで、全員が生まれて初めて嗅ぐとても甘く良い香りだった。


 食堂の入り口では早くも大賑わいで乗組員達が溢れているほどで、またしても通路の床に直に座って何かを食べていた。

 誰も皆ウットリするような顔をしており、ソティラ達の世界ではウットリなどという言葉と概念は既に消失しているので、ソティラ達からすると一応嬉しそうな表情のようではあるが、始めて見る表情なので若干戸惑っていた。

 中に入れそうにもないので最後尾で大人しく並んでいると、すぐに汎用作業支援小型ロボがやってきてソティラ達に見慣れぬものを渡してきた。

 渡されたのは飲み物が入っていると思われる筒と三角形の美しい見た目の何かが3種類と空のティーカップが乗せられたトレイだった。

 飲み物が入っていると思われる筒はとても大きくて渡されたのは一つだけだったので、恐らく皆で分けて飲めということだろう。食べ物が乗ったトレイについては人数分別々に渡された。


 とりあえず全員におやつとやらが行き渡ったのでソティラ達もその場に座り、そのおやつとやらを食べてみることにしたのであった・・・

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