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264:改修作業開始

 美衣の陣頭指揮の元、冴内達がチャーハンを作っている一方、さいごのひとロボの陣頭指揮の元、汎用作業支援小型ロボは航宙艦の大規模改修作業に取り掛かった。


 汎用作業支援小型ロボ達は航宙艦の各所にある船外作業用アクセスポイントから宇宙空間に出ていき外壁改修作業を開始し始めた。監視役の数名の技術者達も宇宙服を着込んで後を追おうとしたが、航宙艦は現在ワープ移動している最中であり、このまま船外に出るのは非常に危険だったのでどうしたらいいのか困惑していると、別のタイプの少し大きい支援ロボがやってきて彼女達が安全に監視できるように補佐すると言った。

 その支援ロボが指示する通りにハーネスやカラビナを使って身体を支援ロボに固定すると、支援ロボは変形して人型に近い外骨格パワードスーツのようなフォルムになった。そのまま船外へと出ていき、彼女達の思った通りにスムーズかつ安全に移動していった。


 船内では支援ロボ達が改修区画にいる乗員達の移動を誘導しており、全ての乗員が移動し終えて完全に生物センサーがゼロを示したのを確認して防御隔壁を閉じた。

 その区画は老朽化して朽ち果てかけていた箇所を無理矢理後から補強したところで、この航宙艦でも最も醜くいびつな形をしていた箇所だった。

 早速大型支援ロボが該当箇所の切断を開始していき、切り離されたパーツは再利用するために支援ロボ達によって、ベルトコンベヤー式工作機械のある場所へとどんどん運ばれていった。


 監視役の者達は沢山の支援ロボ達が凄いスピードで作業していく様子を目の当たりにして、監視がまるで追いつかない状況に困惑していた。支援ロボ達は最初からやるべきことが決まっているかのように全く躊躇や停滞することなくどんどん解体と改修を行っていった。みるみる見た目が変わっていく様子に監視役達は見惚れてしまう程だった。


 その様子は艦内のあちこちのモニターでも見ることが出来て、メインコントロールルームではさらに様々な場所の改修作業を色んなアングルからリアルタイムで見ることが出来た。


「し・・・信じられねぇ・・・」

「夢でも見ているんだろうか・・・」

「これが、サエナイ達の力なのか・・・」


 上級幹部達はその様子を見て衝撃を受けていた。これまでのオンボロ航宙艦の姿がいかにいびつで醜悪だったのかが彼女達にも理解することが出来る程にどんどん美しく改修されていった。そしてその早さはまるで何かの映像記録動画を何倍にも速めて再生しているかのような速度だった。


 ソティラは内心ではこの上なく安堵しており、間違いなく冴内達は本物の救世主だと確信し始めていた。しかし決してそのような素振りは誰にも見せなかった


 少しづつあちらこちらで自分達にも何か手伝うことはないかという声があがってきて、さいごのひとロボは今後の改修箇所を公開し、事前にその区画からの移動と必要な物などがあればそれの移動もしておくように伝えた。大きな搬送物がある場合は最寄りの支援ロボに言えばその大きさに応じた支援ロボを手配するとも言い付け加えた。


 また、大忙しでチャーハンを作り続ける美衣達にも何か手伝えることはないかという乗員達がやってきて、配膳と乗員達の誘導整理などをお願いした。ちなみに皿洗いの要員は全く必要なく、汎用作業支援小型ロボ達が回収してきた食器などは全自動食洗機で洗浄し殺菌抗菌処理されていた。


 一応乗員達の中には調理担当の者もいたが、美衣達の作る料理のレベルの高さ、というよりもまるで次元の違う文化の技術に驚きを隠せずただただ立ち尽くして食い入るように見入ることしか出来なかった。

 彼女達が出来ることと言えば自動で食事を作るマシンに工場で生産された栄養ブロックペーストを適量セットするだけであり、マシンに不具合が起きた場合にメンテナンスするというのが日常の仕事だった。

 ところが今目の前にいる者達は、彼らが非常に高い科学技術水準を持っているにも関わらず、全て手作業で原始的な器具を用いて調理しているのである。しかも食材は生き物の肉や食べられる植物を直に加工しているのだ。さらに彼女達が知っている数少ない調味料の塩や砂糖以外にも液体状の調味料と思われる様々なものを加えて手作りしていたのだ。

 古文書にあった本物の料理というものを今初めて目の当たりにして、調理担当の乗員達は大変な衝撃を受けていたのであった。


 やがて昼の時間になり、音声ガイドロボが館内放送で昼食の準備が出来たので各エリアにいる乗員達を案内し始めた。さいごのひとロボとも連携をとっていて、改修工事の作業効率が良いように工事作業の該当エリアの順から食堂に行くように案内し、乗員達は素直に大人しく言うことに従った。


 朝食にタップリとラーメンを食べたので、慢性的な食糧不足のため普段あまりお腹いっぱいまで食べることが出来なかった乗員達はそれほどお腹を空かせてはいなかったのだが、食堂に近づくに連れて漂ってくるとても美味しそうな香ばしい匂いを嗅いだ途端すぐに食欲が沸いてきた。

 食堂の座席数はちょうど100席あり、今回は100人を30分交代で3回に分けて入れ替えて利用させることにした。

 今回は一人おかわり2回まででそれ以上はないが、全員朝にラーメンをタップリ食べたのでこれで足りないということもなく、一種類のメニューでチャーハンは炒めるだけなのと角煮は既に仕込んでいたので、座席に着くなりすぐに食事を届けることが出来たので回転率はすこぶる早かった。もちろん彼女達にとって美衣の作るチャーハンと角煮があまりにも美味しいのであっという間に完食したことも回転率の高さに貢献していた。


 予定していた時間よりもかなり早く最後のグループも食堂にやってきて、そのグループにはソティラ達も含まれていた。


「ボス、こんどの食べ物・・・チャアハン、なるものはどんな食べ物なんですかい?」

「いや、アタシもチャアハンは今回が初めてだ」

「なんだかすごく良い匂いがしますぜ」

「あぁ確かショーユとかいう調味料と油の匂いだ。ショーユは実に香ばしい匂いで、味もただの塩と違って様々な深みのある味で、ラーメンのスープに使うと抜群に美味しかった」

「朝食べたラーメンのスープですかい?」

「あぁ、私が食べたラーメンはショーユラーメンとサエナイは言っていた。今朝のラーメンも実に旨かったがショーユラーメンも実に旨かったぞ」


 そうこう話しているうちに食堂に到着し、既に着席してチャーハンを食べている者達を見た。誰も一言も発せず黙々と手を止めることなくチャーハンを食べていた。そして別の小さな皿には四角いブロック状の肉の塊が入っており、乗員達の中には口に入れるのをためらう様子の者もいたが、意を決して口に含んだとたん目を大きく見開き、そのままあっという間に完食しておかわりを要求していた。


「うえっ!ボス!アッ、アレは何ですかい?」

「アレは肉だ」

「肉?アレが肉だって言うんですかい?」

「そうだ、アタシ達が普段食べてるものとは違う、本物の生き物の肉だ」

「うぇっ・・・生き物の肉!?・・・だ、大丈夫なんですか?」

「あぁ、さすがのアタシも最初は抵抗があったが、これが実に旨いんだ。噛めば噛む程旨い汁が口の中いっぱいに溢れるし歯で肉を噛むのがすごく気分が良い。何というか征服感があるのだ」

「アレが・・・ですか?」

「あぁ、その証拠に見てみろ、あの者達の顔を。皆実に良い顔をしているじゃないか」

「確かに・・・皆とても満足してる顔してますね」

「まぁ食べてみればすぐに分かるさ」


 ソティラと上級幹部達は身近な場所のテーブルが一気に空いたのでそこに座った。


 乗員達はチャーハンと角煮のあまりの美味しさに周りを見る余裕すらなかったようで、食べ終えて席を譲るまで自分達の頂点に立つ存在がすぐ間近にいたことすら気が付かない程だった。

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