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270:愛を取り戻せ!

 夜になり冴内達の乗る外宇宙開拓用大型航宙艦はいったんワープアウトした。


 ワープアウトした宙域の近くにはアステロイドベルトがあり、豊富な資源を含んだ隕石が無尽蔵とも言える程に大量にあり、そこで時間の許す限り格納出来る限りありったけの隕石を収集して欲しいとさいごのひとロボは冴内達に要請した。


 次のワープ開始は午前3時を予定しており、間もなく時刻は夜の9時になるというところで、作業時間は6時間といったところだった。


 早速冴内達は優と手を繋ぎ短距離ワープでアステロイドベルト地帯まで行き、優と美衣を別々にした2つのグループに別れて隕石を採取することにした。

 その理由は優は採取した隕石を短距離ワープで航宙艦に瞬間移動させることが出来るし、美衣の方は宇宙ポケットに採取した隕石をどんどん格納していくことが出来るからであった。

 これならば何度も往復して採取した隕石を航宙艦まで運搬する手間が省けて時間短縮になる。


 航宙艦内に残った乗組員達も何か手伝いたいと進み出たので、それならば隕石を格納するための空きスペースの確保と冴内達から送られてきた隕石の整理と収納を汎用作業支援ロボ達と一緒に協力して作業して欲しいとさいごのひとロボは依頼した。


 優班は冴内と初、美衣班は良子という組み合わせで、片っ端から猛烈に隕石を破壊しまくった。最初は一つ一つチョップで砕いたりしていたが、もっと速く効率よく採取出来ないかと考え、初のフライング・クロス・チョップをヒントに頭の前でチョップを斜めに交差させて猛スピードで隕石に激突して木っ端微塵にするという方式を採用することにした。


 優班は冴内が砲弾になり隕石を木っ端微塵にし、後ろに続く初が重力制御にてまるで磁力か掃除機のように隕石の破片を集めて、さらに後ろに続く優が一気にまとめて短距離移動で航宙艦に採取した隕石を送り届けた。


 美衣班は美衣が宇宙ポケットを良子に渡して、美衣が砲弾役を務め、後ろに続く良子が重力制御にて木っ端微塵になった隕石の破片を集めてそのまま宇宙ポケット内へと格納していった。


 その様子は航宙艦のあちこちで放映されており、ますます航宙艦の乗組員達は冴内達がかつて古代文明人に人間を遥かに超越した神様と呼ばれていた存在に違いないと確信を深めていった。

 ちなみにこの映像も有効に使えそうだと考えた音声ガイドロボは映像記録を保管し、事実を微妙に歪曲して再編集し滅びの星グドゥルへと送信した。


 ちなみにこの行為が後に大変な事態を引き起こすことになるのだった。


 すぐに優班から隕石の破片がじゃんじゃん送られてきたので、たちどころに冴内達の姿に見とれているヒマはなくなり、航宙艦の乗組員達は大忙しの状態になった。いったん大型格納庫に送られてくる隕石を空きスペースがある場所に汎用作業支援ロボと協力してどんどん運んでいった。仕分けと格納場所の指示はさいごのひとロボと音声ガイドロボが指示し、乗組員達は汎用作業支援ロボに付き従っていけば良かった。


「一体こんなに沢山の量の隕石のカケラを何に使うってんだい?」(ソティラ)

「うむ、この航宙艦の改修だけでなく、君達の星に着いた後も様々な施設設備を改修し、君達がより快適に暮らしていけるようにするのに使うつもりだ」

「なんだって!?なんでそんなことをするんだ?」

「恐らく冴内 洋ならばそうしたいと考えるだろうから、あらかじめその準備をしているのだ」

「サエナイが?・・・何故だ・・・何故そこまでサエナイはアタシらを助けようとするんだ?」

「前にも答えたが、冴内 洋が宇宙の愛の使者だからだ」

「それは覚えている。だがアタシらにはその愛とやらが分からないんだ。アタシらにあるのは食べる、寝る、子孫を残すという生理的な欲求ぐらいなもので、それ以外の他の欲求も全てこの3つの基本的な欲求から派生しているに過ぎないんだ。だからサエナイ達が行っているその宇宙の愛とやらの根本原因が分からないのだ。アタシらを助けて空腹が満たされるわけでもないのにどうしてサエナはアタシらを助けたいと思うのか、どういう欲求が元になっているのか分からないのだ」


「うむ・・・そうか・・・なるほど、君達のおかげでようやく私も、いや私達も衰退していった根本原因が分かった気がする・・・」

「どういうことだ?」

「私達も君達同様、プロセスは異なるが愛を喪失してしまったが故に衰退し滅亡したのだ」

「お前も滅亡した・・・とはどういうことだ?」


「私は冴内 洋とは別の宇宙にいた人類の末裔だ。君達の星にいたという古代文明人のようなものと思ってもらって構わない。我々は繁栄の頂点を極め、やがて自らの意思で自分達にとって不要と思われる感情を排除してしまった。初めのうちは争い事がなくなったのでとても良い事だと大いに喜んでいたが、争うことをしなくなったことで競い合う事やより高みを目指そうとする意欲も薄れていった。怒りや憎しみや悲しみといった負の感情から解き放たれて幸せを謳歌していたのだが、そのうち欲求、いや、欲望が薄れていき、少しづつ喜びの感情すらも希薄になっていった。やがて感情も乏しくなり、色んなことに興味を示さなくなり、遂には子孫を残すことすらもやめてしまった。その頃の私達は肉体的にはとても健康で長生きだったが、自分達の子孫を残すことなく皆人生を終えていき最終的にはデータのみの思考思念体として活動を停止していたのだ」


「そうか、だからお前の名前はさいごのひとで、身体を失っていたからロボットなのだな」

「その通りだ、そして私は冴内に出会った。冴内は我々が残した唯一の肉体を持った負の感情のみの存在を良いものへと変えて我々の前に現れた。それによって私はもう一度活動を再開したのだ」


「ということは、今アタシらの前に冴内が現われたということは、アタシらもかつての古代文明人のようにもう一度復活することが出来るかもしれないのだな」

「そうだ、君達と私達は互いに衰退していったプロセスは異なるが、最終的に愛を喪失してしまったが故に滅びの道を歩んでいったと言える。だから君達がかつての文明人のように再生を望むのならば、まず愛を取り戻すことが必要なのだ」


「愛を取り戻す、か・・・だが愛を知らないアタシらはどうやって愛を取り戻せばいいのだ・・・」

「恐らくだが、異性と結ばれて自らの子を産み育てるのが最も効果的だと思われる。我らの末期状態も君達と同じで、異性と結ばれて子孫を残すことをやめ、少数の人間を人工的に産み出すようになってしまったのだ。こうなるともはや愛という概念ではなくただの生産活動だった」

「アタシらも同じだ!労働力の確保と種の存続のために人間を作っている!それはまさにお前の言う単なる生産活動だ!」


「君達には我々と違ってまだ十分望みはある。それは君達は自ら望んで今の状況になったのではないということと、我々と異なりまだ強い欲望、すなわち感情があるということだ。感情は時に大きな災いをもたらすこともあるが、その逆に大きな喜びや幸福をもたらす原動力にもなる。その最も大事な心の感情を失っていない限り君達にはかつての文明を取り戻す、いや、愛を取り戻すことが出来るはずだ。冴内 洋とその仲間達がその手助けをするだろう」


「分かった!その言葉、心から感謝する!」


「「「ボス!」」」


「皆も聞いた通りだ!かつての古代文明人達のように栄えるためには愛が必要なんだ!アタシらは愛を取り戻すぞ!」


「「「 オーッ!! 」」」


「愛を取り戻せーッ!」

「「「「 愛を取り戻せーッ! 」」」


 メインコントロールルーム内ではソティラと上級幹部達が愛を取り戻せ!と力強く連呼し、やはりその様子は音声ガイドロボによっていつの間にか艦内全体に映し出されており、やがて航宙艦の乗組員達も隕石の破片を運搬しながら「愛を取り戻せ!」と力強く大きな声を出していた。


 もちろんこの一連の様子も全て音声ガイドロボによって多少誇張され再編集されて滅びの星グドゥルへ送信された。


 まさにこの行為が後に大変な事態を引き起こす決定的なトリガーになるのであった・・・

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